章末 第4章終了時の登場人物紹介
連続投稿二日目です。
前話をご覧になっていない方はご注意ください。
雨霧阿頼耶
五〇〇〇年前にアストラルを救った救世主である解放者にして選定者の『聖騎士』ミシェル・ローランと大英雄の『大帝』アドルファスの間に生まれた少年。黒髪黒目で身長は一七〇センチほどで、自他共に認める平凡な容姿をしている。一七歳の誕生日に【勇者召喚の儀式】に巻き込まれる形でアストラルに渡ることになった。
かつて姫川紗菜の両親が抱えていた借金問題を解決して救ったことがある。他にも椚優李、岡崎修司の二名も救ったことがあるようだが、詳細は不明。
六年前に“あの子”へ、自身の行動原理である『どうしようもない理不尽を前に泣くことしかできない誰かを救う』という誓いを立てたらしい。
ダンジョン遠征の際には黒龍カルロスと激闘を繰り広げ、偶然手に入れた龍殺しの魔剣『バルムンク』にてカルロスを打倒。生き残るためにカルロスの魂と融合することで半人半龍となる。ダンジョンから脱出してからはセツナと合流を果たし、フェアファクス皇国フレネル辺境伯領カルダヌスで冒険者パーティ『鴉羽』を結成して冒険者活動をしている。
妖精王国アルフヘイムでは瘴精霊との戦闘の最中に、母親が残した聖剣『デュランダル』を受け継いだ。そのことで阿頼耶は自分が救世主息子であることが証明された。
セツナ・アルレット・エル・フェアファクス
フェアファクス皇国の第三皇女。黄金色の髪に奥深く澄んだ青い瞳をした人間族の少女。身長は一五七センチほどで、年齢は阿頼耶の一つ下の一六歳。
『最年少の魔導士』という称号を得て、阿頼耶の知識から新たに魔術をアレンジするなど、魔術に関して天賦の才を持っている。また銃術の腕もかなりのものであり、皇女という立場でありながら手練れの魔術銃士である変わり種。
魔術学園で実施された実地研修で悪魔と遭遇して呪いを掛けられるも、阿頼耶の奮闘により呪いから解放される。しかし呪われた経緯についてはいまだ謎が多い。魔術学園で魔術言語を習っていたため、天族が使う言語であるエノク語を読むことができる。
阿頼耶のことを『先輩』と呼び慕っており、誰が見ても明らかなほどの恋愛感情を彼に向けている。ただ、一緒に寝たり腕を絡めたりとスキンシップが多く、また風呂を覗かせようとしたり逆に覗こうとしたりと過激なアプローチも平気で行う。そのくせ、阿頼耶からされるとテンパってしまうところがある。
ダンジョンから脱出した阿頼耶と合流を果たし、フェアファクス皇国フレネル辺境伯領カルダヌスで冒険者パーティ『鴉羽』を結成して冒険者活動をしている。
妖精王国アルフヘイムでは瘴精霊との戦闘の最中に『選定者』となり、アメリカ西部開拓時代に活躍した早撃ちの名人であるビリー・ザ・キッドの力を受け継いだ。その影響で【聖銃適性】スキルを獲得する。
ミオ
ミディアムヘアほどの長さがある胡桃色の髪と瞳が特徴的な獣人族人猫種の少女。身長は低く小柄で、阿頼耶の胸くらいの高さしかない。年齢は一四歳で、【獣化】と【雷帝招来】というユニークスキルを二つ獲得している貴重な存在。双剣で戦うことを得意とする双剣士。あまり感情を表に出さない性格をしている。
両親とは死別しており、親戚に引き取られたが、ユニークスキル持ちであることを妬まれ、あまり良い扱いを受けなかった。挙句、借金の形に奴隷商人に売られてしまい、運悪く野盗に捕まった。危うく貞操を奪われそうになるが、阿頼耶とセツナの手によって救い出されて事無きを得る。
その後は阿頼耶に弟子入りし、住んでいたルーク村の住人たちを救うために阿頼耶たちの手を借りて救い出すことに成功。その際に魔剣『モラルタ』と『ベガルタ』を手に入れ、【魔剣適性】スキルを獲得する。この事件をきっかけにルーク村の住人たちとは徐々に関係が修復されつつある。
