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そうしてお姫様は、

硝子の靴は足に痛いの。

作者: 東亭和子

 差し出された硝子の靴を見つめる。

 それは透明でとても美しい靴。

 触れるとヒヤリとして冷たい。

 まるで氷のようだと思った。

「さぁ、その靴を履いてお行きなさい。

 でも12時までには帰って来ないとダメよ。

 魔法が解けてしまうからね!」

 魔女の言葉に私は頷く。

「素晴らしい舞踏会よ。

 思いっきり楽しんできなさい」

 私は頷くと硝子の靴を履いて家を出た。


 初めて履くヒールの高い靴。

 そして硬い靴はとても苦痛だった。

 私は上手く歩くことが出来ない。

 これじゃあ、ダンスも踊れやしないわ!

 人形のように固まって壁にもたれると私はため息をついた。

 ホールの中央では華美なドレスに身を纏った婦人達がダンスを踊っている。

 とても美しく夢のような光景にまたため息がもれた。


「お疲れですか?」

 声をかけられて見ると、にっこりと微笑んだ青年が立っていた。

「ダンスはもう踊りましたか?」

「いいえ。まだなんです」

「それでは一緒に踊っていただけますか?」

 嬉しい誘いだが、こんな靴では踊れない。

 断ってしまおうか?

 でもせっかくだから楽しみたい!

「はい!よろしくお願いします!」

 そう言うと青年はとても嬉しそうに笑った。

 差し出された手を掴み、歩き出す。

 その時に硝子の靴をそっと脱いだ。

 ダンスを楽しむには邪魔だからだ。

 そんな私を見て青年は驚いた顔をした。


「あの靴、合わなくてとても痛いんです。

 でも貴方とダンスを踊りたくて…」

 そう言うと青年は楽しそうに笑った。

「では、急いで貴女に合う靴を用意しましょう」

 青年はボーイを呼ぶと何かを告げた。

 ボーイはすぐにヒールの低い、柔らかい皮の靴を持ってきた。

「さぁ、これで思う存分に踊れますよ」

「ありがとうございます!」

 私は青年と手を繋ぐとホールの中央へと踊り出た。

 そうして初めての舞踏会を思う存分に楽しんだのだった。


魔法が解けても思い出は残る。

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