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遺世界パラボリック  作者: じゅん
Alea jacta est
18/25

18話

 ボケーっとアロサウルス見つめるアデレイドだが、横目で思案するその姿を確認。


「エリオット?」


「なぜ、そんな磁場の乱れた場所でこうやって会話、撮影ができる?」


 それもかなり鮮明に。どれだけ乱れている、など視認はできないが、人間の体を駆け巡る電気信号に少なくない影響を与えるほどだ。雨でさえ安定感を削るほど電波は繊細。その中で不自由なく使えているこの状況は?


 少し間を置き、躊躇うようにスカーレットはそれを打ち明ける。ちょっとだけ。嫌い。


《……研究の結果、それが使えるようになる技術が他国で開発されたからです。それを我々はご相伴に預かっているわけでして》


 少なくないお金を払って。使わせてもらっている。


「なるほど、俺達は言うなれば株の銘柄、というわけか。企業の駒だ」


 賭け、というよりそっちのほうがしっくりくる。様々なヒントが繋がりかけているエリオット。金持ち達は、俺達が生きて帰ってくるかどうかにベットしている。そう考えていたが、どうも違うらしい。


《……》


 スカーレットはなにも語らない。肯定も否定も。ただ。笑う。


 勝手に話が進んでいて、さらにどうもその通りらしい。またもやオーガストは蚊帳の外。俺がリーダーなのに。


「株? 株価とか、そういうあれか? なんの話だ?」


 この焦れる局面。先に痺れを切らしたアロサウルスが首を振り回す。非常に頑丈な頭蓋を持ち、ジュラ紀ではそれを武器に暴れ回っていた、とも言われている。


 ギリギリのところでかわしながら、情報をまわすエリオット。幸い、避けることに集中していればなんとかできなくはないスピード。ただ、自分達からは決定打はない。結局はジリ貧。咆哮が耳を劈く。


「なにか材料があればいいことがあるってことだ。そのための材料を探すのは俺達。深く考えずあいつを倒せばいい」


 そうすれば。もっとマシな武器やらなにやらが製造できるということ。もし今回乗り切れたら、次回はガトリングガンくらいは。


「……よくわかんない」


 内容が。アデレイドには理解できない。


 声色が急に冷ややかになるスカーレット。少々。侮蔑の色が混じる。


《そういうことです。いやはや、さすがNo.17。こんなに早く気づくとは。面倒ですね、あなた。私も失言でしたけど》


 ひとつ語れば真実に近づく。自分の発言がじっとりと侵食されているようで。どこか。苛立つ。


 どんどんと外殻が剥がれて、話の本質が剥き出しになっていく。それが。エリオットにはたまらなく快感。


「褒め言葉として受け取っておく。なるほど、だとしたら今の俺達は相当に安い値がついていそうだ。他がどうかは知らんが、三人しかいない。ひとりは女だ。さらにまさか太古の生物。そうなると元々持っていたヤツらは投げ売り、金持ちは空売りで株価を下げにきている、と見るが」


 恐竜の価値がどれほどのものかはわからないが、出現の予想すらできていなかったところを見る限り、それなりにレア。捕獲できるのならある程度の値がついただろう。だが、実際は弱そうな人間三人。これでは全く誰にも期待されない。


 自分達以外にもこの地には多くのチームがいて。どこか離れた場所だろうが、なにかしら神の宝を持ち帰っている最中かもしれない。もし一発逆転の可能性があるならば。他を差し置いて価値を引き上げることができるのならば。

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