表情が変わらないため分かりにくいが、実は阿頼耶のことが好きで、尊敬を込めて彼のことを『お師匠様』と呼んでいる。加えて、よく【獣化】スキルで子猫状態になってスキンシップを取っている。
事件後は阿頼耶たちの所に残ることを望み、そのままフェアファクス皇国フレネル辺境伯領カルダヌスで冒険者活動をしている。
クレハ・オルトルート・クセニア・バハムート
素鼠色の髪を三つ編み一本結びにして、龍族特有の瞳孔が縦長に割れた金眼が特徴的な龍族の女性。最強の種族である龍族ではあるが、暗殺を得意とする暗殺者。見た目は二〇代前半だが、龍族という長命種であるため、実年齢は二二七歳になる。
救世主と呼ばれた聖戦時代の大英雄の一人である『黒龍王』バハムートの曾孫で、龍国ドラグニアを統べる現黒龍王の娘。姫という立場ではあるものの、龍族全体からすると最弱クラスに分類されるため、弱肉強食が当たり前の龍国では無能扱いされ、父親からも見放された。
その後、龍国にいるのも嫌になって同じ境遇にいる仲間を連れて旅立つも、魔力不整脈という病に罹り、フレネル辺境伯領の元領主シーザーに仲間を人質に取られる。阿頼耶の活躍により、魔力不整脈を治してもらうばかりか仲間も救ってもらった。
その時の彼の姿を見て恋愛感情を抱くようになる。セツナほどではないが隙あらば暗殺者らしく阿頼耶を誘惑しようとする。
領主の問題を片付けた後は、自分が頭目を務める暗殺集団『灰色の闇』全員で阿頼耶たちの仲間になるが、何を思ってかクレハは彼のことを『兄上様』と呼び、それに便乗してメンバーも『兄様』と呼ぶようになった。
セリカ・ファルネーゼ
人間族の父親と森妖種である母親のヴェロニカの間に生まれた、アップヘアーにした翡翠色の髪と瞳が特徴的な妖精族の半森妖種の女性。スレンダーで貧乳だが、スラリと伸びた美しい脚の持ち主である。風精霊のルルと契約を交わしている風の精霊魔術師にして弓術を得意とする魔術弓兵。見た目はクレハ同様に二〇代前半ほどだが、長命種であるため実年齢は二一五歳になる。
父親は人間族であるためすでに亡くなっており、母親は仕事上のミスで投獄され、混血に対する偏見もあって二〇〇年近く孤独を味わうことになる。そのため、阿頼耶たちと出会った当初は諦観めいた死んだ魚のような目をしていて、どこか無気力で陰気な雰囲気をしていた。しかしそれは長い間感情を押し殺していただけのことで、心まで死んだわけではなく、本来の彼女は物事を観察して冷静に状況を判断することに長けている。
阿頼耶たちの協力のもと、武闘大会に出場して勝ち進んでいったが、ブルーベルが解き放った瘴精霊に憑依される。だが阿頼耶たちの奮闘と、彼女自身が瘴精霊に抗ったことで憑依から脱することに成功する。
その経験を経て、彼女が元々持っていた素質が開花したことにより『精霊の愛し子』の称号を獲得し、アザレアから『名誉近衛侍女』に任命される。また冒険者パーティ『鴉羽』に恩義を感じていることもあって、彼らに尽くしたいと考え、事件解決後はメイド服を着用するようになった。
阿頼耶に溜まりに溜まった感情を曝け出し、それを真正面から受け止めてくれたことをきっかけに彼に恋愛感情を抱いたことも影響して、彼のことを『ご主人様』と呼んでいる。
戦闘はもちろん、馬術、手芸、狩猟、弓作り、演奏、酒造、栽培、家事と手広くこなすことができる万能な女性だが、ペットとして飼っている人畜無害な蜘蛛の魔物であるフィル・アレニエを『ケダマ』と名付けていることからも分かる通り、ネーミングセンスはない。
ヴェロニカ・ファルネーゼ
