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第13話 世界の反応2――とある情報部の右往左往――




『ダンジョンが出現しました』

「何ですかこれは…」

「…鳥居です」

「それは知っています。…競技場は、どこに行ったのでしょう」

「「「「「「「判りません」」」」」」」

「はあ、…オカルト部門に連絡を」

「………発狂しています」

「はあ、…メールを送りつけておきなさい」

「……」



『全ダンジョン間で通信可能です』

「ボス、今、世界中で通信ができるって聞こえましたぜ」

「…はああああ……」

「ボス、壊れるには早いですぜ」

「気持ちを入れ代えてました。でなければ、本当に壊れるでしょうよ。外交官に通話をつないでいて下さい。後、サーバーを強化したと言っていましたので、どこかホワイトハッカーに依頼して、DDoS攻撃(巨大データ攻撃)を掛けて下さい」

「連絡します。私の贔屓(ひいき)でかまいませんか」

「よろしい。恐らく無駄になるでしょうし」

「了解」



『ダンジョンの出入規制は不許可です』

「誰でも入れるなら、もう少し誰か入れませんか」

「そうですね。大使館に連絡して人員を募って下さい。日本の外務省にも連絡を入れて下さい。断ってきたらダンジョンの反応がわかります」

「ダンジョンルールについてどこに研究させますか」

「聖書において、最も人間を殺したのは神です。情報収集に留めなさい。ただ、日本語研究者の意見は聞いておきなさい」

「それなら良い知り合いがいますぜ」

「手配しなさい」



『アマテラス様、天皇陛下と総理を小脇にダンジョン突入です』

「このロリータ、段取りってものを(ことごと)く無視しやがんな」

「いきなり海ですか」

「外交官との通信は安定しています」

「もう少し繋いで、充電減少傾向を確認しなさい」

「上海株式市場が閉鎖しました」

「香港市場が規制を始めました。開いてはいます」

「東京はどうですか」

「為替市場が円高に変わりました」

「債券市場が日本買いを始めましたが、売り手がいない状態です」

「株式市場は未だ乱高下、取引不成立が増えています」

「オカルト部門は何か言ってきたかね」

「未だ発狂状態です」

「サイバーアタックの準備ができ次第、攻撃開始です。他の組織の活動には十分注意してください」

「了解」

「駐在武官のダンジョン侵入の許可が出ました。『外交関係者』が出入りするのは自由だそうです。行方不明になった時困るので、報告は欲しいそうです」

「インテリジェンスは関知しないか」

「在日本大使館の現地雇用者に釣り好きがいませんでしたか」

「ああ、と、これかな? こっちだ。駐在官の日本人妻ですね。現地雇用者は、ボディーガード代わりのようです」

「では、その奥方に釣りの依頼をしなさい」

「承知しました。大使に依頼します」

「サンプルは種類の多さが優先です。水産研究者に協力を依頼しなさい」

「はい」

「ダンジョンルールの研究はどうです」



『魔石の紹介です』

「新しい動きです」

「何が始まりました? 小さすぎてよくわかりませんね。駐在武官にマジックストーンの入手を依頼しなさい。自衛官に混じって堂々と行うのを推奨します」

「水産研究者は長野県と鹿児島県です。海洋生態学の研究者が北海道です。後ですね、海洋生物学の博士が、沖縄に滞在中です」

「その博士に協力を要請! すぐにチケットの手配を!」

「北海道のよ、生態学の研究者は当てになりそうかい」

「大学院の留学生です。博士号取得後も3本の論文を発表しています」

「当てになりそうですね。協力を要請しなさい。チケットもビジネスを!」

「ボス、ダンジョンルールの考察が上がってきましたぜ」

「貴方はもう少し上品に振る舞えないのですか」

「スラムのチンピラ上がりに、品なんざぁ求められても困りますぜ。それよりダンジョンルールですぜ。日本語研究者がゆうには、1・2・3・4と並べた以上、そのまま優先順位で間違いなし、だそうですぜ。バチはハンムラビ法典じゃないかな、てのが見立てです」

「貴方はどう思いますか」

「抽象的過ぎますぜ。まあいいや、4の意味の扱いには注意が必要でしょう。それより1です。この際ウクライナでテストしてみましょうぜ。狂犬が前線に出るようです」

「チェチェンの狂犬ですか。いいでしょう。どうなろうとそう大きな影響は出ません。最適です。CIAに協力の要請を。コメディアクター大統領にも必要ですね。大統領には、ダンジョンには最大の注意を払うよう要請しなさい。この件は貴方に任せてもいいですか?」

