第164話 人として恥ずべき行為
空が茜色から夜の闇の色に染まった頃。
仲林祐介はこの城のメイドから借りたワゴンを押して、ある場所へと向かっていた。王族の居住区と同レベルの警戒体制が敷かれている、今代の異界勇者が寝泊まりしている場所だ。
その一室。彼は自分の恋人である内村里沙に割り当てられた部屋に歩を進めていた。
部屋から出てからこの数日間、彼は朝昼晩と彼女の所を訪れている。説得はもちろんのこと、里沙に食事を取らせるためでもある。彼自身もそうだったが、部屋からまったく出ていないため、今まで食事も碌に取っていなかったのだ。入浴に関しても自発的にはしていない。
さすがに恋人と言えど入浴の世話をするのは憚れたので、それは現在メイドに頼んでいるが、食事など他のことは祐介が引き受けている。
ガラガラと車輪の音を鳴らしてワゴンを推し進めていけば、大好きな女性がいる部屋の前に辿り着いた。
ワゴンを止めて、ドアに向き直り、三回ノックする。沈黙が返り、返事はない。
「里沙? 祐介だけど」
呼び掛けてみるが、やはり返事はなかった。けれどこれは毎度のこと。祐介はゆっくりとドアを開ける。照明は一切点けていないようで、室内は真っ暗だった。開けたドアから廊下の光が室内に流れ込むが、それでは部屋全体を照らすことはできない。
祐介が壁に手を這わせると、備え付けられている照明の魔道具に明かりを灯すスイッチの役割をしている魔石が嵌め込まれた装飾品に指先が触れた。魔力を流して軽く二回タップすれば、天井のシャンデリアに明かりが灯る。
ぐるりと部屋の中を巡るようにして、残りの燭台に同じように明かりを灯していけば、室内は柔らかい光で満たされた。
最後に、部屋の一点に視線を投げる。天蓋付きの豪華なベッドの中心には、こんもりと何かが布団に包まれていた。
「里沙」
それが何なのかは分かっているので、無遠慮にめくるなんて真似はしない。少し離れた位置から優しく呼ぶと、ようやっと反応があった。
「……なに」
もぞり、と布団の裂け目から少女が顔を出した。肩口で切り揃えた髪を揺らす彼女は眉間にシワを寄せて、どことなく不機嫌そうだ。
あまり喧嘩をしないものだから、恋人からそんな目で見られることに慣れていない祐介は初日こそ少し萎縮してしまっていたが、今ではそれほど気にしなくなっていた。
気を取り直して彼女に食事を勧める。
「ご飯、持ってきた」
廊下に止めてあったワゴンを運び入れる。椅子を引っ張ってベッドの傍に腰を下ろせば、ワゴンに乗せていたスープとスプーンを手に取り、一匙掬って彼女の口元に寄せる。
「ほら、里沙。口、開けて」
「……ほしくない」
「そうは言っても、ちゃんと食べないと」
一口だけでも良いからとスプーンを突き付ければ、渋々と食べ始めた。文句を言いつつもちゃんと食べてくれたことに内心で安堵する。
「外にはまだ出たくない?」
「……」
「俺が一緒でも駄目か?」
「……」
スープを食べさせながら問い掛けるも、沈黙だけが返ってくる。外に出るにはまだ勇気が足りないらしい。
(仕方ないか。良い関係を築いていなかったからって、クラスメイトが死んだんだから大なり小なりショックは受ける。だから他のみんなもまだ部屋から出られずにいるわけだし。……できれば里沙にも外に出て戦えるようになってもらいたかったんだけど、無理そうか)
内村里沙が獲得している勇者シリーズのスキルは【勇者傀儡】というもので、これは任意の対象を操り人形のように操ることができる効果を持つ。
練度が上がれば操る強度・種類・人数が増えていくので、やりようにとっては敵同士で相打ちにさせたり敵を操って敵軍の情報を横流しさせたりすることだってできる。強敵揃いの魔王軍を相手にするにはかなり有用な搦め手のスキルと言えよう。