緩くウェーブした緑色の髪に同色の目をした、セリカの面影がある妖精族の森妖種の女性。見た目は五〇代くらいの女性で、ダンデライオンの妹でありセリカの母親。
元は財務大臣であったが、実の兄であるダンデライオンの策略により二〇〇年もの間、牢獄に捕らわれていた。しかし、クレハの配下である『灰色の闇』によってダンデライオンを含めた長老会の不正を暴いたことで冤罪であることが証明され、釈放される。釈放後は以前の職である財務大臣のポストに再就職することになった。
娘のセリカが阿頼耶に恋愛感情を抱いているのを見抜き、彼の所へ行くよう送り出す。
ブルーベル・ガリアーノ
ショートヘアにした深緑色の髪と目をした、妖精族の森妖種の女性。見た目は二〇代前半で、実年齢はセリカと近い。火精霊、水精霊、風精霊、土精霊、光精霊と契約を交わしている精霊魔導士であり、弓術を得意とする魔術弓兵。セリカとは従姉妹同士の関係にある。
父親のダンデライオンが中位種であるエルダーエルフであるのに自身が森妖種として生まれたことが影響し、父親から冷たい目で見られ続けた。父親の機嫌を損ねないように、ガリアーノ家に相応しいように振る舞い続け、息苦しい毎日を過ごしていた。そのためか、家族と仲睦まじく過ごしている従姉妹のセリカのことを次第に憎むようになった。
武闘大会の準決勝ではセリカと戦うことになり、ここで初めてお互いに本音をぶつけ合うことになった。しかし、ダンデライオンからの容赦のないプレッシャーとセリカへの憎しみを拗らせてしまった彼女は、知らなかったとはいえ妖精族が忌避する瘴精霊が封入された魔水晶を使用してしまい、危うくアルフヘイムを滅ぼしかけてしまう。
阿頼耶たちの活躍で事無きを得るが、S級災害指定精霊である瘴精霊を使用するのは重罪であるため、事件解決後は投獄の上、一〇〇年の強制労働をすることになった。
ダンデライオン・ガリアーノ
緑色系統の長い髪を一つに纏めた、五〇代くらいの見た目のエルダーエルフの男性。ブルーベルの父親で、財務大臣の職に就いていた。
選民思想が強く、特に混血のことは蛇蝎の如く嫌っている。そのため、周囲にはセリカと関わりを持つなと触れ回ったり、本当は優秀なのに彼女は役立たずなのだと印象操作をしてセリカを孤立させた。また、実の娘であるブルーベルに対しても当たりが強く、『セリカに勝てなければ廃嫡』と理不尽な条件も平気で出した。
瘴精霊の事件解決後ではブルーベルが瘴精霊を封入した魔水晶を使った責任を取ることになったが、クレハの配下である『灰色の闇』によってダンデライオンを含めた長老会がこれまで行ってきた不正を暴いたことにより、全ての財産の没収の上、ガリアーノ家の取り潰しに財務大臣職の解雇、仮釈放なしの終身刑となった。
サフィニア・ガリアーノ
ブルーベルと顔立ちが似ている、おっとりとした雰囲気をした四〇代から五〇代くらいの見た目をした妖精族の森妖種の女性。ダンデライオンの妻であり、ブルーベルの母親。
ダンデライオンとは違ってブルーベルのことを大層可愛がっており、彼女が実父から精神的に追い詰められているのを見て心を痛めていた。本当に娘の幸せを願っていたからこそ、そこにアルキンに付け込まれてしまい、アルキンから受け取った瘴精霊を封入した魔水晶をブルーベルに渡してしまい、事件を引き起こす一端を担ってしまった。
事件解決後にはそれを推測した阿頼耶に指摘され、彼から『アナタの娘への愛情は本物でしょう。ですが、アナタはやり方を間違えた。本当に娘のためを思うなら、どうか恥じない行いをしてください』と言われたことで自首を決意。無期懲役の刑に処された。
アルキン・カルドーネ
