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聖域の統治者

【玲瓏のディストピア】を読んでくださり、誠にありがとうございます!


今後の執筆活動の励みになるので評価と感想もよろしくお願いします!

ACマッチ当日、広大なフィールドの中央でキリンジとブラストは微動だにせず、ただお互いを睨み合うのみであった。


ブラストのチームはブラスト、ニト…後一人の名前は覚えていないので以後角刈り野郎と命名しよう。


以上3名で構成されている。対するキリンジは彼女と、リクの2名…不利だ…圧倒的不利だ!


「補欠は居なくていいのかい?」


「ほ…補欠はもう少ししたら到着するし!」


嘘である。


昨日と今日で知り合いを当たりまくったが皆揃って任務に駆り出されていた。


唯一声を掛けてイエスと答えたのがリクである。本音を言えばAクラス以上が一人は欲しかったが、背に腹は代えられぬ。


ほぼ詰み…いや、完詰みであるッッ






戦いの火蓋が切られ、キリンジ&リクとブラスト&ニトは一斉に行動を開始した。


「キリンジ! ニトは俺が相手をする。お前はブラストを潰せ」


「了解!」


二手に分かれて間も無く、最初にエンカウントしたのはリクとニトであった。


ニトは間も無くデザートイーグルを取り出し、迷いなくトリガーを引く。


延長されたアウターバレル、マッドブラックの塗装にはサンクチュアリのエンブレムがあしらわれている。


下っ腹に響き、脳を揺さぶる発砲音と共に放たれた弾丸は、木片を撒き散らしながらリクのすぐ側のバリケードをいとも容易く貫通した。


「対人戦で50を使うなんて、イカれてやがるぜ。保護魔法が無けりゃ即ミンチ肉だ」

※50=50口径弾


「ブラストからは容赦するなと言われたもんでな」


リクも負けじと遮蔽物から顔を出し、MP5で応戦した。


落ちた空薬莢の軽い金属音が響き、リクは慣れた手つきでマガジンを入れ替える。


「Aクラスの俺とCクラスのお前…痛い思いをするか今すぐ退場して補欠と変わるか選ぶんだな」


リクは震える手を抑え、加速する鼓動を落ち着けようと深く深呼吸をする。

(俺が負ければ、キリンジに更に負担がかかる。そんな事はさせねぇ)


コツコツという足音がニトの接近を知らせた。


そして、ついにリクは両手を上げながら遮蔽物から顔を出し、ニトの正面で立ち止まった。


「さあ、答えを聞こうか」

ニトの勝利を確信した笑みを見て、リクも不敵な笑みを浮かべる。


「銃はもういらない…ここからが本番だ」

そう言うとリクは徐に収納ポータルから棒のような何かを取り出した。



「それは…刀?」


【凪露兼元】

遠い昔、尊王攘夷派のとある武士が使用した大業物。死した武士の魂は長い年月をかけ刀と同化し、真に誉ある者にのみ仕える。


剣先を真っ直ぐニトに向け、不敵な笑みを浮かべる。

「さあ、第二ラウンドスタートだ」









静寂に包まれる森林エリアの中、キリンジは息を殺し足音を消し五感を研ぎ澄ませていた。


ブラストの位置情報を掴むどころかエンカウントすらしていない今、彼女の不安は募るばかりである。


その時だ、キリンジの心臓が訳もなく警鐘を鳴らすようにドクンと跳ね上がり、頭上にざわざわと恐怖に近い違和感を感じた。


反射的にキリンジは身を翻しその場から離れると、先程の場所に縦型の閃光が走り、地面が木っ端微塵に砕け散った。


(あっぶねえぇぇ!)

