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第76話 文化祭 ~ その3~

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 事件が起きたのは、実と早苗のシフトが終わった午後二時くらいであった。


「おぅ、騎士なら剣とかもってんじゃねぇのかよ」

「こんなちゃちい鎧で、よく騎士なんて言ってられるなぁ」


 他校の男子学生であろうか、少々ガラの悪い客がよりにもよってディバインに絡んでいた。

 ディバインも笑顔がひきつるほど怒っているが、今はまだ我慢できている。


「若様、他のお客様のご迷惑になります。どうかお静かにお願いします」

「ぎゃはははは、若様だってよ。騎士なら俺らをちゃんと守れよ」


 その発言の直後、ガチャ、という音と共に現れたのは入口に立っていたフルプレートメイルの騎士だ。

 まさか中に人間ゴーレムだがが入っていると思わなかった男子学生等が驚く間もなく、威圧感たっぷりに顔を彼らに近づけ睨むかのように見回す。

 まるでなまはげが「悪い子はいねえがぁ」と言いそうなその状況に耐えきれなくなったのか、男子学生達はそそくさと教室から出て行ってしまった。それを見送ったディバインは、フルプレートメイルの騎士を見て礼を言う。


「一郎だっけ?ありがとうな」


 礼を言われたフルプレートメイルの騎士ことゴーレムの一郎は、軽く頷くとまた入口に戻っていった。だが、普通に立っていてもつまらなかったのか、何故か次郎と一緒に寺院の入口にある金剛力士像のようなポーズをし始め、通行人を驚かしていた。勿論戻ってきた実に叱られたのは言うまでもない。

 だが、このポーズのおかげで中に屈強な人間が入っていると思われ、それから変に絡む輩が出てくることはなかったのだった。




「で、何で母ちゃんとミハル様と一緒なの?」

「それはヒマだからなのです」

「校内、良く知らないから…」


 実は早苗と二人、校内デートかと思いきや、アルテリアとミハルも一緒にくっついてきた。まるでハーレム状態だが、一人は母親だし、もう一人は可愛らしいとはいえ神様だ。早苗が不機嫌にならないか心配な実だったが、意外と早苗はこの状態を楽しんでいた。

 早苗にしてみれば、ミハルは同盟者だしアルテリアはいずれ義母になる人だ。仲良くしておいて損はないし、そんな下心がなくても一緒にいて楽しい同性の友人なので問題はない。


「実君、ミハル様、こっち美味しそう」

「そうだね」

「そうですね、入ってみましょう」


 自然と早苗が仕切って実はついていくような形になっていっていたが、それに実は気付かない。時々ミハルが実の方をちらちら見ているが、それにも気付いていないようだ。アルテリアはそんな息子達を後ろから見て、「鈍感なところは父親似なのです」と呟きながらついて行っていた。


 入ったところは山岳部の茶店だった。喫茶店ではない。出すのはお茶とぜんざい、水羊羹だけだ。だがこのぜんざいと水羊羹が人気が高く、午後の早い段階で売り切れになるので有名だった。


「ぜんざいと水羊羹、それぞれ四つお願いします」


 実が部員に注文する。普通科の部員は「このリア充め」みたいな目線で実を射た後に注文を復唱すると、一旦下がっていった。

 実はその視線に気付きはしたものの、今更だ。女性陣へのナンパ回避役と割り切るしかないか、と開き直るしかなかった。


「今日は王も来られるそうですよ」

「そうなのです?」

「ええ、何でもこちらに用事があるとかで、それが済み次第合流できればとおっしゃってました」

「何の用事だろ?でも合流できたらいいね」


 ミハル様から嗣治がこちらに来る事を知った三人は、何等問題とは思わなかった。特にアルテリアは、こちらで会うことが殆ど無いため楽しみにしている様子が窺える。

 暫く他にも世間話(主に向こうのだが)したりしてまったりと過ごし、他の教室を回ろうと席を立つ。

 一旦様子見に騎士喫茶をしている教室に戻ると、ゴーレム達が仁王像のポーズをとっていたので実が叱りつける。だが、他の同級生から事件のあらましを聞き、飾りとして立たせて置くよりも動きがあった方が良いとの周囲の意見から、仁王像ではなく片方は腕を組み、もう片方は片膝をついた形に落ち着いた。

 勿論その後も一郎と次郎は細かくポーズを変え、客や通行人の目を楽しませてくれた。


「で、いつの間に父ちゃんいたんだよ」

「さっきだ。あまり時間はないが、一緒にまわるぞ」


 いつの間にか嗣治が合流していた。どうやら用事とは校長との話だったようだ。その嗣治、一国の王とは思えぬ安物のスーツ姿であった為、異世界留学科の他の生徒には気付かれずにすんでいたようだった。

 結局騎士喫茶に入って近況を報告しあい、落ち着いたところで再度各教室を見て回ろうという事になった。そして、騎士喫茶を出たとこでミハルが聞いたことのある声が聞こえた。


「あれ、ミハルちゃんじゃない?」

「本当だ!おーい、ミハルちゃん!」

「あ、菊池さん、合志さん」


 二人の他校の女子生徒がミハルを見つけて駆け寄ってくる。この二人は以前洋子と買い物に行ったときに会った中学時代の同級生だ。


「美晴君ってこっちに転校したらしいって話を聞いたから見に来たんだけど、どう探してもいないんだよね。ミハルちゃんは知ってる?」

「う、うん、何でも長期留学であちらの世界にいるって聞いてるよ。珍しい研究だから、なかなか戻れないんだって」


 菊池の質問に、以前から考えられてた設定を答えるミハル。実際は目の前にいるんですとは言えない。

 そこへシフトが終わった洋子がやってきて、ミハルは洋子達とまわることになってしまった。だが、その案に嗣治がストップをかける。


「女の子ばかりだとナンパとか心配だろう。うちのバカ息子とディバインで良ければ、ボディガードとして連れて行っていいぞ」

「お、(王って言うな!)おう…」


 嗣治がその場に居合わせたディバインが王と言いそうになるのを小声で黙らせ、外人イケメンにきゃあきゃあ言ってる他校コンビを含めた学生組に提案する。

 結局、学生組と嗣治・アルテリアは別行動をとることになり、夫婦は腕を組んで人混みの中へ消えていくのだった。


ここまで読んで頂きありがとうございます。

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