「任されますぜ」



『石油天然ガスが出るんじゃ』

「ではこの件、こちらの差配は『Oh!!!Jesus!!!』どうしました」

「ダンジョンから石油とガスが出るそうです!」

「……ソブリンファンドに損切りを提案しなさい。石油・ガスだけではなく鉱物資源全てです。そうだ。穀物市場もです。急ぎなさい」

「承知いたしました」

「ウクライナの件は任せましたよ」

「任されましたぜ。SASに渡りをつけてきます」



『温暖化の主要因は土中メタンにCO2なんですよ』

「うん。はあ、少し落ちつきましたか」

「…これ、正しいのでしょうか」

「判りませんね。気象学者に任せましょう。しかし5年ですか。プラントを一から造ると、それだけで5年位かかりますがね」

「……」

「文明が崩壊すると存在が消える神ですか、何か引っかかりを感じませんか、boss」

「それを考えている所です」

「地球温暖化が引き返せないとしても、猶予はあるはずですね」

「まるで考えさせないようにしている感じがします」

「プリンセス・レイコの小説にあった、念話による思考誘導ですか」

「それです!」

「boss、この件を重点的にAIにかけませんか」

「いいでしょう。チームに連絡しなさい。内からの優先課題だと」

「了解」

「しかしまあ、こうも幼女に叱り飛ばされると、つらいものがありますね」

「お孫さんですか?」

「そうです。癒しが恐怖に変わるとは」

「……」

「何です、変な顔をして。今さら驚きませんよ、貴方が私を洗っている程度の事で。その程度出来なければここにいる資格はありません」

「…あっ、レアメタル・レアアース区間ですか、完全に流しましたね」

「たかが鉱物資源位では驚きませんよ」



『屋久島に到着です』

「キレー」

「すごい」

「スゲ」

「綺麗だ」

「これはまた、世界遺産にでも迷い込みましたか」

「虫もいない森ですか、それだけで観光客が呼べそうですが」

「クウ~、私の事はホっておいてちょうだい!」

「そんなつもりはなかったんですが…」

「DDoS攻撃の結果が来ました」

「嫌に早いですね。結果は?」

「『海に海水撒いてる気分』だそうです」

「相手にもならずですか。ふう、このロリータ・ゴッテス、本当に、相当、文明が崩壊すると存在が消える神に対して根に持っていますね」

「使い古されてはいますがね、『人が守る自然は人に心地よい自然』ですか」

「耳がイタイです」

「この辺りは素直に反省すべきだな」

「…ガス・石油に続いて無限の資源ですか」

「やはり他の鉱物資源も無限でしょう。さて、次は、恐らく覚悟がいりますよ」



『小麦畑に到着したよ』

「「「……」」」

「無限の農地…」

「その通りですね。アフリカの戦争の8割は治まりますよ」

「AIチームからです。『ダメ。思考妨害有り。質問設定出来ず』以上です」

「はあ、簡潔でよろしい。元の解析に戻ってもらうように伝えなさい」

「ハハハ、世界経済壊滅ですって」

「貿易は無くならないですか。それではダメなんですよ。人間の欲望と言うものは実に度しがたい」

「海洋生態学の学生、協力してくれるそうです。東京に18時前に着くと」

「よろしい。それまでにはサンプルも釣れているでしょう。大使館に連絡を」

「了解」



『6階層到着なんだな』

「モンスター区間て無駄に広くないですか」

「どう考えます」

「室長、ダンジョンが亜空間であると言う仮説に異論は」

「反論の糸口が見い出せません。せいぜい、亜空間と異空間、異世界の違いを確認したい位です。続けなさい」

「亜空間は、常識的には球形になります。しかし、階層展開している事を考えると、階層設定をコピーして使い回した方が簡単です。その場合、各ダンジョンは円柱型の亜空間になるのではないでしょうか」

「仮説としては悪くないです。しかし、このサイズの迷宮型ダンジョンがありますと、死ねますね」

「私も勘弁願いたいです」

「うん? 今首相が発砲を命じませんでしたか」

「命じました」

「はあ、あの国の事だ、大事にするのでしょう、大事の前の些事ですのに」

「…工作を掛けますか」

「やりたくないですが、G7サミットには必ず来てもらわないと困ります。穏便にメディア誘導して下さい。うまく行かない場合は、タブロイド紙に日本を笑う記事を載せなさい」

