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異界渡りの英雄  作者: 暁凛太郎
第4章 精霊祭の妖精編
88/214

第85話 聖戦時代の救世主たちについて

「第1話 少年の日常、友人たちの想い」を書き直しました。

大まかな流れは変わっていないので物語に然程影響はありませんが、

よろしければご覧ください。

 



  ◇◆◇




 ティターニア女王陛下とお会いする前に、聖戦について分かっていることを整理しよう。


 聖戦は今から五千年ほど前に起こった、世界を滅ぼそうとする魔王ルシファーとその配下、それに抗う各種族たちによって続けられた、神さえも巻き込んだ世界の命運を分けた戦争。


 その長きに渡る戦争を終わらせたのが、後に【救世主】と呼ばれることになる二十六人の最も偉大な英雄たちだ。


 まずは異世界――つまり地球から召喚された四十人の初代勇者たちの中で最も活躍した十三人で、かの有名な円卓の騎士でもある【円卓の勇者】たち。




 【救世主】たちの中でも【解放者】と呼ばれる面々を率いていた騎士王。【光の勇者】アーサー・ペンドラゴン。


 円卓の騎士の筆頭でありながら最も罪深い騎士である湖の騎士。【湖の勇者】ランスロット。


 最も穢れ無き騎士として名高く、ランスロットの実子とされる最優の騎士。【聖杯の勇者】ガラハッド。


 その名前の由来から悲劇を運命付けられたとも考えられる悲恋の騎士。【悲恋の勇者】トリスタン。


 ランスロットの不倫を告発したことでも有名な堅い手の騎士。【鋼鉄の勇者】アグラヴェイン。


 九日九晩水の中にいても息が続くという超人的な特技を持つ騎士。【流水の勇者】ケイ。


 アーサーやランスロットと同じく聖剣の担い手である忠義の騎士。【太陽の勇者】ガウェイン。


 聖杯探索の関連では最も有名で、投げ槍が得意な谷を駆け抜ける騎士。【疾風の勇者】パーシヴァル。


 実父であるアーサーに反旗を翻した反逆の騎士。【謀叛の勇者】モードレッド。


 聖剣エクスカリバーを湖の貴婦人に返還し、その槍の一突きは他の者の九突きに匹敵する隻腕の騎士。【九突の勇者】ベティヴィエール。


 自分から意思を表明することはなく寡黙な性格だったとされている騎士。【沈黙の勇者】ガヘリス。


 謀略や奸計に加担したことのない清廉潔白な人物で、『美しき手(ボーマン)』とあだ名を付けられた騎士。【美手の勇者】ガレス。


 旅の途中で獅子を助け、以降連れ歩いた獅子の騎士。【獅子連れの勇者】ユーウェイン。




 次に、アストラル出身でありながら地球での英雄たちの力を受け継いだ英雄で、その中でも突出した力を持つ【選定者】と呼ばれた七人。




 シャルルマーニュ十二勇士を代表する人物で聖剣デュランダルの担い手であるローランの力を受け継いだ【聖騎士】ミシェル・ローラン。


 新選組一番隊隊長を勤め、数々の難任務をこなしてきた新選組随一の天才剣士である沖田総司の力を受け継いだ【剣豪】沖田(おきた)総司(そうじ)則正(のりまさ)


 生贄を求め続けた毒龍をその龍殺しの聖剣アスカロンで退治し、神の教えを広めたゲオルギウスの力を受け継いだ【聖職者】クリフォード・ゲオルギウス。


 トート・タロットの開発や『法の書』を執筆し、それを土台としたセレマを提唱したアレイスター・クロウリーの力を受け継いだ【魔術師】ハミッシュ・アレイスター・クロウリー。


