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王を討つ100の能力  作者: ねぎいため
1/1

腐った街

買い物袋を持った少女がフラフラと商店街を歩き回る。

親のお手伝いだろう。買い物袋に入った荷物は袋から飛び出し、

少女は幼い脚で袋を支えるのに苦労していた。

案の定少女は右へ左へ前、後ろ。と重い荷物に振り回されていた。

少女は必死に重心を下に置き、安定した姿勢を取った。

だが抱きかかえてる荷物が邪魔で、歩くスピードは蟻のように遅かった。

いや、蟻よりもぎこちなく進んでいた。

「ふぅ~」

買い物袋地面に降ろし、少女は休息をとった。

ほんの短い休息ではあるが、少女はまた懸命に荷物を運ぼうとした。

その時だった。

高く積んだ荷物のせいか、上にある果物がバランスを崩し、坂道をあれよあれよと下っていく。

少女はそれに驚き、落ちた果物を追いかけた。

だが果物は商店街で賑わう人々の足の合間をするりと駆けて行くが、

少女は人々と肩でぶつかりながら果物へと駆けて行った。


坂の勾配も落ち着き、果物がゆっくりと速度を落とすと、

少女はここだと言わんとばかりに足を前へ前へと突き出し、果物に追いついた。


少女は下を転がる果物には目を向けていたが、前を歩いている強靭な肉体をした男たちには

気付かなかった。

少女は男たちの胸に思いっきり飛び込んだ。

男たちは怯みもしなかったが、少女は後ろへ跳ね飛ばされた。


「おいお嬢ちゃん。今ので大切な俺の荷物が、ぐしゃぐしゃになっちっまったんだけど。

どう落とし前付ける気?」

「す、すみません。気づかなかったもんで。」

「おいおい。謝るだったら弁償しろよ弁償。

こんな果物追いかけてないで、さ!!」

そういって足元にあった果物をひょいと持ち上げると、

いともたやすくそれを握りつぶした。

潰した果実の果汁が地面に飛び散る。

この様子を見ていた者たちは居たが、誰も少女を助けようとはしない。

商店街なのにゆく行く人々は、少女たちがいる道の真ん中を避けて歩いていく。

その光景は三角州を流れに沿って綺麗に避けて行く河川のようだった。


「さあ、払ってもらおうか。1万。」

「1万!!。高すぎます……。」

「あぁ!!こちとらぶつかってきたせいで怪我してんだよ!!」

「は、はい…」


少女は財布からお金を渋々抜き取ろうとすると

「貸せっ!!」

いきなり少女の財布を奪った。

「か、返してください。」

「はぁ?こちとら被害者だぞ。」

「大切なお金なんです…。」

「あっそう。」

「じゃあこれやるよ。」

そういうと握りつぶし、ぐちゃぐちゃになった果実を少女にぶつけた。

「きゃっ。」

男達は何も言わずに果実を当てられ尻もちをついた少女から遠ざかっていく。

こんな悪行を観ていても、

男達を裁ける人はこの商店街には誰もいなかった。

誰もが心を押し殺しそのまま流れてゆく。

そのまま何もなかったように平然と商店街の時が過ぎていく

と、思われた。


「ちょっと待ちな!!そこの3人。」


「あぁ?」

「こんな悪を見過ごせるほど、社会に慣れてないんでね俺は。」

「俺らを誰だと分かっていて言ってるんだよなそのセリフ。」

「ああ知っている。腐れ王族団の騎士どもだろ?」

「てめぇ…。二度とその減らず口をたたけないようにしてやる!!!」


「俺の能力!!!鋼鉄化(アイアンマン)


少女に果実をぶつけた男が体を鉄に変える「能力」を使いながら突っ込んでくる。

減らず口をたたいたその青年は手を突っ込んでくる男に構えてこう叫んだ。


「俺の能力№45!!方向転換(Uターン)


そう言うと鉄の塊と化した男はくるりと向きを変え、後ろにいた男二人に強烈なタックルをお見舞いした。

二人は固い鉄の打撃を顔面に食らい、地に倒れた。

二人の血は先に地面に零れていた果汁と混ざった。


「なっ、なにぃ!?」

「二人も倒れたんだ。ここから財布だけ置いて立ち去れ。

無意味な戦闘はお互いの傷を広げるだけだ。」

「だれがそうするか!!」

「もう一度、鋼鉄化(アイアンマン)!!!」


「能力者と分かった以上もう油断はしない。ガチで殺す。」

男はガチガチに身を固め、歩くたびにガチリと音がなるほどに気張った。

青年も、同じく身を低くし、攻撃に備えた。

一瞬の緊張が路上に走る。

その時だった。


「オラァッ!!」

道を拳で砕き、砕いた道の岩を、青年にぶん投げた。


方向転換(Uターン)!!」」

岩を咄嗟に跳ね返すと、跳ね返した岩のその先に男は見当たらなかった。


「左だ!!」

鉄の拳が青年目掛けて飛んでくる。

青年は躱しきれずに拳を腕で防御したが、

完全に防御出来るほどのパワーではなかった。

青年の腕はあり得ない方向に曲がり、そのままわき腹を鉄のひんやりとした感覚と共に、

熱く激しい痛みが襲い掛かってきた。


「グフゥッ!!」


青年は路上端に飛ばされた。

血を

徐に吐き出すと、青年は膝を地面についた。

商店街の人々は、青年が悪を突き破ると、希望を持っていたようだが、そんな甘い考えは青年の血で

翻された。


「くそっ。ハァ…ハァ…。」

「どうした?痛いか?痛いだろうな!!」

「じゃあ、続けてもう一発。死ねぇっ!!」

「それは……、どうかな……。」

「俺の能力№12再現(リプレイ)№24過剰(オーバーリアクション)№36譲渡(プレゼント)!!」


「なぜこいつ!!全く違う能力を4つも!!」


「ぐぐ、なんだ…?奴を殴った位置に傷跡が出来ている!!

そして……。」


「なにッ!!空気の流れや、心臓の動き、血流の流れが手に取るように分かる……。

ブグワァッ!!痛い。痛てぇ…。奴を殴った位置の傷跡から痛みが…、溢れてくるッ!!」


「じっくりとゆっくりとッ!!痛みが!!押し寄せて…来るッ!!

ぐ、ぐ、グワアァァァッァァァァァァァァァッァァァァァッッ!!!!」


「俺が味わった痛みをお返しするぜ。」


男はバタリと地面に横たわった。

気を失ったのだろう。

商店街の人々は一連の行動を確実に見ていた、見ていたが、一切の拍手も歓声も沸き上がりはしなかった。

今を生きる人々にとって、男が気絶したという事実はもう過去の物。

貧しい暮らしをするこの街の人々は、誰かを思える気持ちは時間の無駄なのだ。

こんな暮らしの原因は商店街からも見える、見栄をはった大きな王城の中にある。

皆もそんなことは分かっていた。

だがそんな欲望を砕けるものは今は、誰一人としていない。

あの青年が、腐ったこの街に新しい風を巻き起こすまでは。



~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

能力紹介

№45方向転換(Uターン)


全ての物を反対方向に同じ勢いのまま返す。

跳ね返す物体の速度や力によっては跳ね返せない場合もある。

成長性:1 強さ:3 


№12再現(リプレイ)


自分の全ての行動をもう一度再現できる。

成長性:3 強さ:2


№24過剰(オーバーリアクション)


感覚がとてつもなく鋭くなる。

成長性:1 強さ:1


№36譲渡(プレゼント)


自分の物、能力、痛み、行動、感情、言葉。ほとんどのものが相手に渡せる。

成長性:5 強さ:1


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