不機嫌そうに眉間に皺を寄せた眉に、鋭い目付きの三白眼、無精髭を生やした妖精族の土妖種の男性。火精霊、土精霊、鉄精霊と契約を交わし、斧術を得意とする魔術斧使い。軍務大臣兼妖精兵団団長を勤めているジスルフィド・カルドーネとは伯父と甥の関係にある。
土妖種らしく小柄だが、全身を覆う金属製の鎧の上からでも分かるほど良く鍛えられた体をしており、面当てのない兜は頭から二本の角が生えたデザインをしており、ただでさえ三白眼のせいで犯罪者面をしているのに余計に威圧感を出した格好をしている。
混血を下等種と見下している選民思想の持ち主で、それどころか女性差別も平気でやる。大会中もそれが顕著に現れ、ハーフであるセリカや、対戦相手の女剣士に対して差別的な発言を連発していた。
実は『邪神』デズモンドを信奉する邪神教の侍者。アルフヘイムで活動しており、負の感情を集めるために裏で種族差別を助長し、大会中でもサフィニアを経由してブルーベルに瘴精霊が封入された魔水晶を渡していた。
阿頼耶たちが瘴精霊を祓った直後に姿を現し、自身が邪神教徒であることを明かす。負の感情を集める道具である『邪法の贄』を使って邪人へと進化するが、それが原因で教皇と呼ばれる者の手によって殺害される。
ジスルフィド・カルドーネ
立派な髭を生やした、子供見間違うほど小柄な体躯をした初老の男性エルダードワーフ。左胸にいくつもの勲章が輝く礼服を着ており、軍務大臣兼妖精兵団団長を勤めていた。仕事中であろうと酒を飲むほどの酒豪であり、アルキンとは伯父と甥の関係にある。職務に誠実な人物で、たとえ甥であろうと間違ったことをすれば殴って叱責するほど。
瘴精霊の事件が解決した後は、アルキンの犯した罪の責任を取ることになり、軍務大臣及び妖精兵団団長の地位並びにカルドーネ家当主の座を剥奪、財産も一部没収されることになった。
シャムロック・スカルラッティ
妖精王国アルフヘイムで宮廷精霊魔導士を勤めている妖精族の森妖種の中年男性。
ハイドランジア・ファブリツィオ
妖精王国アルフヘイムで宰相を勤めているモノクルを掛けた妖精族の暗森妖種の男性。
アザレア・フィオレンティーナ・ニコレッティ
妖精王国アルフヘイムのナンバー2で、精霊から特に愛された存在である『精霊の愛し子』の称号を持つ妖精族の森妖種の女性。見た目は阿頼耶と同じくらいに見えるが、実年齢はそれ以上である。
三大巫女姫の一人である『精霊の巫女姫』であるため、精霊魔術以外の魔術は一切使えない。
阿頼耶のことを始めは、『どこにでもいる、どこまでも平凡な普通の少年』と評価していたが、瘴精霊の事件でその認識を改め、彼が聖剣『デュランダル』を使ったことで彼が救世主の息子だと知った際には驚いていた。
また、阿頼耶が極夜の切っ先を向けて『救う気がないなら引っ込んでいろ』と宣戦布告した時には気持ちが昂って思わず身震いした。
ティターニア
五〇〇〇年前にアストラルを救った救世主の内、大英雄と呼ばれる六人の王たちの一人である『妖精王』オベイロンの妻で、聖戦時代から現在までを生き続けている『生ける伝説』。妖精族の妖精種の中位種であるハイピクシーであるため、本来は手のひらサイズの小人のような体をしているのだが、サイズは人と大差はなく、身長は一八〇センチほどある。
見た目は二〇代後半に見えるが、聖戦時代から生きているため五〇〇〇歳は確実に超えている。見る角度によって色彩を変える流れるような長髪と蝶の羽と、その美貌が特徴的である。
森をイメージした緑色を基調とした露出の低いドレスを身に纏っているが、内側から盛り上げつつも華奢な印象すら与えるスタイルは情欲と庇護欲を掻き立て、妖艶さと儚さを兼ね備えている。
そんな彼女を阿頼耶は『幻想の住人』、『絵本の登場人物』、『理想の淑女』と例える一方で『危険な「美」だ』と評価した。
