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第29話 「いらないのは全部捨てます!!」

「キャーーーーー!!」


 省吾くんたちとそのまま草むしりをしていたら、陽葵の大きな悲鳴が聞こえてきた。


陽葵ひまりっ!!」


 何ごとかと、ダッシュでシェアハウスの2階にいる陽葵のもとに向かう。

 バタバタと向かった先には、佳乃さんの部屋の前で立ち尽くす陽葵がいた。


「どうした陽葵!?」

「ご、ごごごごきが」


 陽葵の足元を見ると、佳乃さんの部屋からゴキブリがカサカサと廊下に出てきていた。

 陽葵は、虫系は基本的にに平気なはずなのだが、昔からゴキブリだけはどうしても苦手だった。


 カサカサカサカサ


 二階の廊下をゴキちゃんが我が物顔で突き進む。


 ……正直、俺も苦手なんだよなぁ。

 あの黒光りするボディと長い触覚がどうも生理的に受け付けない。


 ——だが、彼女の前でそんなことは言ってられない!!

 陽葵の平穏を守るために、ゴキちゃんを成敗することにする!

 近くにあった雑誌をくるくると丸める。


「くらえっ! 正義之鉄槌トールハンマー!」


 バシッ!!


 カサカサカサカサ


 ミス! ゴキちゃんは春斗の攻撃をかわした!

 ゴキちゃんの素早いステップが春斗を翻弄する!


「今度こそっ!」


 バシッ!!


 カサカサカサカサ


 ミス! ゴキちゃんに0のダメージ!


「おーい、春斗何の騒ぎだー?」


 省吾くんと雅文さんが、陽葵の悲鳴を聞いて二階に上がってきた。


 ブゥウウウウウン


 ゴキちゃんのそらをとぶ!


「あっ」


 ピトっとゴキちゃんが省吾くんの唇の当たりに張り付いた。


「うわぁああああああああ!!」


 省吾くんにかいしんのいちげき!!

 省吾くんは死んでしまった!!


「おーい、なに騒いでるんだー?」


 ゴキ部屋のあるじの佳乃さんが部屋から出てくる。


 じたばたする省吾くん。

 ゴキブリを追い払おうとする雅文さん。

 廊下の端っこで縮こまってる陽葵。


「なにやってんだあいつらー? ヒマリ早く私の部屋に入れよ」


 ゴキブリと死闘をくり広げてる俺たちを無視して佳乃さんが陽葵に声をかける。


「い、いいいらないのは!」


 陽葵がわなわなと声を出す。


「いらないのは全部捨てます!! これから佳乃さんのお部屋の片付けやります!!」


 陽葵が今日一番の大きな声を出していた。




※※※



 

「だから言ったんですよ! 陽葵を連れてかないでって!」

「そんな言うほど汚いかー?」


 袋にゴミを突っ込みながら、佳乃さんに今の状況をぼやく。


「言うほど汚い」

「……なんで俺たちまで」


 省吾くんと雅文さんも一緒に部屋の片づけの巻き添えをくらっていた。


「うぇえええ、さっきのゴキブリの感触が気持ち悪い」


 省吾くんが口を拭いながら、ゴミを袋に突っ込む。

 口まわりにゴキブリが張り付いたものだからそのダメージも相当なものなのだろう。


「うぅ……やだなぁ。ゴキブリって一匹いれば他にもいっぱいいるって言うし」


 陽葵の手の動きも大分重い。

 とりあえず、ゴミをまとめているだけなのだがそれもすごい量になりそうだった。


「なんだー、みんな気にしすぎだぞ」

「佳乃さんはもっと気にしてください!」


 陽葵が佳乃さん声を上げる。

 陽葵から佳乃さんへの遠慮が大分消えていた。


「陽葵に見てもらいたいやつあったんだけどなぁ」

「見てもらいたいやつ?」


 佳乃さんがそんなことを言うので、思わず反応してしまった。


「ダメだぞー、ハルトにはまだ見せないぞー」

「……そうですか」


 なんのことかさっぱり分からず、そんな反応することしかできなかった。


「ちょっと待っててね春斗くん」


 陽葵も陽葵でよく分からないことを言っていた。


「……あねごー、これはどうするんで?」

「あとで着るー」


 雅文さんが汚物をつまむかのように、ある布切れをピロっと出す。

 ……黒のパンツだった。

 なんでだろ、全然心が動かない。

 こんなの中々見ることもできないのに、何故だか全然嬉しくない。


「あねごこっちはー?」

「あとで着る―」


 省吾くんも汚物をつまむかのようにして、大きめの黒のブラジャーを出す。

 ……やっぱり全然嬉しくない。

 本来なら輝かしい伝説の武具も、やっぱりこの汚部屋にいるとただの汚い布切れに見えてしまう。


「春斗くんは見ちゃダメ!!」


 ゴキっ! と、陽葵に無理矢理首をまわさせられる。


「痛いっ!」

「あっち見ちゃダメ!!」

「見てない! 視界に入っただけ!」

「ダメなものはダメ!!」

「分かった! 分かった! 陽葵のほうしか見ないから!」


 仕方がないので、陽葵と向かいあうようにして作業を進める。


「そんなに下着見たいなら、あとで私のいくらでも見せてあげるから!!」

「えっ!? いいの!?」


「そこのバカップル、そういう話は二人きりのときにしてくれる?」


 省吾くんが青筋を立てて、俺を睨みつけていた。


「わわっ、ごめんなさい!」


 陽葵が顔を真っ赤にする。


「なぁ、陽葵ちゃんって案外嫉妬深い?」


 省吾くんが陽葵にそんなことを質問していた。


「う、うーん、そうなんですかね? 私、春斗くんが初めての彼氏で春斗くんしか好きになったときないので、そういうの分からなくて」

「ムカつくほど惚気ノロケるのね……」


 はぁ、と省吾くんが大きなため息をつく。


「大体、俺たちにとってはこんなのただのきったねー布キレだからな! こんなの見てどうやって興奮するんだっつーの! それにこの部屋見てみろよ! 野生のゴリラだって自分の寝床くらいまだ綺麗にするっつーの!」

「省吾!! ストップ! ストップ!」


 勢い余って言葉をまくし立てる省吾くんに雅文さんが急いで声をかける。


「誰がゴリラでなんだって?」


 佳乃さんがぽきぽきと指を鳴らしていた。


 本日、二度目の省吾くんの死が確認された。

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