第73話 お風呂同盟 ~ その2~
迷宮、お風呂と視点をキャラ固定にしてみましたが、次回から第三者視点に戻します。
色々試してみたいんですが、文才がなくて…。
「早苗さん、ありがとうございます」
「いえ、どういたしまして」
私が湯船に入ると、ミハル様が礼を言ってきた。そこまでの事はしていないが、折角お礼を言ってくれたことだしありがたく受けておく。お湯は少しぬるめで長く入れるようにしてあるので、暫くおしゃべりしてものぼせることはないからちょっとお話ししよう。
「ミハル様、こちらは慣れました?」
「うーん、だいぶ慣れましたけど、カーラさんが常に一緒なので自由になれる時間があまり取れないのがちょっと辛いですね。贅沢な悩みなんですが」
プライベートな時間があまりないのは確かに辛い。カーラさんに、それとなく伝えておきましょうか。
「早苗さん、ミノルさんのお嫁さんになるんですか?」
「え、ええ、今はそのつもり。両親にも紹介したしね」
「そうですか。ミノルさんは王子ってところを除いても良い人ですから、頑張ってくださいね」
「はい」
ミハル様が突然話を変えてきた。実君はこちらの世界では優良物件と言ってもいい。地位も王子だし、顔も悪くない。性格も優しいし、文武両道だ。改めて考えてみるとチート主人公だね。これは他が放っておかないわけだ。
「それにしても、ミノルさんは羨ましいです」
ミハル様が、小さな声で呟く。ミハル様は望んで女の子にも神にもなったわけではない。そんなミハル様から見ると、チートな実君は羨ましく思えてくるのだろう。
「その分、アルテリア先生に鍛えられているようですよ。家事があまり得意でない先生に代わって家事をやったり、魔力制御は小さい頃からやらされたりしてたそうです」
「そうなんですね。やっぱり努力も必要なんだ」
そう、実君は努力家だ。普段はそんな風に見えないけど、やるべき事はしっかりやっている。剣術もたまにうちの道場に通ってみようかと考えたくらいだ。
結果としては、時間が取れずに通うのを諦めるしかなかったけど、その分こちらで王国兵相手に稽古をしている。実際に盗賊や魔物と戦っている兵士達は、道場で稽古している人達よりも実践的で強い。私も一緒に稽古しているけど、五回に一回は負けそうになることもあるのよね。流石は近衛騎士団副団長のマクスウェルさんが鍛えているだけのことはある。
「努力だけでもないのよね。彼、勉強は授業と簡単な予習復習だけで十分だって言ってたし」
「うぅっ、やっぱりチートだ」
「まぁ、うちの学科は学問の神に加護をもらえるから、効率が良くなるのは確かなんですけどね」
「何それ。ウラヤマシイ」
「神様が別の神様に加護ってできるのかなぁ」
「今度知識の神に聞いとかなくちゃ」
ミハル様はあちらでの成績はごく普通だったそうなので、そっち系の加護には興味深々だ。でも、神様って頭の出来は人だった時と変わらないのかな?
「そういえば、神様って恋愛とかするの?」
何気なくミハル様に聞いてみたら、何故か顔を真っ赤にして俯いてしまった。これは、恋をしているの!?
「もしかして…」
「神には寿命とかないから、恋愛は禁止じゃないけどあまりしない方が良いってアマテラス様から聞いた。
でも、今の気持ちは何だかよくわからないの」
そっかー、寿命かぁ。結婚しても寿命が無い神と人とじゃ人の方が先に死んじゃうもんね。寿命の長いエルフとかでも同じだけど、異種族間での結婚は中々大変らしいとは聞いている。
「で、相手は誰?」
「…怒らないでね。ミノル君なの」
「そ、そうなんだ…」
怒りはしないけど、何とも言えない気分にはなる。同じ人を好きになった者として、先程のエールは自分にけじめをつけたかったのだろうけど、本心ではやっぱり好きという気持ちを否定できないでいるみたい。ここでかける言葉はこれかしら。
「怒らないよ。怒ったら自分を否定しているみたいだし。
こっちでは重婚も認められてるから、一緒にお嫁さんになろうよ」
こうして、私たちの間では「実君にこれ以上お嫁さんを増やさないようにする同盟」が組まれた。勿論、実君には内緒ね。
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次からは学生生活秋の風物詩になります。




