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いつか夢見た泡沫世界  作者: ユウキ
学園生活編
10/11

学校探検しましょう!

更新は5日に一回くらいのペースになるかもしれない・・・。

「はぁ~、デカイ学校ですねぇ・・・」


 私は学園の門の前に立って、呆然と呟いた。


 国立プラント学園。

この国唯一の学校にして、世界最大の教育機関。

この学校に長期休暇なんて存在せず、実家との手紙などのやり取りも”甘えてしまうから”と、ある程度制限される鬼のような学校だ。そのせいか、ここの学園を卒業した者は世界のどこへ行っても優遇されるという。

 ちなみに”長期休暇”がないだけで、休暇自体はちゃんと存在している。

この学校は、自分が受けたい授業を選択して勉強するという形式なんだって。だから休みの日も皆バラバラだけどしっかり取れるのだ。もっとも頭の悪い子は、人一倍たくさんの授業受けなきゃいけないから全然休めないそうだけど・・・。



 さて、ここに来た学生たちは数年間ずっと校内にある寮で生活することになる。

男女別に建てられた学生寮は、それぞれ校内の両端に建てられている。男子寮が西側、女子寮が東側だ。

ちなみに男子寮と女子寮の距離は大体5kmほど離れているらしいよ。近いのか遠いのか微妙な距離だ。

 校内には学舎や寮の他にも立派な修練場があったり、研究所があったり、大きな病院があったり・・・それ以外にも色々、本当になんでもあるらしい。流石は世界最大規模の学校だなぁ。




「よし、まずは持ってきた荷物を寮に運ぶとしよっか!」


 これからの学園生活に思いをはせつつも私は荷物を抱えて寮へと向かう。

寮は大きな洋館だった。いい感じにツタが館全体を覆っていて時代を感じる。


 さっそく私はノックをして館内へ入り、そこで新入生を待っていたという寮母さんに挨拶をして、鍵を受け取り様々な説明を受ける。寮母さんは朗らかで恰幅のいいおば様だった。

 用意された部屋は二人一部屋なのだが、どうやら私のルームメイトはまだ来ていないらしい。

とりあえず適当に荷物を置いてあたりを物色させてもらおう。

 この部屋は全体的にシックな感じで纏まっている。ベッドの他にはデスクとチェスト、ランプなどが置かれている。なんだか高級ホテルのような印象を受ける部屋だ。それと白いカーテンが揺らめく窓からは奇麗に手入れされた庭が見える。あそこでご飯食べたら、それは素敵だろうなぁ。


 ・・・・・・んー、部屋はこのくらいか? 流石にまだほとんど何もないからすぐ終わっちゃったな。

学校が始まるのは明日からだから、今日は荷物さえ置けばもう自由なのだけど・・・。



「ここで大人しく部屋に篭るなんてありえないよね!」



 早速学校探検だ! ・・・・・って、そうだ。制服に着替えた方が良いかな?

実はこの学校にも制服があって、ネクタイ・リボンの色で学年が分かるのだ。制服のデザインは、前の世界でいうブレザータイプってやつだよ。今のこの世界じゃ何も変ではないのに、なんだかコスプレしてる気分になると私の中では評判だ。


「んー・・・いいや、このままで行こう」


 絶対私の他にも探検してる子はいるだろうし、まだ学生じゃないのに制服を着るのは変かもしれない。

別に今すっごい豪華なドレス着てるなんてわけじゃないし、別にこのままでいいよね。

というか正直着替えるのが面倒くさい! そんなわけで、私は部屋を飛び出したのだった。









 さて、最初はどこに行ってみるか。

寮母さんに探検してくると話すと、やはり大体の子が行っていると教えてくれて、さらに「貴方も探検にいくならどうぞ」と学園内の地図を貰った。


 そんな寮母さんお手製の地図を見ながら考える。

いやぁ敷地広すぎだし、本当になんでもあるんだなぁ・・・これはどこから行けばいいのか迷っちゃうな。

流石に一日で全部は回り切れないだろうし、とりあえず今日は適当にブラブラ敷地内をぐるっと歩き回ってみようか。

 色んな建物を遠目に眺めつつしばらく歩き続けていると、正面に一際大きな建物が現れた。

そこからは金属どうしがぶつかり合うような音や、何かが爆ぜるような爆発音、誰かの怒号が響いてくる。

 えっとここは・・・・・あぁ、修練場か。

ということは中で誰かが戦ってるっぽいね、ちょっと覗いてみようかな。注釈には『修練場はいつでも誰でも見学可能』と書いてあったので、受付にいた人に軽く話して見学させてもらうことにした。



