婚約者との接触
お待たせしました! ムダに長い一発書きです。
とりあえずちょっと仲良くなったよってことだけ把握していただければなぁと思います。
その後とりあえず昼食を、ということで両家共に食事をした、のだが・・・・・・。
「・・・・・・・・・・・・」
「あー・・・えっと、アイリスちゃんは何か好きな物、とかあるの?」
「そ、そうですね・・・甘いものが好きですよ」
「甘いやつか! やっぱ女の子だなー! コイツ子供のくせにそういうの苦手らしくてさー!」
バシィッ!
ロータス様が隣のハイドランジア様の肩を叩こうとたのだが、ハイドランジア様は顔すら向けずにその手を遠慮なく払いのけた。
・・・・・・うわぁ、貴族の癖に自分の父親の手を払いのけるとかありえんぞ・・・。
・・・・・・・・食堂を微妙な空気が包み込む・・・・・。
実は食事始まってからずっとハイドランシア様があまりにも、その・・・アレで? 食堂内の空気はどんどん良くなるどころか悪化し続けている・・・私もう泣きそうだよ? いっそ泣いていい? だめ??
「おい!! ハイドランシア、お前・・・・・!」
「あーーーっと!!! そうだ、子供はこんな場所じゃつまんないよな!!
よしっ、アイリス! お前コイツ連れてどっか遊びに行ってやってくれ!!」
「ふぁっ!? えっ、ちょっ、お父様!?」
「さぁさぁあとはお若いお二人でッ!!!」
お父様にポイッと強引に外に放り出されてしまった。
・・・いや、うん。分かるよ? 多分お父様が割り込まなかったらロータス様によるハイパー説教タイムになってたってことくらい。だけど!! だけどさ!!!
こいつと二人っきりはないでしょぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!???
完全に厄介払いじゃんこれ!!? もうやだ帰りたいよぉぉぉぉ!! 私の家ここだけどさぁぁぁぁぁ!!!
「チッ」
うっわ舌打ちした! 今舌打ちしたよこの人!!
もう本当にどうしたらいいのコレ。すべて放り出して部屋に帰っていいですか??
やっぱ駄目ですか? じゃあとりあえず何か話題振ってみる? でも私コイツと盛り上がれそうな話題なんて持ってないよ? 定番の天気の話でも振ってみる?
「あー、その、ハイドラ「気安く俺の名を呼ぶな」あぁはいすいません・・・・・・」
なんてこった会話にすら入れないとは思わなかったわ。
っていうかハイドランジアとか本当長いわ、これからはハイドって呼ぼう。
もっとも、名前口に出すの禁止されたから心の中でだけだけど! 口に出すなら”お前”でいい・・・いや、これでも貴族だから”貴方”が精々か? 貴族って面倒くせぇぇぇーーーッ!!
・・・・・・それにしても今日は空が綺麗だなぁ。見渡す限りのブルースカイ。そこに白い鳥も何羽か飛んでるし本当最高だな。文句のつけようもない100点満点の青空だ。
「チッ、まったく最悪だな。なんで俺がこんな伯爵家なんかに・・・・・」
鮮やかに現実逃避を決め込みだした私に彼の独り言が耳に入る。もう本当勘弁してくれよな~、頼むよ~
必死に零れ落ちそうな涙をこらえて空を見上げる私を誰か褒めてくれませんか?
ってあれ? コイツ、ウチと結婚するの嫌なのか・・・ならお互いに、それなりに話せそうな話題は出来たね。
本来なら子供同士とはいえ貴族的に丁寧極まりない言葉を使うのが正しいのでしょうが、こやつにはもはやストレスしか感じていないのでそんな言葉は使ってやらない。
まぁ最後の慈悲で”ですます言葉”は使ってやるからありがたいと思ってほしいものですねぇ!!
「へーぇ? 貴方はウチなんかと結婚するのは嫌なんですね?」
「はぁ? 当たり前だろ?」
いや当たり前か?
