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彼とは一時的なものだとの前提で付き合いました。
ワンヤン君と知り合ったのはコモリン岬ででした。インド大陸最南の地点です。彼は韓国の人、私はハングルが分からないので元はどういった名前なのか知りませんが、自分はOneyoungだと人に書いて見せるのでした。英語は幾らかできました。日本語が大層上手でした。
岬ではパンジャビを身につけていたのに、ワンヤン君は日本語で話しかけてきました。私が驚いたような顔をした時、よく日本の子はそういう格好をしたがると笑いました。韓国人バックパッカーにも現地人ファッションをする者は珍しくないけれど、韓国ではなくすぐに日本だとわかると言います。クリスに見あらわされた時と同じです。
彼とは一時的なものだとの前提で付き合いました。どことなく元婚約者を思わせる雰囲気がありました。