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遺世界パラボリック  作者: じゅん
Alea jacta est
4/25

4話

「よくお気づきで。説明にすんなり移行できて助かります。それはですね。ここがあなた達のいた世界とはちょっと違う、からですよ」


 間に割って入った受付は「まぁまぁ」と宥める。和を乱すとしてどっちかを撃ち殺してしまってもよかったのだが、これ以上間引いてもメリットはない、と判断した。


 なんだか少しずつ賑やかになる場に嫌気がさしてきた黒髪。いや、最初から感じていたけど。この和気藹々とした雰囲気。


 壊したくなる。


「ですよ、と言われてもな。違う世界というならいくつも気になることがある。『なぜ銃を渡す』『なぜそこへ持ち込む』『チームとは?』『俺達は今からどうなる』」


 矢継ぎ早に問い詰める。本当はもっともっとある。『お前はなんなんだ』とか。だが、自分の中の優先順位に従った。こいつへの興味はそれほどない。


 ジェスチャーで落ち着かせながら、受付はひとつ咳払い。


「そんないっぺんに言われても。ひとつずつ説明していきましょうか。『なぜ銃か』『なぜそこへ持ち込む』かについてはまとめちゃいますね。理由は簡単。『わかりやすい』からです」


「全くわからん」


 率直な感想を述べる金髪。気づいたらこんなとこで。同じ境遇らしいヤツが頭ブチ抜かれて。んで銃を渡されて。連想ゲームにしても雑すぎる。正解率ゼロを目指してるのでないなら、あまりにも適当すぎる。


 そろそろ受付も説明ばかりで飽きてきた。早足で端的に、が今からモットー。


「そして残りの質問もまとめちゃいますか。あなたがた死刑囚は。脂ぎったお金持ち達のビジネスの一端を担っているんですよ」


 それこそ、仮面舞踏会みたいな悪趣味なマスクつけて。いや、そんなことはしないけど。そもそもそんな一堂に介してるところは見たことないし。


「ビジネス?」


 鋭く、怒気を孕んだ目の黒髪。これが、仕事? なら今目の前で転がっている猫背だった男は、仕事で死んだわけか? とんでもないブラック企業だ。死ぬ形くらい……選べなくて普通か。鼻で笑う。


 ご満足いただける解答だったようで。受付もニッコリ。


「そうですよ、あなたがたは強制的に働かされているわけです。刑務所で働いているのとかって見たことあります? それのいち野外活動です。拒否権はありません。だって死刑囚なんだから」


 だって死刑囚なんだから。それだけのことをやったのだから。そう言われると、噛みつきそうだった金髪の拳も若干は下がる。


「まぁ納得、いくところもあるかもな」


 どうせなにを言っても無駄。受け入れるべきだし、それでいいかもしれない。はるか昔は火炙りとかもあったんだ。銃で一発、というのは充分に温情。優しすぎて涙が出る。羨ましいね、名も知らぬ猫背の人。


 ふむ、と理解の早い静かな一団にどうも満足のいかない受付。本当はもうひとりくらい撃ちたかった。


「でもただ殺すための執行人の精神的苦痛も、そして執行されるまでに生かしておく税金も。無駄だと思いません?」


 そのために国民からお金として徴収しているわけで。死ぬべき人物を生かすために、なんの罪もない人々に重荷を背負わせる。それはおかしい。いや、そういうものなんだけど。死刑に処す、って裁判で出たらそのまま床が落ちて絞首にすればいいのに。

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