アラックに酔うと、人前であろうと室内であろうとにかかわらず上唇を吸いに顔をよせて来るのでした。
とはいえ食文化が貧しいのもスリランカでした。瀟洒なリゾートホテルに宿泊したって食事の内容は同じです。選ぶほどのメニューがありません。彼らのご馳走は大抵カレーライスかフライドライス、あとは米粉を伸ばして焼いた「ホッパーズ」、せいぜいそんなのです。毎回そういう食事ばかりだからでしょうか、町行く男といわず女といわず凄い体つきが目にとまります。インドの食事でさえ人を食傷させましたが、スリランカのはそれに輪をかけたものでした。本当に、東南アジアの食事が恋しくなりました。
ビールの不味さと言ったらありません。変な臭みがあります。とても飲めません。外国ブランドであるCarlsbergを探して飲みました。ワンヤン君も大のビール党、まずさを嘲笑していました。その代わり「アラック」とかいう、ココナツの焼酎が島の名物とされていて、これは中々いけるとのこと。ホテルのバーでは決まってアラックを注文していました。わたしには濃すぎて少しも美味しいと思いませんでしたが。というか、わたしはもともとアルコールが好きでないし、クリスに出会うまでビールの味さえ知りませんでした。私はお酒が好きなのではなく、ビールが好きになっただけなので。なのにワンヤン君は飲ませようとします。
「アラック」もそれから作るのか、スリランカのココナツはオレンジ色がほとんどでした。街道沿いでも街中にいても至る所ココナツの木を見上げます。オレンジ色の実が鈴生りです。島の人は割って中の汁を飲むのでした。インドの南でうろうろしていた時にも、荷台に乗せて売り歩くおじさんを見かけましたけれど、何の実だろうかと思ったものでした。ココナツだと気がつかずに。
アラックに酔うと、人前であろうと室内であろうとにかかわらず上唇を吸いに顔をよせて来るのでした。