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避難 2

この災厄のスタートは、やはり今日の8時半。


神倉町全域で突如、化け物が出現した。

どの化け物も見たことのない空想上の生き物で、妖怪のようなものや恐竜のようなものまであって、

動物の顔つきに二足歩行もいるし、植物が巨大化しているとも報告が上がっているそうだった。


すぐに神倉町は自衛隊派遣を要請、近隣の警察・消防・救急隊への応援を願い出た。

要請を受けた政府が近くの自衛隊を神倉町に向かわせると、様々な異常事態に混乱を極めた。


まず、化け物の強さ。

銃火器等の武器は通じたのが幸いしたが、異常事態に混乱している自衛隊員は次々とやられてしまった。

今のところは殉職者5名・多数のけが人が出ているが、町の外へ出たりはせず、この神倉町内に見かけた化け物は掃討できたらしい。


次に、化け物にやられた遺体。

化け物にやられた自衛隊員・一般人は、亡くなって数分程度で空気に溶けて消えてしまったそうだ。

しかし、建物の崩落や化け物に直接攻撃を受けずに亡くなった人はしっかり遺体が残っているらしい。


そして、倒した化け物が消えた後にドロップする石。

自衛隊員が回収した石の半数はもう残っていないが、その分だけ謎の超能力を得た自衛隊員が続出したそうだ。

これを受けて、急遽対策チームが政府より神倉町に派遣された。その責任者が峰本さんだったのだ。




「今のところはこの位です。先程到着したばかりで、まだそのスキルに関しては詳細を聞いておりませんので、神村さんがいてくださると非常に助かります。」


「わかりました。」


「ご家族の方々は、ここをご使用ください。炊き出しやご友人にお会いする際は係員が同行するように手配いたしますので。」


峰本さんに言われて部屋を見回すと、8帖程度のスペースにソファやパーテーション等が置かれた応接室で足元にはカーペットが敷かれている。

普通に避難するよりも扱いが良いほうなのは見てわかる通りだった。


「ありがとうございます。」


「では早速なんですが、この後すぐに会議がありまして。神村さんにも同席をしてもらいたいのですが。」


「わかりました。」


では、と一度応接室から出ていく峰本さん。すぐに紫苑は私たちに向き直る。


「お袋、ゆかりたちを頼む。」


「大丈夫なの?」


「まぁ、どちらにしろ同じような結果になってたと思うよ。その辺、いい様にできただけいいさ。」


紫苑がソファから立ち上がると応接室のドアがノックされて、先程差し入れをしてくれた女性が現れた。


「失礼します。神村さん、会議室へご案内いたします。」


「よろしくお願いします。」


「ご家族の方はここでお待ちくださいね。ここにあるものはご自由にお使いください。」


そういうと二人は出て行ってしまった。


「さて、私達はどうしましょうか。」


お義母さんのため息を聞いて、私はそうですね、っと応接室を見回した。


「ある程度のお掃除と、寝るところでも作りますか。」


ソファから私が立ち上がると、そうねとお義母さんも立ち上がる。

応接室の窓を開けると、外の風が吹いた。こんな状況なので、何だか少し肌寒く感じてしまった。




「失礼します。」


先程の案内をしてくれた係員の女性が入ってきた。


「皆さんに随行します、森脇と申します。何かありましたら事務所におりますので、お声がけしてください。」


森脇さんは笑みを浮かべて一礼した。


「よろしくお願いします。私は神村玲子と申します。嫁のゆかり、孫の藍里です。」


お義母さんが深々とお辞儀をして森脇さんに挨拶する。


「こちらこそ、よろしくお願いします。早速ですが、簡易ベッドを運び込みたいのですがよろしいですか?」


森脇さんの指示で数名の自衛隊員が、災害時に使用する段ボール製の簡易ベッドを人数分運んでくれた。てきぱきと組み立てていくのを私がお手伝いしながら、森脇さんへ話しかける。


「私ができることで何かありますか?」


「ありがとうございます。今はボランティアの受付はしておりませんので。この状況ですから、ゆかりさん達も少し、お休みになられたほうが良いかと思います。」


簡易ベッドを組み立てた後、すぐ去っていった自衛隊員を見送って、森脇さんと話を続ける。


「お気遣いありがとうございます。」


「いいえ。こちらこそ、ご無理をさせてしまい申し訳ないです。ああ、そうだ。もうすぐお昼の炊き出しが始まるそうなので、取りに行く際にはお声がけください。」


森脇さんは一礼すると、応接室から出て行った。


「炊き出し、か。電気とかのライフラインは動いてるそうですし、何か温かいものが食べたいですね。」


そう言いながら振り返ると、お義母さんが設置された簡易ベッドの位置を調整しているので私の言葉は聞こえていなかったようだ。小さく肩をすくめると、私もそれを手伝うために近づいた。


「パーテーションが3つありますから、これをこっちに。」


とそのままの勢いで私達は簡易ベッド搬入で止まっていた応接室の改造を始めた。


出入口と窓が1つ、窓の下には飾り棚があり、数冊の雑誌や参考書のような分厚い本が詰まっている。

中央に置かれたソファが三つ。横長のソファと一人用のソファが2つ。

ソファを中央より少しずらし、奥に簡易ベッドを並べる。

紫苑とお義母さんのベッド付近にパーテーションを出入口から見えないように設置。

私と藍里のベッドを横にも同様に設置。

ソファと椅子を窓側とは逆に移動し、飾り棚付近に荷物をまとめて置いた。


「うん、こんなものかしらねぇ。」


お義母さんも納得の改造が終わった辺りで、応接室に近づく足音と共にドアが開いた。先程の会議から戻ってきた紫苑と峰本さんだ。


「お疲れ様。」


「ああ。」


と紫苑に一言で返され、峰本さんと二言三言話して、峰本さんは私たちに一礼した後出て行った。


「で、どうだったの?」


早速会議の内容を聞き出そうと、ソファに座った紫苑の隣に座る私。


「んー、そうだな。スキルはしばらく他人には話さないように言われたな。」


「やっぱりね。」


それから紫苑が会議で聞いたのと彼なりの分析を語り始める。


スキルに関しては、やはり化け物からドロップしたあの石を所持していた人が、強く何かを願った際に発現することで、自衛隊員や一般人の複数の証言からそう結論付けられた。


スキルの内容も様々だった。

紫苑のような分析や探索といったスキルから、お義母さんのような植物操作や火を生み出す自然の力を用いるスキル。そして、藍里のような使い魔を従えるスキルまで。


今現在確認できるスキル保持者30人弱すべてが、個々に違ったスキルを獲得していた。


「まだ保持者のすべてが見つかったわけじゃないが、この避難所に身を寄せている住民や自衛隊員だけでもう30人弱。他の避難所にも対策チームがスキル保持者がいないか確認して回ってるそうだ。」


「そうなるともっと増えそうだよね。」


と言った辺りでふと湧いてきたある疑問を紫苑に投げかける。


「あのさ、紫苑。」


「ん?」


「避難所に来た時、検疫でスキルがあるか機械をかざしてたじゃん?あれって本当にスキルを見つけるための機械だったの?」


私の言葉にんー、っと思考を巡らせた後、まいっかと肩をすくめた紫苑。


「さっきの会議でも口止めされたけど、家族くらいいいだろう。」


と前置きした後で、紫苑はとんでもないことを言い出した。


「政府はこの事態を事前に知ってた。」

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