 修練場では黒髪の青年と、金髪の青年が戦っていた。

私の他にもギャラリーは結構な数いるが、二人は特に気にしてない・・・というか、気づかない程集中しているようだ。観客たちは次々に野次を飛ばしながら、どちらが勝つのか賭けながら戦いを眺めている。

分かる、分かるよその気持ち。闘技場では何かと賭けたくなるよなと思いつつ私も適当な場所に陣取った。

 彼らは二人とも剣と魔法の両方を使いこなして戦っている。

両者お互いに一歩も譲らない戦いだ。気が付けば私は彼らから目が離せなくなっていた。二人の戦いに魅了されてしまったらしい。

 やがて黒髪の人が攻撃を外し、そのときに見せた一瞬の隙を突いて金髪さんが勝利する。

ギャラリーからの歓声が鳴りやまない中、金髪さんは黒髪さんを起こしてお互いの健闘を称えあっていた。もちろん私もこの興奮を伝えられるようにと全力で拍手を送る。

 いやー、学生でこの実力とは! 私はちょっと世界を舐めすぎてたかもしれないなぁ。

興奮はまだまだ冷めやらないが、そろそろ別の場所を見に行かないとかな。観客の皆さんが私に注目しはじめてるから・・・うーん、私服で動き回るのは失策だったか?

 他の人の戦いもきになったんだけどなぁ。後ろ髪を引かれつつも、私は修練場を後にしたのだった。




「・・・・・・・アイツ、まさか・・・?」









 さて、今度はどこに行こうかな。

地図を見ながら考える。またブラブラしてもいいんだけど・・・ふむ、天文台が近くにあるのか。

なら次はそこを見に行こう。私は前から星が好きでなぁ!

 ルンルン気分で歩いていくと、ある建物が目に入る。

そこは一見他の研究棟と同じようだが、その建物の上部にだけは大きな半球状のドームがついている。

間違いない、ここが天文台だ!


 扉をノックしても反応がなく、調べてみれば鍵もかかっていないようなので、一応「お邪魔しまーす」と告げてから恐る恐る中へと入ってみる。

 中は薄暗い空間が広がっているだけで誰もいない。地面をよく見れば、かなり埃が積もっていることが確認できた。どうやら長い間掃除がされていないらしい。


「コホッ、コホッ! ・・・うぅ、埃っぽいなぁ」


 顔を顰めつつも、周りをよく見渡してみる。

このフロアは上へと続く螺旋階段がある他に、いくつか扉があるようだ。

扉に近寄ってみれば、扉の上にそれぞれ「教官室」「資料室」「実験室」「仮眠室」と書かれていた。

どの扉も鍵なんてかかっておらず、調べようと思えばどこでも調べられそうだと思った。


 ここをこれ以上調べる価値もなさそうので、メインであろう上の階へと進んで行く。

上の階はやはり天文台になっていた。すごい大きさの望遠鏡が一つ、大事そうに中央に置かれている。

隅の方には研究に使っていたらしい机と、人が寝れそうな大きなソファが2つ置かれていた。どれもかなり埃を被っており、やはり長い間誰も来ていないことが伺える。望遠鏡を詳しく見ると、随分埃で汚れているが掃除すればまだ使えそうだと感じた。



 うーん、天文台は全体的に『掃除すればまだまだ使えそう』っていう評価だなぁ。

しかし、こんなに立派なのに長い間使われてなさそうってのはちょっと残念だ。誰も使ってないなら私に使わせてもらえないかな?