妖精王国アルフヘイムを覆う国土防衛結界【妖精郷】の影響で国外に出ることができないが、代わりに精霊魔術を応用して作り上げた義体を用いることで国外でも活動することができる。
聖戦が終結する際にミシェル・ローランから聖剣『デュランダル』を預かり、王城の地下にある礼拝堂に封印し、アドルファスの予言に従って五〇〇〇年もの長きに渡って二人の息子である阿頼耶の来訪を待ち続けた。
瘴精霊の事件で阿頼耶がデュランダルの封印を解いて使用したことで彼が救世主の息子であることが証明され、デュランダルは阿頼耶の手に渡った。
アドルファス
五〇〇〇年前にアストラルを救った救世主の内、大英雄と呼ばれる六人の王たちの一人で、『大帝』の異名を持つ。
同じ救世主で選定者の『聖騎士』ミシェル・ローランとは幼馴染みであると同時に彼女の夫で、阿頼耶の父親である。いつもヘラヘラ笑っている穏やかな人物で、威厳なんてものには縁遠いが、それでも英雄に足る存在感がある。
極めて珍しい【未来視の魔眼】という魔眼系ユニークスキルを所持しており、類稀なるカリスマ性で集めた仲間たちと協力して、【未来視の魔眼】で視た最悪の結末を何度も回避していた。
数多くの英雄が存在した当時では間違いなく最弱だったが、各種族の中でも最多で欲深である人間族を一つにした功績から大英雄にカウントされる。英雄と呼ぶにはあまりにも弱過ぎて戦闘能力は皆無だったが、そのカリスマ性と『巡り合わせの良さ』から常に周りには強くて優秀な仲間が集まっており、彼らに護衛してもらっていた。
気弱で頼りなさげな人物であったが、当時の救世主たちは何か大きな決断を迫られた時は必ずアドルファスを頼っていた。
聖戦が終わる頃にアストラルの至高神である『創造神』アレクシアと地球の神である『聖書の神』と契約を交わし、ミシェルと共に地球へと渡った。
ミシェル・ローラン
五〇〇〇年前にアストラルを救った救世主の内、解放者に分類される二〇人の中で、かつての英雄の力を受け継いだアストラル出身者のことを指す選定者の一人で、彼女の就いていた職業でもある『聖騎士』の異名を持つ。
同じ救世主で大英雄の『大帝』アドルファスとは幼馴染みであると同時に彼の妻で、阿頼耶の母親である。
厳しい性格をしている人物で、いつもアドルファスに『シャンとしなさい』と怒っていた。聖戦時代では何度も強者に立ち向かって、その雄姿を他の英雄たちに見せていた。
聖戦が終わる頃にアストラルの至高神である『創造神』アレクシアと地球の神である『聖書の神』と契約を交わし、アドルファスと共に地球へと渡った。
ルシファー
五〇〇〇年前、自分の考えに同調した者たちを率いてアストラルを滅ぼそうとした魔王と言い伝えられているが、その伝承は誤りであり、本当は世界を救うために戦った救世主の一人だった。
『魔王』という異名も、本来は『各種族の中で最も狡賢く、しかし契約には真摯な魔族たちの頂点に君臨する魔族の王』という意味であったが、『邪神』デズモンドが封印される直前に勇者システムを乗っ取ったことで、『邪神』デズモンドの身代わりにされた。
聖戦以降では、勇者システムが『邪神』デズモンドに乗っ取られた影響で七人に分かれてしまった。
クラウド
ツンツンに尖った金髪に青い瞳をした、阿頼耶と同い年くらいの少年。平民出身の人間族で、フェアファクス皇国護国騎士団第八部隊所属の騎士。
英雄譚やそれに登場する英雄に強い憧れを抱いており、領主の問題を解決した阿頼耶に対しても憧憬の念を抱いている。阿頼耶のように、守りたいから守り、救いたいから救う。そんな英雄になりたいと願い、部隊長のクレイグ・ユアン・フィッツジェラルドに直接交渉して彼らとの連絡要員という名目で残った。