だがそれも、相当に練度を上げなければ効果は期待できないが。
(戦えるようになると信じてこのままサポートを続けるか、それとも戦えないと判断して俺が里沙の分まで戦うか。始めは悩んだけど、魔王を倒して地球に帰るためには少しでも戦力はいるから、里沙の力も必要になる。……それに俺はこの子の彼氏なんだ。だったら、誰よりも俺が里沙を信じてやらないと)
いずれ里沙は立ち直ることができると信じ、自分はその時までサポートをする。それが自分の役割だと心の中で静かに意気込んだ。
そうこうしているうちに里沙がスープを食べ終わったので、祐介は片付けをする。すると、彼の後ろ姿を見詰める里沙がポツリと呟いた。
「いつまでこんなこと続けるの」
「……里沙が外に出られるようになるまで、かな」
少し考えてからそう答えた。
カーエル国王から魔王を倒せば帰還できると聞いている彼らはそれを信じている。しかし現状の自分たちでは魔王を倒すなんて夢のまた夢だ。祐介は地球に帰るためにも里沙に協力してもらいたかった。
「私は、外には出ない」
「……里沙だって地球に帰りたいだろ? それを叶えるには魔王を倒すしかない」
「分かってるよ、そのためには全員で力を合わせないといけないって。けど、私は外に出ない。出たくない」
「……」
「だって……だって仕方ないじゃん! 怖いんだから!」
自分の体を抱き締めるようにして、彼女は体を恐怖で震わせる。きっと、あの『魔窟の鍾乳洞』で遭遇した黒龍を思い出しているのだろう。その恐怖は理解できる。祐介だって、部屋から出ることはできたものの、まだ心の中には龍族に対する恐怖心が残っている。
「魔王と戦うってことは、あんな怖いことを……命のやり取りをしないといけないってことでしょ? あんな怖いことをまたやれってことでしょ!? できないよ! 魔王の討伐? そんなのを私たちみたいな子供に頼まないでよ! 何で私たちなの!? 私たちには関係ないじゃんか!! 実際に、一人死んじゃったじゃんか!!」
いきなり勇者シリーズのスキルという強力な力を得た弊害だった。命のやり取りというものを理解することなく戦場に出てしまったせいで、彼らは魔物との戦いをどこかゲーム感覚でいた。
皮肉なことに、雨霧阿頼耶の死が彼らの認識を現実へと引き戻したのだ。ただ、クラスメイトが死んだという事実は平和な日本で生まれ育った彼らに多大なショックを与え、そのほとんどが引きこもってしまったが。
彼女も彼女でショックを受けており、感情に任せて怒鳴り散らす。
「それに雨霧君が死んで、きっと椚さんたちは私たちのことを恨んでる! それなのに全員で協力なんて、できっこない!」
「椚さんたちは、そんなこと思ってない」
「嘘!」
「嘘じゃない」
「嘘よ! だって、私は雨霧君を虐めていたもの!」
里沙が他の女子生徒たちと一緒になって阿頼耶を虐めていたのは事実だ。阿頼耶が死んだ今、彼に好意を寄せていた優李と紗菜が協力的になるとは思えなかった。それどころか、仕返しに来るかもしれないと思っている。
彼女がそう思うのには理由がある。
黒龍に襲われて命辛々帰った王城で、里沙は鏡花にアロンダイトの切っ先を向ける優李の姿を目撃している。実際にこちらに向けられたものじゃないのに、冷や汗や動悸が止まらないほど強烈な殺意を肌で感じた。
阿頼耶が死ぬ遠因になった鏡花に対してすらそうだった。直接的に加害していた里沙たちは恨まれるだけの理由があるから、勇者の中でも特に強力な『円卓の勇者』の力を持つ二人の矛先が自分に向くかもしれないと、そう思っているのだ。
「私だって! 本当はしたくなかった! でもやらないと、今度は私が標的になるの!」
子供にとって学校という閉じた社会が世界の全てだ。一度爪弾きにされたら、ずっと孤独に過ごす羽目になる。
