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エンフォーサー

【玲瓏のディストピア】を読んでくださり、誠にありがとうございます!


今後の執筆活動の励みになるので評価と感想もよろしくお願いします!

絶えず戦場に響く砲声、塹壕で蹲り家族の名を呼ぶ兵士、そして数多の罪なき人々を無惨にも喰らい尽くすモンスター。


血の海となったあの日、男は愛する者達のために立ち向かう。


背後で父の名を叫ぶ少女の声に胸を痛めながら…


━━━━━━━━━━━━

20XX 8/25 AM0:52

━━━━━━━━━━━━


シェリフはとあるビルの屋上に立ち、星のない夜空を見上げながら煙草に火をつけた。


「…俺はこれで良かったのか?」

溜息混じりにそう呟き、再び煙草を口に戻す。


その時だ、先程まで頬を撫で吹き去っていく夏夜の風はピタリと止み、生温い空気だけがその場に残る。


ジャキッ…ジャキッ…

突如背後で鳴る拍車の音、その音は徐々に大きくなり、近付いてきている事が窺える。


「久しぶりだな…英雄」

「お前さんもな…人殺し」


シェリフは冷静を徹し、ゆっくりと振り向く。


影で顔は見えないが、破り裂かれた黒いコートを纏い両手にはチャクラムが握られている。


「昔から、私には君が人の形をした化け物にしか見えなくてね…ガーディアンとなった今、そんな君を合法的に苦しませ、あの世に送る事が出来るんだ…素晴らしいとは思わないかね?」


「化け物はどっちだこの外道が」


シェリフはそう吐き捨てた後、煙草を地面に投げ捨てるとそれをグリグリと踏みつけ、ホルスターに手を添えた。


生温い風が二人を撫でて吹き去っていく。


暫くの沈黙の後、最初に動いたのはシェリフだ。


目にも止まらぬ速さでドロー、そして3発のバースト射撃。


しかし、風を裂き進む弾丸はチャクラムによって火花を散らしながら弾かれた。



「やはり、君の戦闘スキルは素晴らしい。だが、華麗に咲く薔薇もいずれ萎れるように、英雄も老い、日々力を失いつつある…だろう?」


「悪いが俺は忙しいんだ。5分やるから、その間に殺してみな」


シェリフの挑発に、エンフォーサーもクックッと笑いチャクラムを再び構える。


「では、お言葉に甘えるとしよう」


エンフォーサーの手から放たれた二つのチャクラム。高速で回転しながら不規則な軌道でシェリフに急接近する。


そしてチャクラムの刃がシェリフの喉に接触する寸前、彼は文字通り消滅した。


「闇の象徴でもあるお前さんが、老いた英雄に背後を取られる。どんな気分だい?」


エンフォーサーの背後でシェリフの嘲るような声と同時に激鉄が起こされる音が響く。


「私に勝った気でいるのか? まさか、こんなに近づいて来てくれたんだ…これが正真正銘のお別れだとも」


「なんだと?」


「忘れたかい? 私のブレスレットに記憶された魔法はビートストッパー上位種のものだ」


次の瞬間地面から無数の棘が現れ、シェリフを拘束した。


「今宵の月はいつにも増して美しい。そうは思わんかね? 英雄よ」


「クックック」

勝ち誇ったように月を見上げるエンフォーサーの背後で、シェリフは突然笑い出した。


「何かおかしいか?」


「いやいや、過去の英雄に勝った気でいるお前さんがあんまりにもおかしくてなぁ」


「なに?」


「俺が英雄の時代はとっくに終わってるんだよ。もっと若く、もっと賢い奴が…お前の天敵として、英雄として、希望としてこの世界に君臨するだろう! その日まで怯えて生きるがいいさ…」


「俄には信じ難いが、中々面白い話だ」


「時が来れば分かるさ」


「…さらばだ、英雄よ」


四方八方から漆黒の棘が伸び、シェリフの身体は瞬く間に串刺しとなる…


「英雄の伝説を継ぐ者か…これは面白くなりそうだ」


その時、屋上の扉を誰かが勢いよく蹴破った!


艶のある銀髪に、m1894ウィンチェスターライフル…そう、キリンジだ。


「シェリフッ!」


しかし、彼女が目にしたのは全身黒いコートに身を包んだ長身の男と、串刺しになり力無く腕をぶら下げる英雄であった。


「おや、残念だったね。たった今君のお仲間を寝かしつけたところだ。永遠にね…」


「そんな…」


「落ち込んでいるところ悪いが、君は一体誰だね」


「……てろ」


「ん? すまないよく聞こえなかった」


「黙ってろって言ったんだよクソ野郎ッ」 


そう叫んだキリンジは指をパチンと鳴らし、真っ赤に燃ゆる炎を纏った拳を固く握り締める。


「来いよ殺人鬼、お前の相手はこの私…キリンジだッ」


「麒麟児……そうか、そういう事か英雄よ! この小娘が貴様の言う希望なのかッッ」


「……黙れっつってんだろうが!」

キリンジは拳を突き出し、炎の球を放った。


「その程度か、麒麟児よッッ」

エンフォーサーもコートからチャクラムを素早く取り出し、刃から放たれる衝撃波で相殺する。


「なるほど、中遠距離での戦闘は中々得意なようだな。だが…」


すると、彼は猛スピードでキリンジとの間合いを詰めチャクラムを振り翳した。


「ッッ!」


響く金属と金属がぶつかり合う音。


咄嗟の判断でゲートからツヴァイヘンダーを取り出し攻撃を止めるも、大柄な男と小柄な少女…シンプルなフィジカル勝負では圧倒的不利だ。


(こんなの続けてたらジリ貧だ。体力が尽きる前にこの鍔迫り合いを解かないとッ)


「ハイジャンプ!」


ハイジャンプで空高く飛び上がり、エンフォーサーと距離を取ろうと試みる。


しかし…


「何処へ行くつもりだね?」


突如背後で囁きかける鋭く背筋も凍るような冷たい声…


対空時間1秒にしてジャンプ高度3m…確実に距離は離したはず。


(駄目だ…振り向いても追いつかないッッ)


直後背中に走る激痛…チャクラムの鋭い刃によって斬りつけられたキリンジは力無く地面に落下した。


「クッ…痛い痛い痛いッ!」


朦朧とする意識の中、視界に映るのはコンクリートの地面と自身の体から流れ出ていく血液、そしてゆっくりとこちらに向かってくるエンフォーサーの姿だ。


(私…死ぬの? やっとガーディアンになれたのに? シェリフの仇すら討てずに? 嫌だ嫌だ嫌だッ)


キリンジの戦意を否定するように、体は一向に動く気配はない。


(あぁ…冷たい…寒い…死にたくない…シェリフごめんなさい…ワタ…シ………)


ゆっくりと閉じられる彼女の瞼…身体は冷たくなり…肌から色が抜けていく。


そうして彼女の鼓動も徐々に弱まり、ついに彼女の17年という短い人生は終わりを迎えた…

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