「承知しました」

「ポーションってダンジョン限定か、残念です」

「ふふふ、こちらの首相も派手に胸をなで下ろしているでしょうよ」

「「ダンジョンスマホってそのまま過ぎです」」

「たぶん、ダンジョンスマホで定着するんじゃないですか」

「代わりの呼び名が見当たりませんか」

「はい」

「トレードってまずくないですか」

「はあ、厄介ですね。それより日用品が気になります。どのタイミングでか、ダンジョンスマホは一斉配布されるはずです。駐在武官に連絡して、日用品のリストを出させなさい。彼のダンジョンポイントもですが、釣りをしている奥方達のダンジョンポイントも確認して下さい。そうだ、通話や、メールのアドレス登録の確認もです。後、ダンジョンスマホで外と連絡できるかも確認して下さい。懸念は、無駄になるでしょうが」

「海洋生物学の博士と連絡がつきました。もう東京にいるそうです。喜んで協力させてもらうと、すでに大使館に渡りはつけました。釣り組にまずは合流するそうです」

「それはラッキーです」

「何でも、アマテラス降臨を見てすぐに飛行機に乗ったそうですよ」

「…運が良いのでしょう。そう思いましょう。突っ込むとろくでもない事になりそうな予感がします」

「駐在武官から大使館ヘ通話です。1階のネズミは1ポイントと、一回り大きな3ポイントがいるそうです。日用品は水・食料品・衣類・袋・キャンプ用品などがあるそうです。仮に1ポイント1円とすると、水以外は相当割高だと。自衛官が試しに水を買って見たそうですが、スマホから、ポンッとペットボトルが出てきたそうです。気になるのは、日用品の一番下に紛争地バナーがあって、ここでは開けませんと出たそうです。彼からは、もう少し自衛官と交流を続けるてから釣り組に合流すると。気のせいかもしれないが、アメリカ大使館の動きが鈍いと。以上です」

「アメリカ大使館には探りを入れなさい。聞かれている中での報告です。他の外交官も気づいている事でしょう」

「質問タイムに外交官に連絡を付けますか」

「止めておきましょう。さて、何を聞かせてくれますか」



『質問タイム』

「…のじゃ語って何です」

「知りませんよ。日本語なんて言う摩訶不思議な言語の、更に変異した方言など理解不能です」

「日本人は宗教意思は薄いのではなかったですか。バチだのなんだの普通に信じているように見えますが」

「初詣だの何だの、宗教的行為の参加比率は世界でも屈指ですよ。大体、7・80年前まで『現人神』等を信じていた民族です。神の捉え方が我々とは根本的に違うのでしょう。それよりも日本神話の洗い直しです。まずはこの弟神を調べてください」

「了解」

「ス〇〇ーブ・ジョ〇ズって、ITの神様とか言われてたけど、ホントに神様になってるのか」

「Demon!」

「敬虔なお前さんには受け入れがたいんだろうが、アニミズムはそんなもんだ」

「アニミズムの思想研究は一から洗い直しです。オカルト部門は復活していますか」

「ダメです。また発狂しました」

「はあ、まったく」

「税金計算勝手にやってくれるって神か!」

「神なんだろ、今更何言ってる」

「こんな時にオカルト部門が使い物にならないとは」

「もう、オカルトなんて超えていますから、仕方ないのでは」

「ただの愚痴です。兎にも角にも、復活したら仕事をさせてください」

「仕事の依頼は送り付けます」

「原発だって造れるけど電力は持ち出せない。パイプラインもダメですか」

「それでは5年に間に合わないと思いますがね」



『ダンジョンは溢れるんじゃ』

「ダンジョンスタンピート有りてか、笑うしかなくなってきたな」

「「「「「………」」」」」

「……太陽神から見れば我々など地球の上を這いずり回るただの猿ですか。やってられませんね、ハハハハハハハハハハハハ」

「「「「「……」」」」」

「早く起きる!」

「boss、ジョージにあまり無茶なことはさせない方が良いのでは!」

「その通りです。至急連絡を付けなさい。SAS側でなけれ、最悪、身バレしても構いません。首相にも詳細判明まで全軍事作戦の中止を強く推奨すると、緊急メールも出しておきましょう」



『極小ダンジョンなら生活出来ます』

「この極小ダンジョンは神の救済なんだろうか」

「神の罠の間違いでしょう」

「ダンジョンが亜空間は確定だな」

「出現場所は物流拠点の近くと言うことですか」

「公園なんかには小ダンジョンができるのか?」

「川田首相は壊れましたか。内のほど図太くないのは分かっていましたが、それが大写しされたのは問題ですね。この情勢下での政権交代は避けたい所です。メディア誘導は必要ですね」

