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贈り物

【玲瓏のディストピア】を読んでくださり、誠にありがとうございます!


今後の執筆活動の励みになるので評価と感想もよろしくお願いします!

━━━━━━━━

20XX 8/25 3:25

━━━━━━━━

ミーティア本部のカフェテリアは、24時間営業だ。夜間任務前後の食事や単なる夜食目的で訪れるガーディアンも少なくない。


今夜は任務帰りのガーディアンがちらほらいる程度でシェリフとゆっくり話が出来そうだ。


「私が聞きたいのはシェリフの能力とエンフォーサーについて…嘘偽りなく話してよね」


「分かってるさ嬢ちゃん。まず、俺の能力はアルカナ種【パーティクルフューリー】から得たものだ」


「パーティクルフューリー…粒子と何か関係があるの?」


「お、感がいいな嬢ちゃん。パーティクルフューリーは粒子を操る厄介者でな、今は契約で能力を借りてるのさ」


【パーティクルフューリー】

他と一線を画す粒子操作の能力、凶暴さ故にアルカナ種に部類された人型のモンスター。

詳細な生態は未だ謎に包まれたままだ。


「前から気になってたシェリフの瞬間移動ってつまり…」


「ああそうだ。一度体を分解し、また別の場所で再構築する単純な仕組みさ」


そこでキリンジは一つ疑問を抱いた。


「そんな能力を使って、人体への影響が無いとは思えないけど?」


そう、キリンジ自身ツヴァイヘンダーを戦闘で多用する事はない。


アルカナ種の凄まじい魔力を生身の人体に付与するのだ。長時間かつ高頻度での使用を繰り返せば命の保障はできない。


シェリフは暫く黙った後、高々と笑い始めた。


「そう心配するな嬢ちゃん! 俺は英雄シェリフ様だ。自分の能力でくたばる程馬鹿じゃねえさ」


「だといいけど…それで、エンフォーサーについては?」


ビジター(異世界出身者)にはニャルテみたいに良い奴もいりゃその逆も然りだ。あいつは俺らの世界出身のガーディアンを片っ端から殺し、それを生き甲斐にするイカれ野郎だ」


「それで、今回はシェリフが狙われたわけね」


「感のいいお前さんならそろそろ気が付いたろ?」


「充分分かったよ。この仕事の敵は……モンスターだけじゃないって事をね」




━━━━━━━━

20XX 8/25 5:15

━━━━━━━━



いつの間に眠っていたのだろうか。まだ人が少ないカフェテリアにシェリフの姿はもう無く、キリンジの肩には毛布が掛けられていた。


「エンフォーサー…また戦う事になるのかな…」


溜息混じりにそう呟いたその時である…


「私の名を呼んだかな?」


背後から囁きかける背筋も凍りつく冷たい声。心臓が跳ね上がり、反射的に距離を取る。


やはり、彼だ…


「本部に来てまで殺り合うつもり?」


「いやいやとんでもない! あの戦いの後居ても立っても居られなくてねぇ、これは君のさらなる成長を願った私からの些細な贈り物だ」


そう言ってエンフォーサーが渡した物は…


「これは…笛?」

羽を広げた鷹の形をした黄金の笛は、相当昔の代物なのか光沢は失われ、所々傷が見られる。


「その通り、これは王の霊笛だ」


【王の霊笛】

遠い昔、ある国の王が護衛を呼び出すために使用したとされる笛。


「真に必要とする時、この笛を吹くといい」


「こんな物を渡して、どういう風の吹き回しよ」


「まあそう怒らないで、この笛は遅かれ早かれ君を救う事になる…その日まで、大事に持っておくと良い」


「はぁ、訳分かんないし」

キリンジがそう言いかけ瞬きをした直後には、エンフォーサーの姿は既にそこにはなかった━━━





あれから二日、特にこれと言って変わったことも無く、調査任務をこなし本部へ帰還した。


「はぁ〜疲れたぁ、今日はお風呂入って早く寝よ〜っと」


カフェテリアを通り、地下の居住エリアへと繋がるエレベーターへ向かう。


その途中、聞き覚えのある声が自分を呼んだ。

「お〜いキリンジ〜! おかえりニャ〜!」


彼女は軽やかな足取りで近寄り、キリンジの手を取る。その輝く笑顔は太陽のようで、瞳は青空を閉じ込めたように澄んだブルーをしていた。


「ニャルテ〜! 今日は随分とカフェテリアが賑わってるね」


そう、今日はいつにも増してカフェテリアの人口密度が高い。その理由を彼女はずっと気になっていた。


「あれは国外任務から帰ってきたAクラスギルドの祝賀会なんだニャ。ささ、キリンジは疲れてるんだから早く休むニャ」



その時だ…



「君、今キリンジと言ったかい?」


集う人をかき分け、現れたのは一人の少年であった。


「私が…キリンジですけど」


「そうか、僕はギルド【サンクチュアリ(聖域)】のギルドマスターを務めているブラストという者だ」


【ブラスト】Aクラス

15才でAクラスモンスターを討伐した実力者かつ歴代最年少ガーディアン。

Aクラスを主なメンバーとした討伐任務専門のギルド【サンクチュアリ】の創設者である。


「それで、私に何か用ですか?」


「君の評判は聞いてるよ。そこで、突然だが一つ提案がある」


ギルドマスターからの提案など、嫌な予感しかしないが…

「どんな提案?」


「サンクチュアリに加入しないか? 君の才能を見込んで、是非とも共に戦いたい!」


「すみませんが、お断りします」


もちろん即答だ。


確かに、ギルドに加入すれば任務報酬プラスギルド報酬が貰えて生活は今より安定するのだろうが…キリンジには金に変えられない夢がある。


「そうか、だが僕も諦めが悪くてね」


「…?」





「2対2のACマッチの勝負で君が勝てば、今度こそ手を引くと誓おう。だが、僕が勝てばギルドに加入してもらう」


【ACマッチ】

ACアクチュアルコンバットマッチは、通常のクラスマッチと違い魔法、近接武器の使用を許可されたより実戦に近い対戦形式である。

基本的に1チームにつきプレイヤー2名と、チェンジ1名の計3名のメンバーで戦闘を行う。


「試合は明日午前10時から行う。それまでに良い味方を探しておくと良い」


そう言い残しブラストはキリンジに背を向け、再び群衆の中へと姿を消した。




部屋に戻り、ベッドに横になるがどうも落ち着かない。


そして彼女は徐に状態を起こすと隣人にも構わず大声で叫んだ。


「明日本番? メンバー集めろだ? ふっざけんじゃねえよクソガキがぁぁ!」


結局、日が暮れるまでメンバーを探して回る羽目となった。

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