公爵家が求める条件や、結婚についての問題諸々を考えれば割と好物件だと思うけどなぁ。
これはこれは・・・コイツ相当プライド高いってことなんだろうなぁ。自分と同じ公爵家ならギリギリ可、求めるなら公爵よりも上の立場の人間ってタイプだろう。いやいや、そんなんもう王族しかないぞ?
・・・・・・・・ん、王族? あー・・・なるほど。そっかそっか、もしかしてそういうこと?
まぁとりあえず私の結婚問題について聞きますかね。
「なぜこんな早い段階で伯爵家が公爵家と婚約したのか。
それは私も気になってるんですよ。婚姻について何か御父上から聞かされていないのですか?」
いくら相手が公爵とはいえ、ウチはあくまでも伯爵だぞ?
ここで婚約決めるのはいくらなんでもちょっと早計だと思うんだよなぁ・・・・・この先、まだまだもーっと当家にとって利益を生んでくれる家が現れる可能性だってあったはずなのに。コイツの家はその可能性を切り捨ててまで結婚したいと思うほど有力な家ってわけでもないと思うんだよな。もっとも、あの噂が本当なら王家との関係が多少なりとも築けそうだとは思うが・・・それでもハイリスクじゃない? まだ真偽不明の上に今後どうなるかもわからないレベルの話だよ?
ハイドは私が悶々と考えていられるほど長い時間沈黙していたが、やがて嫌そうにしながらも答えてくれた。
「特に何も・・・・・・あの人は兄上のことで忙しい」
ふーん。兄上のことで忙しい、ねぇ・・・。
これはあの噂のせいと捉えていいかな。真実がどうあれサティウス家は対応に追われているってとこだろう。・・・くっそ、コイツまったく欲しい情報落としてくれなかったな!!
こうなるともう今ある情報で適当に推察するしかないんだけど・・・・・・・・・・これはまさかアレか?
よくある『俺の子供が男で、お前の子供が女なら結婚させようぜ』ってやつ。最初に出会ったときに”随分長い事待った”とか”まさか本当になるとは思わなかった”とか言ってたし、多分大体あってるのだろう。
・・・もっとも、幾ら仲がいいとはいえ、本気でこんなことするなんて思えないんだけど・・・・・いや、あの二人なら確かに本気でやりそうではあるか・・・そんなんで家の将来大丈夫なんだろうか?
それと今更ながらちょっと気になった事がある。
ハイド、さっきお兄さんのことを口に出すのを露骨に嫌がってたような・・・。
お兄さんのことが嫌い? いや、あの顔はそんな一言だけで片付けられるような感情じゃないだろう。
単純に嫌ってるだけじゃなくて、劣等感なり悔しさなりを感じてるとか・・・それなら今までの行動も割とすんなり納得できるんだよ。
兄は国の姫様と結婚秒読みで、自分は格下の伯爵家の人間との婚約発表。プライドが相当高いコイツなら発狂ものでしょうね。だからストレスとか諸々で八つ当たりしてた、って感じに捉えることが出来る。
・・・・・・もっとも、ただ単純にコイツの反抗期ってこともあるけど・・・まぁそれならそれで時間が解決してくれるはず。なんにせよ今のコイツは放っておくのが一番ってことだな。
「ありがとうございました、とても参考になりましたわ」
「今のでか?」
「十分ですよ、お父様たちがした約束の推理ですし」
「父上たちの約束? まさか本当にそれだけだったのか?」
「そうですよ? 実は結構気になってたもので」
私の言葉にハイドは目を大きく見開き、口を開けたまま呆然としている。
んー? なんでそんなに驚いてる?
私が不思議に思っていると、彼はなぜか緊張でもしてるのか若干震えた声で訊ねてきた。
「・・・・・・・・・・聞かないのか?」
「なにがです?」
「・・・・・兄と、姫様について」
あぁそれか。
・・・・・なるほど? コイツさては今まで散々いろんな人に聞かれてたな?
