第78話 文化祭 ~ その5~
文化祭はこの回で終了です。
次回からは、またあちらの世界の話になります。
ようやく話が動き始めそうです。
文化祭二日目も問題なく終わらせ、三日目の午後となった。最終日は結果発表や全校的なイベントが控えているため、各模擬店の営業は午後二時で終了となる。
「ありがとうございました!若様!お姫様!」
終了時間となった二時、革鎧姿の生徒達が入口から出ていく客に挨拶をしていく。最終日の最後の営業であるため、本来フリーの生徒も入口の外で並んで挨拶していた。
その顔には達成感が現れていて、終日大盛況だったことを伺わせた。実もそのうちの一人であり、準備段階からあちこち駆けずり回った成果を感じ取っていた。
「ミノル、後片付けはこっちで戻しておくから、皆と一緒にイベントを見てくればいいよ」
ディバインがそう言ってくれたが、実にとってはイベントよりも仲間たちと早く片付けを済ませる方が大事と取り合わず一緒に片付けを行った。その結果、ほとんどのイベントには参加できなかったが、結果発表には全員が参加する事ができた。
「では、文化祭総合順位上位三組の発表です!」
料理対決以来出番がなかった放送部の名物パーソナリティーの絶叫が響き渡る。やはりこういう時には必要とされているようだ。
「では三位!山岳部の峠の茶屋!ここはいつも強いですね!」
山岳部の部長が壇上に上がり、指定の位置に立つ。一位まで発表の後、そのまま表彰まで行うためだ。
「続いて二位!二年異世界留学科、騎士喫茶!今回は本物の甲冑を使っての斬新なアイデアでした!」
実達のクラスは二位であった。皆に押された実行委員が、緊張した面持ちで壇上に立つ。
「それでは、栄えある一位!三年一組、劇『王国英雄伝』!これは異世界留学科の留学先であるベアル王国のお話でしたね」
一位は異世界留学科ではなく、普通科が行った異世界の劇であった。しかも主役は嗣治(勿論名前は変えてあったが)の殆ど事実の劇であったようだ。
これは三年の異世界留学科に友達がいる一組の生徒が異世界で人気のある演目を聞き出し、アルテリア監修のもと作り上げたものであったため、登場人物にリアリティがあり、こちらでもかなり受けたようであった。
「今回は趣向を凝らした模擬店や展示が多く、上位三組の差も大きくはありませんでした。また、四位以下のクラスやクラブも大変興味深い催しで甲乙つけるのが大変でした」
校長が総評を話、表彰も行われる。異世界ものを普通科に使われた異世界留学科の面々は、来年はもっと異世界っぷりを表に出して行こうと心に誓うのだった。
「今回は二位だったけど、来年は一位をとるぞ!」
「応!」
片付けも終わった教室で、二年異世界留学科の生徒達が決意を新たにジュースで乾杯する。勿論ディバイン達も一緒だ。今回裏方にいたユーリーは浩一郎にくっついてジュースを飲みながら他の女生徒達と話をしている。料理対決の時は得意でなかったが、今回はきちんとできたことで上達の秘訣を女生徒達が聞いているようだ。
「上達?コーイチローに食べて欲しかったから」
「やはり男か!胃袋を掴む為の努力か!」
彼氏のいない女生徒達にはあまり参考にならなかったようだ。なお、その間浩一郎は苦笑いでごまかしていたが、ユーリーとの交際は否定しなかった。親にも気に入られているらしいユーリーは胃袋だけでなく外堀も埋めていたようだ。
また、洋子はディバインと話し込んでいた。向こうでのミハルの生活態度を聞いていたようだったが、普段神殿に居るミハルと騎士見習いとして騎士団にいるディバインとでは学院以外の接点が少なく、あまり収穫はなかったようである。
サフィアスは何人かの女生徒達と楽しく談笑していたが、どうやらお友達止まりで終わりそうだった。
こうして文化祭は全て終わり、冬休みに皆の心は飛んで行っていた。その前の定期試験には全力で背を向けて。
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