ただ、阿頼耶のように自由に動けるような立場じゃないことは自覚しているため、正しさを求めながらも組織人としての道理を通すように動いている。
妖精王国アルフヘイムで起こった瘴精霊の事件の際には、事件を起こしたブルーベルを保護していたところ、水の上位精霊である氷精霊に助けられる。だが何の因果か、そのまま氷精霊に気に入られて契約を結び、騎士系統中級職である『魔術騎士』にランクアップした。
エステル
少し長めに伸びた金髪を無造作に束ねた、褐色の肌にミオと同じくらいの小柄な体をした妖精族の土妖種の女性。シャツにオーバーオール、肩に掛けた汗を拭くタオルという、何とも味気ない格好をしている鍛冶師。見た目こそ少女そのものだが、長命種であるため実年齢はそれ以上である。
口は悪く粗暴で、弟子であるオーキッドのことを『バカ弟子』と呼んでいる。
強力な魔法剣を打てる数少ない上級鍛冶師で、『聖剣、魔剣を打てる可能性が最も高い鍛冶師』として有名。だが性格に難があり、酒好き、煙草好き、博打好きでしかも博打で作った借金をオーキッドに押し付けるという鬼畜じみたことを平然をする性格破綻者である。
オーキッド
人の良さそうな顔立ちをした妖精族の森妖種の男性。
聖剣、魔剣を打てる可能性が最も高い鍛冶師であるエステルに世界各地から弟子入りする者は多かったが、そのあまりにも酷過ぎる性格と過酷な鍛冶修行のせいでほとんどが彼女のもとを去り、残ったのはオーキッドだけであるため、彼も彼で有名だったりする。
しかしそれは単に、いつの間にか借金を押し付けられ、返済に奔走していたら倍のスピードで借金が膨れ上がり、気付いたら身動きが取れなくなっていただけの話である。
ただ、それでも師であるエステルの鍛冶の腕は認めている。
ケトル・マネリ
茶髪に茶色の目をした小人の姿をしている、精霊祭の武闘大会で司会と実況を勤めた妖精族の家妖種の男性。
アナナス・チェコン
パイナップルを連想させる、長い金髪を頭の頂点でまとめた妖精族の雨妖種の女性。妖精兵団第一部隊副隊長を勤めている。
カトレヤ・プロネル
精霊祭の武闘大会で予選を第一位で突破した優勝候補の一人で、緑色系統の髪をした妖精族の森妖種の女性。片手で持てるほどの長さの魔法杖とローブ姿をいった、典型的な魔術師の格好をしている。
四大精霊である火精霊、水精霊、風精霊、土精霊と契約している精霊魔導士であり四元素使い。
武闘大会の本選第一試合でセリカと戦うが、自身の魔法杖を折られたことで初戦敗退する。
マリーゴールド・コンスタンツォ
武闘大会の優勝候補の一人である、妖精族の森妖種の女性。去年の武闘大会で惜しくも優勝を逃した魔術剣士。武闘大会での優勝に拘っており、去年に近衛侍女と妖精兵団の両方からスカウトが来ていたがどちらも断っている。
今年の大会でもベスト四にまで勝ち進んだが、瘴精霊の事件のせいで大会自体が中断されてしまった。
キャラウェイ・ロッシーニ
土の上位精霊である樹精霊と契約している妖精族の暗森妖種の女性。今年の武闘大会でベスト四にまで勝ち進んだ魔術弓兵だが、瘴精霊の事件のせいで大会自体が中断されてしまった。
イザベル・ヒュドラ
クレハが率いる暗殺集団『灰色の闇』のナンバー2で、赤紫色の髪に龍特有の瞳孔が縦に割れた金眼をした龍族の女性。
赤龍系統の龍族で、ギリシャ神話に登場する強力無比な猛毒を操り、九つの頭を持つとされるヒュドラであるため、毒や薬の扱いは『灰色の闇』の中でもトップである。
カルダヌスでの領主の事件では【隷属術式】によって捕まっていた五人の内の一人。
にたぁ~とした笑みと『くひひ』と独特な笑い方をするせいで不気味な印象を抱くが、常識的な人格の持ち主であるらしい。