兄について躊躇ったのは、散々聞かれ過ぎて答えるのが嫌になってたってことだったのかな。
・・・とすると、私の推理外れてたのか。ちょっと残念・・・でもそれなら何でわざわざそっちから聞いてきた? 黙ってればいいのに。
「まさか聞いてほしかったんですか? 本当面倒くさいお方ですねー」
「なっ、なんだと!!? 貴様ッ!!!」
おっと、つい本心が出てしまった。
だがいいやもうこの際だ、悪いがこのままちょっと怒らせてもらいましょうかね。
私は今まで抑えていた怒りを前面に出し、キッと睨みつけながら捲し立てることにした。
「おっと失礼、訂正しますね・・・・・そろそろいい加減にしろよクソガキが。
お前今までの行動で自分が何したのか理解ってないとか言わないよな?」
「ッ!!?」
「出会ってから今に至るまで一体何度暴言を吐いた? 何度ありえない態度を取った?
挙句さっきは他者の前で親に恥かかせて”サティウス公爵家”の品位を下げるわ・・・・・一体何様だ?」
「それは・・・・・・ッ!」
ハイドは明らかにばつが悪そうに眼をそらした。
すまんな、私は前から怒ると口調が荒くなるタイプなんだ。今だけだから許して下さい。
さて、私はここまで言ってからパッと元の表情に戻り、呆れた顔になりながら続けていく。
「まっ、そんな行動取ってた理由は大体見当ついてるからこれ以上は強く怒れないけどね・・・・・貴方、お兄さんと上手くいってないんでしょ? それで私たちに八つ当たりしてた。違う?」
「・・・・・・・・・・・・・・ッ!!」
彼は悔しそうに歯ぎしりをして、さらに視線だけで人を泣かせそうな目で私を睨みつけてきた。
定番の『お前に何が分かるんだ』ってヤツだろう。
ハッ、くだらんな。知るかそんなもん。
それならこっちだって私が思う最高に高圧的な態度で対抗してやろう。足を組み、ハイドに向かって指を突き付けながら話を続ける。
「お兄さんはお兄さんで、貴方は貴方だろう? なんでそんなに怒る必要がある?
人には誰しも”コイツには絶対に勝てない”って相手がいるもので、貴方の場合はそれがお兄さんだったってだけの話だろ?」
「・・・・・・・・・・」
「そういう時はさっさと諦めちゃえば楽なんだよ。
でもね、絶対に勝てないかもしれないと分かりながらも、それでも必死に努力して追いつき追い越そうとする・・・・・そういう姿勢の人間は、最初から勝ってるような奴よりもよっぽど魅力的に見えるものなんだ」
「そういう意味では、私はお兄さんなんかよりも貴方の方が素敵だと思うね」
ニヤッと笑いながら語った言葉に、ハイドは唖然として固まった。
なお、あくまでもコイツが良いと思うのは”お兄さんに勝とうと努力している点”であり、言動性格面ではお兄様の方が圧倒的に好きであるという点だけ補足しておく。
本当はコイツが努力しているのかなんて知らないが、プライド高いコイツなら十中八九やっているだろう。
しばらく驚き固まっていたハイドだったが、やがて私の言葉を理解したのか、
「・・・・・・・・・・・・そう、か」
と呟き、嬉しそうに、でもどこか照れくさそうに微笑んだ。
・・・・・なんだ、案外可愛いところもあるんじゃないか。私も彼に返すように微笑み話す。
「ねぇ、もう少し話してみない? もっと色々聞かせてよ、貴方の話」
「は? なんで俺が」
「貴方が話さないなら、私が延々好き勝手に適当な話を語りましてよ?」
「はぁ?」
「まず最初は有名な話からいこうか? これはある夜、祖父に魚を届けに向かった少女の話・・・・・」
「ちょっと待て! お前まさか、本当に語り続ける気なのか!?」
島巡りは一応終わりました。今後は2~3日に一回くらいの更新ペースでいけらたいいなぁ。
それと今回からタグに『恋愛』を追加しました。実はあと2回くらいでプロローグが終わるのですが、それが終わってからはコイツがよく絡むようになると・・・お、思うんだ・・・・・。