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青銅の王  作者: 桜餅 大福
3/6

3:少年と鷹と魔導士

短いですが三話めです。



「目覚めたか」

 そんな声が頭の上から降ってきた。そのため、少年……サクセスは重たい瞼をゆっくりと持ち上げる。

「ぴるるるっっ」

 突然そんな鳴き声が聞こえ、大きな四枚の翼を広げた鳥が、彼を覗き込んでいた。

「うわぁぁぁっ、か、羯羅(から)が鷹に!」

 確かに、最初の声は少年の師である魔導士……羯羅(から)の声であったはずだが、その声のある方には鷹がいたので、思わずそんな声が出る。

「何を寝ぼけている」

 再び羯羅(から)の声が聞こえる。どうやら彼はベッドの頭の部分につかまっている鷹の、さらに向こう側にいるようだ。

「ははっ……間違えちゃっ、あぁっ!」

 愛想笑いの途中で、サクセスは自らの近くにいる鷹が、「あの鷹」なのだと、ようやく受け止めて、部屋中に響くような、大きな驚きの声をもらした。その声には喜びも含まれているに違いない。

 鷹が自分を主人であると認めてくれたという時点で気を失ってしまったので、いまさらながらにその喜びをかみしめているのだ。

「忙しい奴だ……」

 羯羅(から)が表情を変えずにつぶやきながら、ぱちんと指をならす。すると、突然サクセスの頭上からいくつかの衣装が降ってくる。それも、森の中で彼が泥だらけに汚し、いたるところを破いてしまった服が、すべて元通りに……いや、前に身に着けていた時よりもきれいになっていた。

「まずは、風呂へ行って来い」

 羯羅(から)自身が風呂好きであるためか、危険な森を潜り抜けてボロボロになりながらもこの家にたどり着くと、サクセスは必ず風呂に直行させられる。

 いつものことであったのだ。

 そのため、サクセスは散らばった自分の服を拾い上げて風呂へと足を運ぼうとしたのだが、やはり、どうしても 鷹の存在が気になって何度も何度も鷹がいるかどうか確かめながら部屋の出口まで歩いていく。

 鷹の方もじっとその視線でサクセスを負っている。

「……鷹……」

 扉の前で振り返って、未練がましくサクセスがつぶやいたのを聞きとめ、彼は一度だけ息を吐き出すと、ゆっくりと言った。

「そこまで気になるのなら、一緒に連れて行け。お前が命じれば動くだろう」

 つまり、鷹は今、じっとサクセスの命令を待っているのだという。

「来い!」

 にこやかに……十五歳という実年齢よりも幼く見える笑顔を見せて、彼は右腕を鷹に向けて差し出した。気を失う前、鷹の大きさに耐えられなかったはずであるのに。

 鷹はそんな彼の言葉を……「命令」を受けて、一度ためるように体を沈めてから、伸び上がるようにして空中へと飛び上がった。四枚の翼で大きく羽ばたき、先ほどまでサクセスが横たわっていた寝台に何枚かの羽根を舞い散らせながら、大きく緩やかな弧を描いて鷹はサクセスのもとへと舞い降りた。

「うっ」

 鷹がサクセスのもとに舞い降りた瞬間に、彼はそんな声を発した。……うめきと、何が起きたのかわからず一瞬戸惑うという二つの意味の声であった。

「お前よりも、そいつのほうが賢いな」

 あまり抑揚のない声で、羯羅(から)はそんな冷たいことを言うが、今のサクセスの状況を見れば仕方のないことかもしれない。

 鷹は彼が差し出した腕を無視し、彼の両肩に足を置いて、まるで肩車のような格好で彼の上に留まったののだから。

「大きさと重たさを考えれば、その乗り方しかあるまい」

 鷹にバカにされたのかと思ってがっかりとしているサクセスに対して、羯羅(から)が言う。

「そうですよね……」

 力なく頷き、風呂へ行くために部屋を出ていくサクセスであった。


 その後。サクセスの血を用いた儀式によって、四枚の翼をもつ魔の森の鷹は、彼の使い魔となり、彼の臨んだ白銀色にその翼を色を変えた。こうして、サクセスは一生をともにする使い魔を手に入れたのであった。


<青銅の王 3>





四話目に続きます。

ちょっと眺めなので、四話目は二つに分かれる予定です。

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