「了解。大使館他、極東部門に連絡します」

「駐在武官からです。先ほどのアマテラス様の叱責は、ダンジョン中に響き渡ったそうです。記者の発言の所から。彼は信仰に問題を抱えたようです」

「ハハハ、私だって抱えましたよ。所であなたはあの神を、『アマテラス様』と呼んだことに気づいていますか」

「!」

「そう言う事です」

「ジョージと連絡が取れました。身バレ無しです」

「よろしい。これは飛んでもない社会問題になります。重点的に情報を集めなさい。後、一神教・多神教問わず原理主義者への監視を強めなさい。警察にもそのように」

「「了解」」

「駐在武官からの報告の続きです。釣り組と合流、漁労によるダンジョンポイントの増加は起こらない事を確認したそうです」

「まあそうでしょうね」

「合理的に資源は配置するか。この都市国家マイナスってどこでしょう」

「バチカンのようなイタリアの内包国あたりじゃないかな」

「そのあたりは出来て見ればわかります。資源の差し替えは起こって見なければ判りません。放置で」

「バチの基準は大事ですよ」

「これ、脅すが入っているのがまずいな」

「その通りです。ダンジョンに入る政府職員には留意するように通達を」

「了解です」



『パクス・アメリカは望めば終わるんじゃ』

「これは説法でしょうか」

「駐在武官がこれもダンジョン中に響いているそうです。猫による魚の強奪はすでに起こっていたそうですが、これと言って罰を受けた様子はなかったそうです」

「飼い猫ですか、野良猫ですか」

「野良猫のようだと」

「それでは参考にならないです」

「ふん、アメリカはえらくやり込められてるな」

「我々もアメリカを笑えませんよ。なんにしても、ドルによる石油取引は、近いうちに終わります。そして、ロシアがこれから仕掛けてくるはずだった飢餓輸出も、無駄になります」



『ダンジョンスマホは外でも使えるんじゃ』

「ポンドを維持したのは、本当に大きな意味がある。大陸はかなり大変な事になる。デフォルトする国が続発しませんか」

「当然なります。基軸通貨も崩壊します。そして、恐らくはダンジョンポイントが取って変わるでしょう」

「為替業界は文字通り壊滅するのでは」

「行く行くはそうなるでしょう」

「はあ、特許まで出来るのかよ」

「いえ、ダンジョンスマホ機能が部分的にせよ、外で使える事の意味が重要です。恐らく、電子決済のダンジョンポイント置き換えが発生するでしょう。グローバル経済の破壊とか言っていましたが、ある意味、究極のグローバル社会が発生しますね。為替は意味を持たなくなるでしょう。どうも、神様達は虚業がお嫌いのようです。もし持っているなら、暗号資産は全て売っておきなさい。存在の意味さえ持たなくなりそうです」

「基軸通貨どころか、一般通貨さえも、ダンジョンポイントに置き換わる事になりますよ。通貨発行権が、事実上、消滅する」

「ある意味、それを為そうとしたのが暗号通貨です。ドル決済を回避する手段としても機能し始めていましたが、完全にダンジョンポイントが置き換わります。マイニングなど、その辺でネズミを蹴って回る事で置き換わります。神様は盗むな、嘘をつくなと言う。ダンジョンポイントを使った詐欺は、ダンジョンポイントを使った経済からの追放を意味しそうです」

「それは、ダンジョンの汎人性を奪った場合でも、起こりそうじゃないですか」

「下手すれば、国ごと滅びると言うルールの二つ目のルールが、そこまで軽いのかどうか、複合的なバチの一つとしては必ずあるでしょう」

「神を笑う自由を神が認めたのに、情報統制などできるかよ」

「その通りです」

「「……」」

「長かったのか短かったのか」


『ダンジョンが日本時間明日午前6時に出来るよ』

「「「「「「………」」」」」」

「「「「「「それを先に言え!!!!!」」」」」」

「ハハハハハハ笑っている場合ではないですね。ダンジョン出現まで「13時間と少しです」」

「私は首相の元に、セイラ付き合いなさい。ケビンはここで統括、ジョージにはこのままウクライナを担当しろと伝えなさい。ロシアにまで手を延ばす必要はありませんが、パッシブのアンテナは張って置くように。大使館に日本の石油・ガスの探査に同行を申し出るように通達、可能ならBBCの同行を手配しなさい。私との連絡は絶やさないように。では、後は任せます」

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