 四大元素を象徴する精霊の存在を提唱し、医学を得意としたパラケルススの力を受け継いだ【錬金術師】グロリア・パラケルスス。


 数多くの肩書を持ち、稀代の詐欺師として名高いカリオストロの力を受け継いだ【贋作師】ステファニア・カリオストロ。


 七十二体の悪魔を使役したソロモン王の力を受け継いだ【召喚師】セオフィラス・ソロモン。




 最後に、人間族(ヒューマン)ではないため【解放者】にはカウントされないものの、その功績から【大英雄】と呼ばれた各種族の王たる六人。




 各種族の中でも最多で欲深である人間族(ヒューマン)を一つにした人間族(ヒューマン)の王、【大帝】アドルファス。


 各種族の中でも最強でプライドの高い龍族(ドラゴン)のトップを務めた龍族(ドラゴン)の王、【黒龍王】バハムート。


 各種族の中でも気分屋でまとまりのない妖精族(フェアリー)をまとめ上げた妖精族(フェアリー)の王、【妖精王】オベイロン。


 各種族の中でも気性が荒く武闘派揃いの獣人族(シアンスロープ)を率いた獣人族(シアンスロープ)の王、【獣王】シンハ。


 各種族の中でも知能が低く愚鈍な者が多い巨人族(ギガース)の王、【巨人王】ウートガルザ・ロキ。


 各種族の中でも最も神に近い天族(エリオス)のまとめ役である天族(エリオス)の王、【天使長】ミカエル。




「この二十六人が、聖戦時代に最も活躍した偉大な英雄たち――【救世主】か」



 謁見当日の早朝。俺――雨霧(あまぎり)阿頼耶(あらや)は用意された宿の一室でパーティメンバーたちに確認するように言った。


 用意された部屋はかなり広い。風呂、トイレ付きだし、ベッドルームは二つもあるし、リビングルームも広々としていた。いわゆるスイートルームというやつだろう。今はそのリビングルームで聖戦時代についての内容を整理しているところだ。


 上質な木材で造られたテーブルの上には大量の資料が散らばっている。今まで俺が調べた聖戦に関することを写した紙だ。俺が調べた、と偉そうに言ったが、まとめた内容は一般的に広がっている聖戦に関する事実に過ぎない。



「その中でも十三人の異界勇者と七人の選定者は【解放者】と呼ばれ、それ以外の六人の王たちは【大英雄】と呼ばれていました。その二つに分けられたのは、人間族(ヒューマン)かそうじゃないかの違いですね」


「【大英雄】の中にも人間族(ヒューマン)がいるみたいだけど?」



 セツナの言葉に疑問を投げかけると、彼女はテーブルの上にある資料の一枚を指差した。



「【大帝】アドルファス様ですね。彼は【救世主】に数えられてはいますが、英雄と呼ぶにはあまりにも弱過ぎた――というか、戦闘能力は皆無でした。それに選定者でもなかったようです。ただ、各種族の中で最も数が多く、まとめるのが難しい人間族(ヒューマン)を一つにしたその功績から、最弱の英雄でありながらも【大英雄】となったとされています」


「戦闘能力は皆無って、よくもまぁそれで聖戦を戦い抜けたな。真っ先に死にそうなものだけど」



 暗殺とか、闇討ちとか。それでなくても戦闘に巻き込まれたらそれでおしまいだろうに。



「戦闘能力こそ皆無ではございますが、そのカリスマ性と『巡り合わせの良さ』から常に周りには強くて優秀な者たちが集っており、アドルファス様を護衛していたらしいですわ」



 クレハの説明を聞いて、頭の中に黒スーツに身を包んで仲間に囲まれた男性のビジョンが浮かんだ。

 まるでマフィアみたいだな。



「兄上様はこの二十六人の偉大な英雄たちのうち、自身のご両親がどなたなのかはご存じないのでしたわね?」


「あぁ。けど俺の元の種族が純粋な人間族(ヒューマン)だったことを考えると、【大帝】を除いた【大英雄】たちではないだろうな」


「そうですね。もしも【大帝】様以外の【大英雄】の誰かがご両親なら、先輩は純粋な人間ではなかったはずです。先輩のお母様はミシェル・ローラン様、グロリア・パラケルスス様、ステファニア・カリオストロ様の三人の誰かでしょうけど、お父様は候補が多くて分かりませんね」



 セツナの言葉に俺は頷く。【円卓の勇者】、【選定者】、【大帝】。この中の誰かだろう。決定打がないから、これ以上は推測のしようもないけど。



「……お師匠様は、ご両親のことを、聞くつもり?」


「いや。それは後回しだな」



 ミオの質問に否定で答える。


 両親については知りたいところだけど、それよりも【勇者召喚の儀式】について聞くのが先だ。



「先に勇者について訊かないといけない。帰還する方法があるなら知っているかもしれないからな。それに、現時点だと俺が救世主の息子だって証明することができないからな。取り合ってはくれないと思う」


