第67話 迷宮へ行こう ~ 迷宮踏破 ~
なかなか話が進まない…。
誰かアドバイスください。
ラスト五十階層のボス部屋前まで到達したが、皆の疲労はあまり抜け切れていなかった。いくら敵が見つからないとは言え、周囲への警戒を怠れなかったからだ。これは一旦休憩を入れた方が良いだろう。
「ちょっと待ってて。今壁を作るから」
俺は術式を展開し、三方に壁を作る。残る一方は迷宮の壁を利用するので、俺達の周りには壁で囲まれた格好だ。
更に一郎の魔石に魔力を流し込んで、探知魔法を常時展開、顕現してもらう。範囲は壁から五メートル程度で大丈夫だろう。
次郎と三郎にも魔力を補充して警戒に当たってもらうことにし、俺達は休憩に入った。
「多分、次がラストだ。敵は数で来るかもしれないし、強力な魔物数体で来るかもしれない。兎に角、俺は全力で戦うから、早苗さんは俺のフォローを、ディバイン、サフィアスは後方監視。
ミハル様は、転移罠が見つかった場合の解除をお願いします」
「「「「了解」」」」
事前準備はっと、後これを忘れていたな。
「そうそう、コアは破壊しないように。迷宮をなくすのはちょっと勿体ないからね」
「え勿体ないってどういうこと?」
冒険者は採取依頼と討伐依頼をメインに受けて行動するが、魔物を狩って素材を売って生活費の足しにするものがいる。ここの迷宮は下位の魔物が主なので、比較的ランクの低い冒険者でも狩ることは可能だ。
そのため、低ランク冒険者の研修用迷宮として活用できれば良いのではないかと考えたことを質問してきた早苗さんに答える。
「冒険者の底上げに利用するのね。それなら了解したわ。でも、調教師は排除しないとね」
「勿論。できれば殺さずに捕まえて背後関係も探りたいけど、多分想像通りのところだろうな」
そんなことを話しつつ十分な休憩をとった俺達は、ボス部屋の扉を三郎に開けさせた。
それはボス部屋からの襲撃を予想しての事だったが、予想は外れて襲撃はなく、全員ボス部屋の中へ突入することができた。
「意外と静かだが…」
「いや、いるぞ。壁際に多数。ディバイン、障壁を顕現させて。次郎と三郎は扉が閉まらないように入口の警戒を。早苗さん、サフィアスは俺と一緒に殲滅を。ミハル様は、転移罠とコアの場所を探ってください」
「了解、顕現したぞ」
「「了解」」
「わかった、時空魔法でこの階層を探ってみるよ」
サフィアスは障壁を顕現させ、ミハル様は時空担当神としての能力をフル活用して転移罠とコアの場所を探し始めた。
俺は早苗さんとサフィアスに防御魔法で防御力向上を行うと、剣を抜いて近くの魔物たちへと切りかかっていった。
どうやら魔物はケルベロスが三十、オーガキングが五十程度居るようで、そのままではかなり苦戦しそうだ。ここはやはり半分以下に数を減らそう。
「ちょっと待機しててくれ。数を減らすよ」
俺はいつもの絶対零度魔法の術式を展開、敵右陣を覆うように顕現させる。敵は体が急に動かなくなったのに気付いたが、この魔法が顕現した時点で既に逃れる術はないのだ。
普通の魔術師だと、一体に顕現させることすら難しいところだが、幸い俺には膨大な魔力がある。全部は無理でも、半分くらいはこうして対処できる。
動かなくなったケルベロス達に火魔法で衝撃を与えてバラバラにしたところで、新たな闘いの始まりだ。
「左、来るぞ!気を付けて!」
俺はこれ以上魔力を使う必要のない絶対零度魔法を破棄し、氷の剣を多数顕現させて左側に投擲する。某英雄王みたいに魔力で操作しても良かったが、早苗さん達に当たらないように操作するのは大変だし、必ずしも命中させる必要もない。
要は敵に一斉攻撃させなければ良いのだ。
案の定いくつかはオーガキングに命中し、倒すことはできなかったものの他との足並みは揃わなくなっている。ケルベロスには当たらなかったようだが、回避することで少し遅れが生じたようだ。
「この部屋の先に転移罠が二つあるよ。更にその先にコアがあるけど、人もいるみたい」
「転移罠は封印お願いします。あと、コアだけ別空間に転移できません?」
「うん、やってみる」
ミハル様も、神として初仕事なだけに真剣だ。どうやら他の神から課題を出されたらしく、今回の依頼をきちんと達成しないと補習があるのだそうだ。
「よし、できた!」
ミハル様が嬉しそうに叫ぶのと同時に、魔物達の動きが止まる。迷宮内の魔物はコアが創り出したものだから、コアがなくなれば存在できない。
今はまだ魔素の残滓があるから止まっただけだけどね。
「さて、この依頼を完遂させますか」
俺達は、ボス部屋の先へと進んでいった。
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