ヘルマン・ニーズヘッグ
クレハが率いる暗殺集団『灰色の闇』の暗殺者の一人で、右耳にピアス、ツーブロックの黒髪に龍特有の瞳孔が縦に割れた金眼をした龍族の男性。
黒龍系統の龍族で、北欧神話においてフヴェルゲルミルの泉に多くの蛇と共に棲み、世界樹ユグドラシルの三つ目の根を齧り続けているとされる『怒りに燃えてうずくまる者』である。
現在は阿頼耶からの指示でオクタンティス王国の王都アルバに冒険者として潜入し、一六代目異界勇者とオクタンティス王国の動向を調査している。
カミラ・リンドヴルム
クレハが率いる暗殺集団『灰色の闇』の暗殺者の一人で、頭の左側に羽飾りを付け、ウェーブがかった緑色の長髪に龍特有の瞳孔が縦に割れた金眼をした龍族の女性。
現在は阿頼耶からの指示でオクタンティス王国の王都アルバに冒険者として潜入し、一六代目異界勇者とオクタンティス王国の動向を調査している。
椚優李
赤くて細いリボンでポニーテールにした長い濡羽色の髪と、勝気な印象を与える吊り目が特徴的な少女。地球では紗菜と双璧を成す二大アイドル的な存在で、目を引くほど美人だが、勝気な性格のせいで告白してくる男子は少ない。
アストラルに召喚された四〇人存在する一六代目異界勇者で、その中でも上のランクの『円卓の勇者』に分類される一三人の一人。『湖の勇者』の称号を持ち、聖剣『アロンダイト』を使って戦う。
阿頼耶と同じく夜月神明流の門下生であるため、立場的には彼の妹弟子になる。北条、紗菜、阿頼耶の三名とは幼馴染みで、紗菜とは親友という間柄である。
かつて阿頼耶に救われたことがあるようだが、詳細は不明。
阿頼耶に対して強い恋愛感情を抱いており、ダンジョン遠征の際に阿頼耶を失ってから二ヶ月ほどが経った今も彼のことを想っている。
阿頼耶を失ったことで精神的に弱った途端にアプローチが増えたことに辟易としており、紗菜と相談して周囲とは一線を引くことにした。ただ責任感が強いため、辟易とはしていても、だからといって全てを放り出すようなことはできず、抱える激情と板挟みになって自分自身を苦しめる結果となっている。
姫川紗菜
赤くて細いリボンでハーフアップにしたセミロングの髪と、柔和で人懐っこくて愛くるしい笑顔が特徴的な少女。地球では優李と双璧を成す二大アイドル的な存在で、毎日のように告白されるほど人気がある。
アストラルに召喚された四〇人存在する一六代目異界勇者で、その中でも上のランクの『円卓の勇者』に分類される一三人の一人。『聖杯の勇者』の称号を持ち、勇者シリーズのユニークスキルの【勇者聖杯】で呼び出した聖杯で回復を行う。
阿頼耶とは優李の紹介で出会い、本の趣味が合ったこともあって交流が続いている。北条、優李、阿頼耶の三名とは幼馴染みで、優李とは親友という間柄である。
父親が抱えていた借金問題を阿頼耶によって解決してもらい、救われたことがある。
阿頼耶に対して強い恋愛感情を抱いており、ダンジョン遠征の際に阿頼耶を失ってから二ヶ月ほどが経った今も彼のことを想っている。
阿頼耶を失ったことで精神的に弱った途端にアプローチが増えたことに辟易としており、優李と相談して周囲とは一線を引くことにした。
現在は王都アルバの広場で【勇者聖杯】の練度を高める意味もあって、治療のボランティア活動をしている。
佐々崎鏡花
長いストレートの黒髪に泰然自若とした笑みと一七歳とは思えない大人の女性といった雰囲気が特徴的な少女。優李と同じく吊り目だが、彼女とは違って勝気なイメージはなく、クールビューティーという言葉が似合う。
アストラルに召喚された四〇人存在する一六代目異界勇者の一人で、勇者シリーズのユニークスキルの【勇者氷結】を獲得している。