立川たちからも虐められていた阿頼耶は学校生活の間だけだからと耐えていたが、始めから大きなグループに属していた里沙はそうはいかなかった。誰だって自分から転落なんてしたくない。多くの者がそうであるように、自分が標的にならないように波風を立てないようにした。
内心では嫌々だったが、彼女もグループのみんなと一緒になって阿頼耶を虐めた。自分の身を守るために。正しくない行いだと分かっていながら。仕方がないのだと自分に言い訳をして。
「もういいじゃんか! 私なんか何の役にも立たないんだから!」
(あぁ、そうか)
きっとこの子は流されやすい子なんだ。
彼女に告白した時もそうだった。意を決して告白したら、『まぁいいか』と流されるような形で了承されたのだ。
グループ内で自分だけ対立行動を取れなかったのは何ら不思議ではないことだし、そういう状況下にいたのを分かっていたのに何もできなかった自分に彼女を責める資格はない。
「役に立たないなんてことはない。里沙の力だって必要だよ」
「私には、無理だよ! 戦うなんて!! そんなの、できる人がやってよ!!」
「里沙、落ち着いて」
痛ましくて見ていられない。落ち着かせようと手を伸ばすが、
「うるさい!」
と、振り上げた手が彼の顔に当たり、弾き飛ばされた眼鏡が床に落ちる。
「――っ」
「ぁ……」
そんなつもりは、なかったのだろう。つい感情的になって、手が出てしまった。とんでもないことをしてしまったといった表情をする里沙は何かを言おうとして、でも何も言えなくて、何度も口を開け閉めする。
床に落ちた眼鏡を拾って掛け直したと同時に、癇癪を起こして手を出してしまった里沙はキュッと口を引き結んで、絞り出すように言った。
「……出てって」
「……」
「出てってよ!」
金切り声を上げるように、彼女は叫んだ。
「明日の朝、また来るから」
おやすみ、と言い残して祐介は部屋から出る。当然、返事はなかった。静かに扉を閉めてワゴンを押していく彼はそっと息を吐いた。
(一筋縄じゃいかないのは分かっていたけど、これは骨が折れそうだ)
祐介は説得に時間を費やす覚悟はあるが、絶対確実に部屋から出すことができる自信はない。けれどそこまで悲観はしていない。
阿頼耶の死にショックを受けているということは、少なからず後悔しているということ。これを契機に、道を正してくれるかもしれない。祐介はそう希望を抱いていた。
(大丈夫。きっと、里沙は立ち直ってくれる)
パンッ! と気合いを入れ直すように両頬を叩いた彼は真っ直ぐ前を向いてワゴンを押して行った。
「う……うぅ」
恋人が去った自室のベッドの上で、里沙は涙を流していた。
始めこそ『まぁいいか』という程度の気持ちで付き合ったが、それも多少なりとも好意があったからこそだった。それに、彼がこちらから提示した『成人するまではプラトニックな関係に留める』という条件を受け入れて、キスや手を繋ぐだけでずっと手を出さなかった。
二人のその関係は今どき珍しいと、学校でもちょっと有名だった。
そういった背景もあって、今では自信を持って好きと言えるようになった。
それなのに、だ。
現実的な話ばかりで事実を並べられて説得された時、彼の言いたいことは理解できたが、さも自分とは違うと言われているような気がした。徐々に惨めになって、八つ当たりに怒鳴って、終いには手を上げてしまった。
猛省する彼女は考える。
(……明日の朝も来るって言ってた。その時に、謝ろう)
優しい彼ならきっと許してくれる。今までの付き合いからそう判断した。
「何だか騒がしかったけど、大丈夫かい?」
いきなりの声に里沙は肩をビクッと震わせた。扉の方を見れば、そこにいたのは祐介ではない。流行に合わせてセットされた髪に、清涼感の漂う貴公子然とした端正な顔立ちの少年――北条康太だ。
