第11話 人類、再び幼女に叱られた
「では質問タイムなのじゃ」
そして頭上を見上げます。
モニター出しっぱなしでした。
ヒョイと消えました。
司会進行がいませんね。
ああ、秘書さんが出てきました。アマテラス様の、予定ぶっ壊しが炸裂していたようです。
「司会進行を務めます。斉田です。まず、陛下、何かございますでしょうか」
「私事で申し訳ありませんが、玲子に掛けたバチを、いい加減教えていただけませんか」
「フン、しょうがないの。のじゃ語会見をランダムで一度で許してやったのじゃ」
これはひどいバチです。いつ発動するか分かりません。その心労いかばかりでしょうか。
「非道い」
どこかで記者さんがつぶやきます。
「フン、随分と譲歩してやったのじゃ」
腕組んで横を向くアマテラス様、ぶんむくれです。
しかし、記者さんのつぶやきまで拾うこの放送、どうなっているんでしょう。
「玲子には体を借りた礼を別途したのじゃ」
「どの様な祝福でしょか」
「何、弟に加護を借りての、派手に授けてやっただけじゃ。妾の全力での」
何それ怖い。
取りあえず玲子様、行き遅れはなさそうです。
「いくら妾でも、縁結びは門外漢じゃ。そうひどい事にはならんのじゃ。五月蝿いわい玲子、ちゃんと繋がっておる。変な奴でもないわ! 安心せい! ちょいと出会い方がろくでもない事になるかもしれんだけじゃ。そうゆう訳じゃ。お主も安心せい!」
「はっはあ」
何ら安心できる要素がないのは気のせいでしょうか。
陛下も不安気です。とは言え、アマテラス様はこれ以上言及するつもりはなさそうです。
「総理から何かございますか」
「ダンジョンから取れる物などに、税金をかける事は問題はありませか」
「ダンジョンスマホで、ポイントと売買の記録は残るのじゃ。何じゃ?銀行口座と紐づけろ?なんかス〇〇ーブ・ジョ〇ズがゆうとるの」
ガヤガヤガヤガヤ
「英雄神てそう言う事か」
外国人記者さんですが、間違いなく英語だったような?
「お主は日本の文化に詳しそうじゃの。そうゆう事じゃ。そこに思いがあれば神になる。当然、残念な奴もおる。じゃが、神道が妾達のあり方ではないのじゃ。たまたま近いのが神道やら道教じゃ。ス〇〇ーブ・ジョ〇ズが、スマホをアップデートしたとゆうとるのじゃ」
スマホを出して見て見てみます。
ダウンロード中…100%…インストール中…完了。
何々、口座登録、売買記録、討伐記録、取得記録、特許申請、神力GPSマッピング、……。
古いレーダー測位機とか引っ張り出そうとしてたんですが、無駄になりました。
「税金も任せろとゆうとるのじゃ。法律書いてダンジョンに放り込むのじゃ。許容外やら瑕疵があれば受理せんのじゃ」
さすがはITの神様です。アマテラス様とは一味違います。税金問題まで一発解決です。
しかし、一部一神教徒のみなさんの目が怖いです。死んでるのと血走ってるのと。
ヤバイ感じです。天使エノクとか知らないのでしょうか。
「ほれ、次じゃ。川田よ、何ぞあるかの」
「ダンジョンの中に施設を整備しろとおっしゃっいますが、どの程度の物が許されるのでしょうか」
「どれだけでもじゃ。何なら、原発でも造ってみるか。五月蝿い、忘れとったのじゃ。ダンジョンの資源はケーブルやパイプラインでは持ち出せんのじゃ。うむ、ダンプやタンクローリーで持ち出すしかしないの、ベルコンもダメじゃ。電力も電線つないだ処で、ダンジョンの外には送電できん」
非効率です。断固反対!