「【勇者召喚の儀式】のことを訊くとなると、十六代目異界勇者が召喚されたことも話さないといけませんね。どうして儀式のことを知りたいのかの説明をしないといけませんし」


「そこは仕方がないでしょう。何もかもを隠した状態で相手から情報を引き出すことなんてできませんわ」


「……お師匠様、話しちゃっても、良いの?」


「いずれ知れ渡ることだからな」



 しばらくしたら異界勇者お披露目の式典をするらしいからな。それでなくても元クラスメイトたちは王都を出歩いていたから、異界勇者が召喚されたことは噂になっているはずだ。クレハも知っていたわけだしな。


 これは奥の手になるが、十六代目異界勇者たちが獲得している勇者系スキルを開示することも視野に入れている。


 異界勇者が一度に召喚されるのは四十人。上位十三名の【円卓の勇者】たちは決まった勇者系スキルを獲得するが、彼らを除いた残りの二十七名に関してはそうではない。各々の特質に合った勇者系スキルを獲得する。


 そのため、四十人全員が歴代異界勇者たちと同じスキルを持っているとは限らないのだ。


 元とはいえ、クラスメイトたちのスキル情報を言い触らすのは気が引けるが、背に腹は代えられない。【勇者召喚の儀式】について知ることが先決だ。



「まぁ、それでもティターニア様に直接訊けるかどうかは分からないけどな」



 何せ相手は一国を束ねる女王で、しかも聖戦時代を知る『生きる伝説』だ。こちらから何かを聞くこと自体が不敬だと捉えられても不思議ではない。むしろ口を開くことすら許されないかもしれない。



「それは充分に考えられますわね。聖戦時代の英雄とは、こちらの世界では羨望や信仰の対象ですから。かく言うわたくしも、これからティターニア様とお会いするということに緊張していますし」


「クレハも緊張するんだな」


「兄上様はわたくしを何だと思っているのでございますか?」


「図太い神経を持っているヤツ……ごめんなさい冗談ですからナイフを取り出さないでください」



 正直に言ったら笑顔でどこからともなくナイフを取り出したので謝った。笑顔が怖いです。


 ていうか今どこから出した? 抜いた瞬間も収めた瞬間も分からなかったんだけど。

 さすが暗殺者だな。



「セツナとミオも、緊張しているのか?」



 訊くと、二人は揃って頷いた。



「ミオは一般人だから、まぁ分かるけど、皇族であるセツナも?」


「それはそうですよ。王族という点では同等の立場ですけど、ティターニア様と私たちとじゃ格が違い過ぎます。比べることすらおこがましいですよ」



 そんなにか。

 聖戦時代の人たちっていうのは、それだけで重要人物と見なされるんだな。



「他人事のような顔をしていますけど、本来なら先輩もその“格が違う人物”なんですからね?」



 あぁ。そう言えばセツナも俺が救世主の息子だって知った時は様付けで呼ぼうとしていたっけか。


 ミオとクレハばかりか【灰色の闇(グラウ・シュヴェルツェ)】の面々も、俺が救世主の息子だと明かした時は「自分たちは何て無礼なことを」って言いたそうに顔を真っ青にして揃って跪こうとしていた。全力で止めたけど。


 たしか、セツナの話だと俺の価値はこちらで言う公爵に相当するんだったか。とは言っても、俺はそのことを公言していないし、そもそもそれを立証することはできないから、そんな実感は全くないんだけどな。


 ただ単に俺自身の威厳がないせいもあると思うけど。やっぱり少しくらい威厳があった方が良いのかな? でも威厳なんてどうやったら出せるんだ?


 こういう時、平凡な自分の顔が嫌になる。もっと強面ならちょっとくらい威厳も出ただろうに。


 そんな益体もないことを考えていると、ドアをノックする音が三回鳴った。



「セリカ・ファルネーゼです。アラヤ御一行様、お迎えに上がりました」



 どうやらもうそんな時間らしい。

 俺たちは揃って席を立ち、部屋の外へと出た。

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