「北条、君? どうしてここに……」
彼がここに来る理由なんてないはずだ。たしかに数日前までは彼が自分の説得をしていたが、それはすでに祐介が引き継いだのだから。
「もちろん、キミを心配して」
ふっと微笑みを向けられて、里沙はトクンと鼓動の高鳴りを感じた。
里沙の所属しているグループではリーダー格の女子生徒が彼を持て囃して熱を上げていたということもあり、グループ全体で彼に入れ込んでいた。彼女もその中の一人なのだが、その感情は恋愛感情というよりはアイドルを相手に騒いでいるものに近かった。
そのはずなのだが、里沙の鼓動は高鳴りを止めない。
「祐介君に任せたけど、だからってじゃあ後はよろしくって丸投げするわけにはいかないからね。外で様子を窺っていたのさ」
事情を説明して康太は彼女の隣に腰を下ろす。
「それで、何があったんだい?」
「……実は」
ぽつりぽつりと要領を得なかったが、里沙は祐介に説得されて逆上してしまったことを話した。言っているうちにまた気分が落ち込んできて、里沙は沈んだ表情を浮かべる。
一通り話を聞いた康太は考えるように顎に手を当てた。
「(祐介君じゃ、荷が重かったか。シュナイゼルさんの言った通りだね。やっぱり僕が何とかしないと。みんなを助けられるのは僕だけなんだ)」
傍にいる彼女にも聞こえないほど小さな声で呟けば、その両腕で里沙の体を抱き締めた。
「……え?」
何をされたのか、すぐに理解できなかった。それほど彼女にとっては予想外の出来事で、里沙は頭の中が真っ白になる。全身を覆う温もりと男性特有の匂いで、ようやく認識が追い付いて自分が抱き締められていることを理解した。
「辛かったね」
離れなければと思うよりも先に、慈愛に満ちた声が耳に滑り込み、
「大丈夫だよ。僕が何とかしてあげる。キミを守ってあげるから」
脳が痺れるような甘い言葉に心の一部が蕩けるような感覚を味わった。
「……ふぁ」
熱のこもった息が漏れる。
心臓の鼓動がさらに高鳴った。脳が揺さ振られて思考が定まらない。心が溶かされて感覚が麻痺していく。
これは、駄目だ。この感覚は人を駄目にする。
わずかに残った冷静な思考がそう訴えていたが、それもすぐさま甘い熱で塗り潰される。知ってはならない感覚を知ってしまった。弱り切った彼女の心では抗いようがなかった。麻薬のようなふわふわとした多幸感で満たされ、彼女から真面な思考力を奪っていく。
いつの間にか彼女の手は康太の背中に回されており、自身の顔を胸板に埋めていた。
この温もりを手放したくない。
この温もりに浸っていたい。
彼女の中はそんな感情でいっぱいになっていた。
「……」
「……」
まるで熱に浮かされたように二人は互いを見詰め合う。どちらが先に動いたのかは分からない。だが同じことだ。見詰め合っていた二人はゆっくりと顔を近付けて、唇を重ねる。
そして。
この日、一組の男女は人として絶対にしてはならない行為に及んだ末、一夜を共に過ごした。
当然、そんな彼らの様子をこの男が見逃すはずがなかった。
「これはこれは」
シュナイゼル・セロー。
長い黒髪に泥沼のような濁った眼をしたその男性はオクタンティス王国の宮廷魔導士であると同時に、世界に暗躍する邪神教の司教だ。
彼がいるのは宮廷魔導士の本舎にある自身の執務室であった。彼は何もない虚空を眺めているように見えるが、彼の目には部屋で北条康太と内村里沙が行為に耽る姿が映し出されている。プライバシーを完全に侵害した行いを成しているのは、高級な執務机の隅にいる小さな塊だった。
手のひらほどのサイズしかない、その小さな粘液の塊の魔物はショゴスと呼ばれる、クトゥルフ神話に登場する奉仕種族の一つだ。非常に高い可塑性と延性を持っており、必要に応じて自在に形態を変えて【念話】で意思疎通を取るので、こういった監視には打って付けの魔物なのだ。