今度先生方に交渉してみようかなぁ、そんなことを考えながら外に出る。すると、


「あぁいたいた! アイリス様ーーーッ!」


 どこからか私を呼ぶ声が聞こえてきた。

辺りを見回すと、こちらに向かって手を振ってくる初老の男性が目に入る。

はて、どちら様でしょう? 多分この学校の先生・・・なのかな? とりあえず話を聞こう。


「はい、何か御用でしょうか?」

「いやぁすみませんね。実は明日の入学式で、主席のアイリス様には答辞を述べていただくことになっているのですよ。その説明をすっかり失念しておりまして、いやはや申し訳ない」


 初老の先生は頬をかきながら申し訳なさそうに微笑んだ。

へぇ? この世界でも祝辞答辞はあるんだ。ちょっと意外だな。


「そうでしたか。大丈夫ですよ、お任せください!」

「流石、頼もしいですなぁ!

明日の式でアイリス様にはこの書面に書かれている言葉を読んでいただきたいのです」

「あら? 自分で考えろというわけではないのですね」

「まさかまさか、明日式なのに考えてこいなんて流石に言いませんよ!」


 先生は私の言葉に本当に面白そうに笑いだした。

この先生は随分と和やかな性格をしていらっしゃるようだ。私、こういうお方は結構好きですよ。

そうだ、この先生にならあの天文台について聞けるかもしれない!


「そうだ先生、実はあの天文台のことなのですが・・・」

「あの天文台ですか? あそはもう誰も使っておりませんで・・・もうすぐ取り壊す予定なのですよ」


 えぇっ、そんなぁ!?

先生によれば、昔ここを管理していたある先生が亡くなって以来、先生方は誰もその後を継ぎたがらず、生徒も天文学自体にはそんなに興味がなかったのか誰も利用しなくなっていったそうだ。

まさか先生目当てだったのか当時の学生たち! それにしてもちょっと冷たくない!?


「そんな、誰も使ってもいいなら使わせてもらいたいと思っていましたのに・・・」

「えぇっ!? まさかアレをですか!?」

「えぇ、あの天文台をです。

・・・実は今しがた少し中を覗いてみたのですが、長い間誰も使っておられないようでしたので・・・・・誰も使ってないなら使わせてもらえないかなぁ、なんて交渉しようかと思っていたのです。ですが取り壊すというなら無理そうですね・・・」

「いえいえ! そんなことありませんよ!!

アイリス様さえよろしければ、さっそく今日の会議に掛けてみましょうか?」


 えっ、いいの?

会議に掛けるって、まさか取り壊し中止してくれるかもってこと?


「それは・・・願ってもない事ですが、よろしいのですか?」

「勿論です! 実は天文台が取り壊される理由は、利用する生徒がいないということ以前に、そもそも管理者がいないことが何よりの問題でしたので・・・アイリス様ほどのお方でしたら管理者としても、利用する生徒としても、どの先生方からも納得していただけるでしょう!」


 先生はとても嬉しそうだ。

おぉ・・・! まさかこんなところで学園から天才だともてはやされているのが活きるとは!

私は嬉々として先生の手を取って懇願する。


「是非! 是非お願いいたしますっ!!」

「お任せください! 必ずや明日には良いご報告が出来ると思いますよ」


 そう言って先生は自信ありげに微笑んだ。

なんかカッコイイぞこの人! 感動していると、先生は会議が始まるからと何処かへ行ってしまった。

 ふむ・・・私も答辞なんてすることになっちゃったし、今日はもう戻ってちょっと練習しようかなぁ。

あんなに自信満々に受けたのに失敗するとか恥ずかしいからね。私はまだ大分早いが探索を切り上げて部屋に戻ることにした。

【プラント学園】

 この世界では最大規模になる教育機関。

鬼のように厳しい制度で有名。ここを耐えて卒業した者は、この国のみならず他の国でも重宝される。

平民と貴族が入り混じる環境なので、学校は平民身分の者に対して様々なサポートを行っている。貴族身分の者に対しても「民あっての生活だ」と差別しないように指導しているそうだ。


 ちなみに全寮制で11年制なので、通うにはとんでもない程の学費がかかる。

貴族は義務だが、教育費を払わなくていいということはなく、平民の者と同じかそれ以上の金を払っている。

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