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その1

 ――くすくす。

 ――ねぇ、リカってさぁ…

 ――こっち見てるぜ、こわwww

 

  なんかしんど……。

 学校指定の上履きに履き替えながら思う。

 地道に生きてきたし地道に生きてる。でも何をどうはき違えたのか、いじめられっ子だ。わかりやすいいじめはないから、これは被害妄想なのかもしれない。上履きがないとか教科書に落書きされてるとかそういうのはない。

 ただちょっと学校指定の通学鞄が自分のとは違うような気がしたり、覚えのない砂利が机の上に置かれていたり、くすくす笑われたり、ばい菌扱いされたりして避けられるくらい。

 中学生にもなって幼稚だと思う。

 ただ、私が周りを幼稚だと馬鹿にしたところで私の扱いは変わらない。

 ただ、地味にこういうの精神にくるんだよね。

 わかりやすいいじめじゃないから、本当に思い違いかと何度も思う。けどさぁ、他の世のいじめられっ子と比べてもしかたないし。私の精神は弱くって、しんどい。


 おまけにお腹も空いた。

 あそこに咲いてる花が食べられるようになったりしないかな。

 あそこに浮かんでる雲が食べ応えのあるマシュマロで、私が魔法使いなら飛んでいくのに。

 霞食べて生きて行けるように……はなりたくないな、私食い意地張ってるもん。


 「リカー?もう冷蔵庫空っぽよー??」

 母の声。

 「ええーー?」

 冷蔵庫のドアを意味もなく開け閉めする。

 育ち盛りの身としてはお腹が空いて仕方がない。

 きゅるるる……燃費の悪いこと。

 ばたん!

 もう一度開けてみても冷蔵庫の中身が増えていることはなかった。

 「切ない……」

 うちは貧困家庭で、おまけに母は料理が苦手。そもそも食に興味が無いらしく、家計の比重が冷蔵庫の中身に大きく割かれることがない。

 「ねぇリカ、お母さん仕事行ってくるから、洗濯回しておいてね!」

 ばたん!

 ドアが閉まってるんるんで母は出かけて行った。仕事とか言ってたけど多分彼氏だろう。多感な年ごろの娘がいるのに酷なことをする女である。わかりやすいブランドロゴの入った服と鞄を引っ提げて古メイクで出て行った。

 おまけに未熟な中学生に家事を任せていくとは何事か。

 私が親になったら絶対にこんなことしない。

 お洒落だって私もしたいし、それ以前にお腹いっぱい食べることにお金をかける!


 はぁ。

 学校の荷物は重いし宿題はあるし、宿題やっていかないと先生は怖いし、学校行っても気持ちは浮かばれないし、親はあんなんだしお腹は空く。

 昔読んだアンネの日記でお腹を空かせている難民だかなんだかに子供のことを考えろ、お前は恵まれている、みたいな話があった。思い違いかもしれないけど。でも私は現代日本に生きてるうちで、私なりに結構しんどい。

 一応親の擁護をしておくと、私を育てる責任は一応果たしている。学用品は買ってくれるし。

 父親はいない。昔病気で死んだらしくて、顔も覚えていないからどうでもいい。

 ただ私はブスではないし、成績も悪くはないから、そこの遺伝子に感謝はしている。


 このままなんかしんどいままかー。

 なんか希望ってないかなー。

 どうしてうちは果樹園とか持ってないんだろう。

 どうして母は服ばっかり買うんだろう。食べられないのに。

 どうして。

 どうして。

 どうしてええええええ!


 とベッドでごろごろしていたら、地震が来た。

 狭い家、母が買いためた服やら雑貨やらが雪崩を打って落ちてくる。

 普通、服で窒息はしないよね。


 けどどういう加減なのか、私は死んだらしい。

 おさらば。

 この世とおさらば。

 うーん。

 悲しむべきだろうけどいまいち実感が無いせいか、悲しめない。

 友達もいなかったしな。

 はて。

 おつかれさま!私!

 

 ……。

 ……。

 ここ?で思考している自我は何なんだろうか。

 死んだんだよね?だって身体が無いもん。

 不思議なことに意識以上の五体はある。手もあるし足もあるし、掴めるし歩ける。

 まぁ、周りは何もないけれども。

 これからどうなるのかなぁ。ていうか死後の世界ってあるのかな。このまま意識が少しずつ消えるんだろうか。それだったらせめて思いっきり好きなものを食べて好きなところへ行ってお洒落もして、心許せる友達も作りたかった。友達は昔はいたんだけど、気づいたらみんなあちら側だったんだよね。人が信じられなくなってしまったわ。

 とか考えていたら、ぽん!と音がした。ぽぽぽぽぽぽぽぽぽぽん!と音がして、目の前に果物と饅頭が積まれていく。

 うわ!食べ物だ!

 その後ろには今度は服飾店のようにたくさんの服がかかったダブルハンガーが並べられだした。


 「食べてもええで」

 「着てもええで」

 「好きにしてええで」

 そこらへんに響くぼわわーんとした声が三つ同時にした。

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