ダンジョン遠征の際には阿頼耶とパーティを組んでいたが、黒龍が現れて絶望した時に彼に助けを求めてしまい、結果として阿頼耶を死なせてしまう。そのことを気に病み、阿頼耶の幼馴染みである優李と紗菜には好きに動いてもらって、自分はクラスメイトたちのことを一手に引き受けることにした。
北条康太
流行に合わせてセットした髪に、爽やかな印象を与える端正な顔立ちをした少年。地球では成績優秀でスポーツ万能、教職員からの覚えもめでたく女子生徒からの人気も高い。いつも周囲に女の子がいて、読者モデルもやっていた。
アストラルに召喚された四〇人存在する一六代目異界勇者で、その中でも上のランクの『円卓の勇者』に分類される一三人の一人。『光の勇者』の称号を持ち、聖剣『エクスカリバー』を使って戦う。
才能に恵まれ、何をやらせても人並み以上にこなせるため、これまで挫折らしい挫折をしたことがない。そのせいか、今のままでは魔王討伐なんて夢のまた夢なのに、自分なら魔王を倒せると信じて疑っておらず、みんなは自分が守ると豪語している。
自己主張が強く、誰にも相談せずに何でも一人で勝手に決めてしまう傾向がある。
ダンジョン遠征の際に遭遇した黒龍によってトラウマを抱えて引きこもったクラスメイトたちを外に出すためにケアを行っている。
谷良哉
短い髪を掻き上げた、細身で長身の少年。地球では立川、工藤、藤堂と一緒になって阿頼耶を虐めていた。
アストラルに召喚された四〇人存在する一六代目異界勇者で、その中でも上のランクの『円卓の勇者』に分類される一三人の一人。『美しき手の勇者』の称号を持ち、勇者シリーズのユニークスキルの【勇者美手】を獲得している。
ダンジョン遠征で阿頼耶が死んでからは優李と紗菜の二人と親密な関係になるべく積極的に関わろうとしているが、肝心の二人がそんな彼の下心を見抜いて一線を引いているため、満足な結果は得られていない。
リリア・メルキュール・オクタンティス
オクタンティス王国の第一王女。ウェーブがかった長い瑠璃色の髪と目をした少女。年齢は一七歳で、阿頼耶を含めたクラスメイトたちをアストラルに召喚した。三大巫女姫の一人である『召喚の巫女姫』であるため、召喚魔術以外の魔術は一切使えないが、召喚魔術に関しては右に出る者はいないほどの知識量と腕前を持つ超一流の召喚師でもある。
勇者の召喚には反対していたが、父である国王カーエルが強行したことで【勇者召喚の儀式】を執り行う。そのことに罪悪感を抱いており、特に巻き込まれて召喚された阿頼耶のことは、召喚されてすぐ冷静に状況を確認していたこともあって気にかけている。
手違いで召喚された四一人目である阿頼耶の安全を確保するために動いていたが、カーエル王の命令によって身柄を拘束・投獄された。何もできないままダンジョン遠征が行われることになり、阿頼耶が死亡したことを知る。二ヶ月が経った現在はシュナイゼルによって洗脳作業が行われており、反発していた最初の頃とは打って変わって今では従順になってしまっている。
シュナイゼル
オクタンティス王国に仕える宮廷魔導士で、長い黒髪に泥沼のような濁った目をした、豪華なローブに身を包んだ男性。召喚された一六代目異界勇者たちの魔術指導を行っている。ダンジョン遠征で阿頼耶を殺害するために魔水晶の準備や、それを使う内通者を仕立て上げたりしていた。
宮廷魔導士という地位にいるが、その実、邪神教の司教であり、今代の異界勇者たちと接触するために何年も前からオクタンティス王国に潜伏していた。
ダンジョン遠征の後は一六代目異界勇者から上質な負の感情を集めるべく暗躍し、その一環でリリアの洗脳作業を続けている。




