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第30話 「待っててくれる?」

 佳乃さんの部屋の掃除を大体にして、ようやく夕食になっていた。

 省吾くんからは魂が抜けていた。


「今日は疲れたな……」

「省吾くん今日二回くらい死んでましたもんね。あと一死でゲームオーバーですよ」

「うるせぇよ」


 陽葵が夕食を作っている間、4人でそんなやり取りをしながら一階の和室でくつろいでいた。


「あれはショーゴが失礼なこと言うから悪いんだろ」

「そもそもあんたは自分の部屋を俺たちに片づけさせてることに疑問を持ってくださいよ」


 省吾くんと佳乃さんがそんなやり取りをしていた。


 この二人、過去には色々あったらしいがなんだかんですごく仲がいい。

 このシェアハウスに元からいた三人は、なんとなくだが絆というか三人にしかないような見えない繋がりが見えるときがある。

 それが少し羨ましかった。


 あんまり思い出したくないけど、前いた会社で言われたときあったなぁ。

 “信頼と人間関係は年月とともに積み重なっていくもの”だと。


 少しだけ大人になれた気がする今なら、その言葉の意味が分かるような気がする。

 この三人は、きっと時間をかけて今の遠慮のない関係になったのだろう。


「ご飯できましたよー!」


 そんなことを考えていたら、陽葵がキッチンから夕食を持ってくる。

 朝に引き続き、豆腐の味噌汁が出ていた。

 ……ご飯のメニューだけは積み重ならなくてもいいかもと思ってしまった。




※※※



 

ブォォオオオオ



 お風呂上がりの陽葵の髪をドライヤーで乾かしていく。

 陽葵の後ろから髪をブローしていると、陽葵は気持ちよさそうに目をつむっていた。


「春斗くんに頭乾かしてもらうの気持ちー」

「はいはい、こんなんでいいならいつでもやりますよお姫様」


 陽葵の髪を櫛でとかしていく。


「今日は色々あったね」

「陽葵が何故か怒って、陽葵がゴキブリにおびえて、陽枚が佳乃さんの部屋見てまた怒ってた」

「あんまり怒った、怒った言わないでよぉ……」


 陽葵の髪を櫛が通過していく度に、陽葵の表情が気持ちよさそうにゆるむ。


「お、怒っちゃうのはそれだけ春斗くんへの愛が強いということで……」

「……それ自分で言ってて恥ずかしくならない?」

「……なる」


 陽葵が耳まで真っ赤にしていた。


「春斗くんはこんな私のこと嫌にならないの?」

「んー、陽葵が心配性なのは昔から知ってるし」


 別に今更、そんなことで嫌いになったりするわけないのになぁと思う。

 そんな小さいことで嫌いになるような年月を一緒に過ごしてきたわけではないからだ。


「あっ」

「ん? どうしたの春斗くん?」

「俺と陽葵って出会ってからどれくらいになる?」

「出会ってから? 私が生まれたときから一緒だったらしいから、17年間じゃない?」

「長いなぁ……」


 俺が19歳で陽葵が17歳。

 陽葵が生まれてから17年間、ずっと一緒だった。

 年齢から考えると、これ以上のない年月の付き合いだった。


「急にどうしたの?」

「いや、俺にとってはきっと陽葵が一番なんだろうなぁと思って」 


 そう考えると感慨深いものがあった。


 くるっと陽葵が俺の方に体ごと振り返る。


「……正面からだと髪乾かしずらいんだけど」

「正面向きたくなったんだもん」


 陽葵がそう言うと、俺の背中に手を回して抱き着いてきた。


「これからもずっと一緒だよね?」

「ずっと一緒だろうなぁ」

「じゃあ、私がもっと成長するまで待っててくれる?」

「成長?」

「あんまり怒らないように頑張る」

「今日の陽葵は怒りん坊だったもんなぁ」


 俺がそう言うとぎゅーーっと鯖折にされそうなくらい力いっぱい締め付けられる。

 ……全然痛くはなくて、陽葵の柔らかいところが当たって気持ちが良かった。


「私、いい女になれるように頑張るから捨てないでね」

「捨てないよ、俺もいい男になれるように頑張るから」

「うん、春斗くんが自分に納得できるまでずっと待ってるから」


 陽葵がニコニコと嬉しそうに笑っていた。

 幼馴染の恋人として、交わした言葉以上の繋がりを陽葵と感じることができた。

 

「……と、ところで見る?」

「見るってなにを?」

「だから、佳乃さんの部屋で言ってたごにょごにょ」

「あー……」


 陽葵が、自分から言っといてすごく恥ずかしそうにしている。


「見ていいの?」

「うん……」


 陽葵がプツっとパジャマの一番上のボタンを外す。

 上から見ると、少しだけはだけたパジャマのすき間から陽葵の白い胸元が見えた。

 ブラの肩ひもと白いブラが少しだけ顔をのぞかせた。


「は、はずかしい……」

「……寝る前ってブラつけるものなの?」

「そ、それは春斗くん見たいかなと思って……」


 や、やばい、やばいぞこれは! 

 我慢できなくなりそう……。


「ま、まだまだ成長すると思うから……佳乃さんみたいにはなれないと思うけど」

「えっ!? 成長するまで待っててってそっちの話!?」

「ぜ、全然違ぅうううう!!!」


 俺がそう言うと、陽葵にボコスカボコスカ殴られた。


 思わず茶化してしまった……俺も早く成長しないといけないとなぁとつくづく思った。

 ――これからの陽葵の成長も楽しみだなぁと思った、色んな意味で。




第三章 「待ってあげなよ陽葵ちゃん」 完

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