だからシュナイゼルは複数のショゴスを召喚して一体ずつ勇者たちの部屋に気付かれないように配置し、【念話】によって監視をしているわけだ。
ちなみにこれは宮廷魔導士としてではなく邪神教の司教として行っているため、一六代目勇者たちはおろか王国側も知らない。
「綺麗事ばかりの説得に終始すると思っていましたが……これは良い意味で予想を裏切られましたねぇ。これは都合が良い。後々に彼らを絶望させるための良いネタになりそうです」
ふふふっ、とあくどい笑みでシュナイゼルは笑う。
今回の康太の行動はシュナイゼルが指示したわけでも唆したわけでもない。彼は『アナタなら救えます』と言っただけで、具体的な方法は康太に委ねていた。全ては彼が自分で決めたことだった。シュナイゼルとしては効果的に不和を引き起こすために軌道修正するつもりでいたのだが、この様子ではその必要はなさそうだ。
「安心感を得た勇者リサ様は近々部屋から出るでしょうし、このまま彼をおだてて他の女性のお仲間たちにも手を出してもらいましょう。女性たちについてはこれで良いとして、男性はどうしましょうかねぇ。お仲間の女性が外に出始めていることを知れば、自身の情けなさから自発的に部屋から出る可能性もないわけではないですが……適当に見た目の良いメイドか御令嬢でもあてがいましょうか。自信を付ければ部屋から出るでしょうし、国王も勇者を繋ぎ止めるために反対はなさらないでしょうから」
ただ、部屋にこもっている勇者たちの説得をしているのは康太だけではない。鏡花たちも動いているので、怪しまれないように気を配る必要はあるが、元々オクタンティス王国の有力貴族たちは自分たちの息子や娘にアプローチさせていた。今さら不審がられることもない。
実際、立川隼人たちのグループは自分たちにアプローチしてきたメイドや御令嬢を部屋に連れ込んで手を出している。その事例が増えるだけだとシュナイゼルは判断する。
「となれば、彼らに王都外で戦闘経験を積むための下準備は進めた方が良さそうですね」
シュナイゼルが視線を執務机に向ければ、ショゴスの他に机の上には多くの紙で埋め尽くされていた。
「護衛のためにと冒険者ギルド『アルカディア』に要請して冒険者の簡単なプロフィールを送ってもらいましたが、ここから候補を選ばねばなりませんね」
白黒の顔写真付きの紙は全て、ギルドが記録している冒険者たちの経歴書だった。
「勇者ユウリ様やサナ様、シュウジ様、キョウカ様は前回の一件で騎士団に対して警戒されているようですから。騎士団の他にも冒険者を一緒にさせれば、妥協するでしょう。まぁ、冒険者本人への交渉はこちらがしなければなりませんが」
冒険者ギルド『アルカディア』は国政が絡む案件には関与しないので、オクタンティス王国に属する勇者の案件はこれに抵触する。そのため最初は勇者たちの護衛依頼を『アルカディア』は突っぱねたのだが、さすがに相手が勇者では無視することはできなかった。
何度も交渉した結果、ヒヤリングして『受けても良い』と言った冒険者に限り情報は公開するが冒険者ギルド側から強制することはないという条件で、経歴書だけ送ってもらったのだ。
なので送ってもらった(とはいっても、全てを公開するのは問題があるという理由で最小限の情報しか載っていないが)この経歴書の中から選んで冒険者本人と会って直接交渉しなければならない。
「さてどなたにしましょうかねぇ」
と、シュナイゼルはプロフィールを眺めては目ぼしい冒険者を選んでいく。積み重ねられていくプロフィールの山。その中にはこんな名前もあった。
ヘルマン、カミラと。阿頼耶が送り込んだ、二人の暗殺者の名前が。
第5章 東方魔境の悪鬼編 完




