第69話 迷宮へ行こう ~ 宣言 ~
前話を67話で投稿していました。
既に修正済みですが、誤解された方はすみませんでした。
「で、これがダンジョンのコアですか」
何とかコアを見つけ出したミハル様からそれを受け取った俺はその球体を手にすると、魔力を注いでみた。コアはそれに反発することなく、吸収をしている。アマテラス様が「解呪」を行い、調教師とコアの間にあった主従の契約が解除されたのを確認して、調教師に聞いた。
「おい、このコアは自然のものなのか?」
「それは言えないね」
捕えた男はそう答えると、それ以上は何も言わないつもりか、口を閉じてしまった。先程の失言が堪えたのだろう。ちっ、学習しやがって。だが、こちらとしてはそれでも構わない。
「めんどいから、転移しましょうか」
「そうですね、賛成です」
ミハル様の提案に、早苗さんが賛成する。以前聞いたが、旅の行程はともかく風呂に入れないのがちょっと嫌なんだそうだ。
「で、ゴーレム達はどうします?」
「あ、忘れてた」
そう言えばゴーレム達がいたんだった。折角作ったんだし、暫く城で守衛の仕事でもしてもらおう。学校の警備員でもいいかなぁ。
そんな俺の考えを読んだのか、早苗さんに「学校の警備員に五人は多いと思うわ」なんて言われてしまった。
「取り敢えず、城には連れて行くよ。こいつらも仲間だ」
「そうね、それは賛成」
「ああ、いいんじゃないかな」
というわけで、捕縛した男とゴーレム含めて総勢十一名が王城へと転移した。
「そうか、人為的なものだったか」
「はい、全てはこの男が知っております」
俺は謁見の間で、父ちゃんを前に今回の事件の説明を行っていた。いつもと違う口調なのは、この間に居るのが俺達だけではなく、国のお偉いさんや貴族達も居たからだ。
国のお偉いさんは俺の素性を知っているのが大半なので問題ないが、貴族連中の中には俺やミハル様を知らないのもいる。変な誤解を招かない為にも、今は一冒険者として接することになっていたのだった。
「ミノルとやら、その話は本当なのか?」
貴族の一人が俺に質問してくる。この男は俺の事だけじゃなく、ミハル様の事も知らないんだったな。
「はい、こちらに居られます時空担当紳のミハル様により、転移罠であることを確認されております」
「何、時空担当紳だと!?確か時空担当紳は男ではなかったか」
「それは前の担当です。先々月よりミハル様に交代されております。この街では知らぬ者が居らぬほど有名ですが」
「そ、そうなのか」
自分の領地に引きこもって、情報の収集を怠ったツケだと思うよ。俺はそんな事を思いつつ適当に返事すると、今度は別の貴族が発言を求めてきた。
「ミノルとやら、こちらでは滅多に聞かぬ名だが、王と関係があるのではないか?」
ふむ、この貴族はちゃんと情報を収集した上で確認をとっているのか、それとも発言通り名前だけで判断したのか。顔を伺うが、あちらさんはポーカーフェースを貫いているようで判断がつけられない。
「うむ、ついでだから発表しよう。このミノル、余の息子で来年は王太子となる予定だ」
王の発言に周囲がざわつく。これまで子供の存在は公になっていなかったから、仕方がないのかもしれない。
「因みに、既に王妃となる女性も決めておる。あちらの世界では一夫一妻制度だから、側室は特に設ける予定はないぞ」
あぁ、この発言はちょっとありがたい。未婚の王子が居るとなると、貴族連中からの縁談が引っ切り無しに舞い込んでくるからだ。
ちらりと早苗さんを見ると、王妃という言葉に固まっていた。そこまで考えてはいなかったみたいだね。
先程の貴族を見ると、一見驚いたように見えたものの、俺と目が合うや、一瞬ニヤリと笑った。これは知っていたな。後で父ちゃんに聞いておこう。
ざわつきはまだ収まらず、中には俺のことを睨んでいるやつもいる。こいつらは、俺を王太子としては認めたくないのだろう。それは今の王も心では認めていないという事になる。魔族至上主義なのだろうな。これで王妃となる人が魔法を苦手としているなんて知られたら、どんな横槍を入れてくるか分からない。ちょっと注意しておくことにしよう。
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