かろうじて回避は出来たものの、あんなもの一撃喰らえば即脱落である。


冷や汗を拭い土煙が立ち込める方を見やる。そこから現れたのは…


「ようやく見つけたよキリンジ、不意打ちなど戦闘の美学に欠けるが、確実に勝利を掴むためだ。ご容赦頂きたい」


爽やかな風貌だが、ブラストのサファイア色の瞳の奥からは殺意に近い何かを感じられる。


圧倒的実力差がある者とのエンカウント。いや、無傷の状態で戦闘が行えるのは不幸中の幸いだろうか。


「起きて麒麟、こいつを片付けるよ」


キリンジは収納ポータルからツヴァイヘンダーを取り出し、脇構えでブラストを睨みつけた。


まるで「絶対に勝て」とでも言うように、ツヴァイヘンダーが放つエメラルドブルーの光は普段より強く輝いてた。


最初に動いたのはキリンジ、瞬間的にブルーフレイムを使用し爆発的な加速でブラストに迫る。一方、ブラストはレイピアを両手に構え、一切の動揺も見せず接近するキリンジを睨んでいた。


両者の間合、約3メートル。


「この距離ならいけるッッ」


移動速度、遠心力、今持てる力の全てを乗せてキリンジの刃は真っ直ぐ振り下ろされた━━




フィールド外のモニターに映し出される二人の戦闘。観客の中には研究してメモを取る者もいれば、どちらが勝つか賭けをする者もいる。


「ブラストが相手じゃ流石のキリンジも厳しいだろうな」

「キリンジのサンクチュアリ入団はほぼ確定だな」


ニャルテも観客に混じり、二人の戦闘を固唾を飲んで見守っていた。

「キリンジ、信じてるニャ」






キリンジの一撃をブラストは軽やかに避け、武器をMAC11に切り替えキリンジ目掛けて乱射する。


しかしキリンジもアルカナ種の竜を使役する少女や大量殺人鬼と手を合わせてきた身である。なんの工夫もない射撃如き容易に回避できる…はずだった。


ブラストは発砲するや否や弾道の先にポータルを開き、全ての弾丸がポータルへと飲み込まれて行った。


「一体何をする気?」


「まあ見てなよ」


その瞬間キリンジの周囲に10センチ程の小さなポータルが無数に展開され、彼女は瞬時にブラストの思考を理解した。


だが、時すでに遅し…


360度から放たれる弾丸の雨がキリンジを襲い、みるみるうちにHPが削られていく。


攻撃が止み、ブレスレットのホロUIには「HP 50/100」と表記されていた。


不味い、非常に不味いッッ


補欠も居なけりゃ、援護もない。尚且つ敵は自分より圧倒的格上…何もアクションを起こさなければこのままHPを削り切られて終わる。


なんてことは許されない。決死の判断でハイジャンプで飛び上がり、ファイアボールを構える。


ブラストがキリンジに照準を合わせるより先に、キリンジの狙いが定まった。


「吹き飛べブラストッッ」


しかし、キリンジの掌から炎球が放たれる直前でファイアボールがその場でキリンジを巻き込み爆発した。


「ッッ?! どうして!」


その瞬間、脳裏にブラストの名前が浮かび上がる。


【HP 30/100】

もう体力も魔力残量も残り少ない。多めに見積もって小規模なファイアボールが2回撃てるか撃てないかだろう。


「ブラスト…あなたがやったのね」


「僕の魔法は【ゼルネーヴァ(魔素の爆破)】。世界で僕だけが持つオリジナルの魔法さ」


ゼルネーヴァ(魔素の爆破)

魔法の構成要素である魔素を爆発させる事によって、守りと攻撃を同時に行う強力な魔法。


(紳士的な男子って、殺意マシマシの魔法使う習性でもあんのかよ!)


「降参をお勧めするよ、キリンジ」


確かにこれ以上戦っても勝てる気がしない、たが降参すれば一生ギルドに縛られる。


そんなの答えは明確だ。彼女はニッと笑みを浮かべポータルからライフルを取り出した。


「何言ってんの、ここからは第二ラウンドだよ」

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