「そんな物ができれば、人間はどこまでも石油・ガスに頼ろう。それではいかんのじゃ。次じゃ川田!」
「ダンジョンの4つのルールですが、破るとどうなりますか」
「ダンジョンが溢れるの。こんな奴じゃ」
ピカッと光ったアマテラス様の手の平に、円筒形をつないだような、土塊をこねたような銀色の人形が出てきました。
ピコピコ、ピコピコ。
弱そうですね。
「こんなじゃが、人間では決してに勝てん!」
ガヤガヤ、ガヤガヤ。
外国人記者さんガチギレです!
「やはり悪魔の類であるか!」
「自惚れるでないぞ人間! 人間なぞ所詮、妾のくしゃみ一つで死に絶えるちっぽけに存在に過ぎんのじゃ! 人間は自然を征服する権利を与えられた? お主等自身が自然じゃ、自然が自然をどうやって征服するのじゃ! 出直してこい! 我々が滅ぶ時は地球が滅ぶ時? 阿呆! お主等が滅んだ後も、地球は自然の営みを続けておるわ! 我々は神に選ばれた? お主等が勝手に神を選び創り出したのじゃ! 怖いか? 己が特別な存在でなくば夜も寝れんか! じゃがの、この宇宙に特別な物など何一つないのじゃ!」
はっ迫力です。
よく考えて見れば、太陽系で1・2を争う神様でした。のじゃロリですが。
これは確かに、玲子様のバチも、どこまでも譲歩していただいたのかもしれません。
咳き一つ立たないとは、こう言う事のようです。
ただ、以外と怖いと言う思いは強く出ません。成人して母親に叱られる感じでしょうか、どこか罰が悪い感じです。
「フン!これ位にしてやるのじゃ」
プレッシャーが少し下がりました。
「ダンジョンのルールは1から4まで。バチは段々と弱くなるが、一つ、ダンジョンへの攻撃の禁止。これは神に対する攻撃じゃ。せめて、これは避けるのじゃな。妾は、ダンジョン運営には携わっておらんゆえ、基準も何も知らんがの、下手をすれば、国一つ丸ごとなくなるじゃろうの」
恐ろしいバチです。
ようやくアマテラス様のプレッシャーがなくなりました。
「次じゃ川田」
「ダンジョンの中で生活は出来ますでしょうか」
「極小ダンジョンはいつまでもできるの。他は1月ほどで、出たい~出たい~と、思うようになっとるの」
「それは何故でしょうか」
「分かっておろう。お主等がダンジョンの中に逃げ込まんようにじゃ。極小ダンジョンで出たいと思うなら、そこは紛争地帯ではないのじゃ」
「極小ダンジョンは紛争地帯以外には出現しないのでしょうか」
「他にも出るのじゃ。まあ、紛争地帯での出現数が圧倒的なのじゃ。次じゃ川田」
「ダンジョンが出現したその地下はどうなっているのでしょうか」
「インフラは適当につないであるのじゃ。テキトーではないのじゃ。ダンジョンは亜空間、次元相が違うゆえ、相互干渉はないのじゃ。次じゃ川田」
「ダンジョン出現場所は、どのように選定されるのでしょうか」
「色々じゃの。ただ、開けた交通の要衝なんぞは第一級の設置要件じゃ。ここについてであれば、妾が気に食わんデザインであったからじゃ。しかも、大赤字で困っているようじゃったでの、皇居で会見をするなら移動するにもちょうど良いかと思うたのじゃ」
「そんな理由で5,600億円が!」
「知らんのじゃ」
アマテラス様、涼しい顔です。
「では、東京体育館と聖徳記念絵画館を巻き起こんだのはなぜですか」
川田総理が、また壊れ始めましたね。
「ゆうたであろう。狭いからじゃ。特大ダンジョンの物流拠点としてはまだ狭いの。本当は、神宮外苑と神宮球場も、まとめて更地にする方がよかったと思うのじゃが、五月蝿い奴がおっての、見送ったのじゃ」
「ハハハ、狭い、狭い…」
だめです。川田総理が壊れました。
「壊れたか。まあ、良く耐えた方かの」