第65話 迷宮へ行こう ~ 四十階層ボス部屋前の闘い ~
何とか投稿できました。
「結局この階層まで転移罠は無しか…」
今居るのは四十階層のボス部屋前。本来ならワイバーンがいるはずの部屋の前だ。だが、ワイバーンは既に三十階層で出現している。この階層で出てこない事はないだろうが、他にも居るのは間違いないだろう。
ワイバーン以外にも注意するよう伝え、重厚なドアへゴーレムを向かわせる。
カチッ
三郎がドアの前に来たところで、スイッチの入る音がした。罠だ。
「くっ!探査魔法でもわからなかった!」
三郎へ、床から雷撃が襲い掛かる。痺れ罠の一種だが、普通の人間なら感電死してもおかしくない強さの雷撃だ。だが、三郎はゴーレム。雷撃如きではやられはしない。
「敵だ!後方からオーガキングクラスが六体!しかもボス部屋のドアも開くぞ!」
探査魔法に、急に反応が出てくる。これは、コアが配置換えして待ち伏せていたのか。普通、コアそのものにはそこまでの知能はない。やはり調教されているし、調教したやつも指示を出すために同じところに居る可能性が高い。
後方の六体はディバインとサフィアス、そして一郎に任せて俺と早苗さんはボス部屋の敵に備える。次郎はミハル様の護衛だ。
「グルル…」
ボス部屋から現れたのは、ケルベロス三体だ。この三つ首の犬は全長が三メートルくらいあり、強さは後方のオーガキングを超える。通常は、一匹倒すのに上級の冒険者が数十人で対処しなければならない魔物だ。母は簡単に倒していたらしいが、比べてはいけないのだろう。
取りあえず三郎を起点にケルベロスに向けて障壁を展開、顕現させる。これで少しだけ時間が稼げるはずだ。
「ガオゥ!」
一体のケルベロスが三郎へと肉薄するも、障壁に阻まれる。それを理解したのか、残りの二体は左右に散開して障壁の範囲外から襲おうとするが、障壁は通路を塞ぐように展開したので奴らは障壁を壊すしかない。
一瞬戸惑ったケルベロス達だが、すぐに方針を決めたようで、なんと魔法で攻撃をしてくるようだ。三つの首それぞれの口にバスケットボール大の火球が顕現すると、障壁に向けて飛ばしてきた。
だが、その程度の火球が何発当たっても障壁はびくともしない。左のやつは水球でくるようだが、それも問題ない。右の方は、何か黒い靄のようなやつだな。あっちは気を付けた方がよさそうだ。
「奴らの魔法攻撃が障壁に着弾したところで障壁を後ろに顕現し直す。三郎は中央のやつを足止めしろ。早苗さんは左を頼む」
指示を出した直後に水球と黒い靄が障壁に着弾する。やはり水球は障壁へのダメージが殆ど無いが、黒い靄の方は障壁の魔力が少し吸い取られたようだ。
俺が障壁を一旦解除し、背後に再度顕現させる。更に三郎と早苗さんには、薄い防御膜を顕現させて防御力を上げた。これで多少攻撃を受けても大丈夫だ。
「動きの早いお前らには、これだ!」
俺は幸い幼い頃から鍛えられていたおかげで、この辺り一面を自分の魔力だけで満たせる程度の量はある。ある程度おおざっぱだが、早苗さんと三郎の周り以外を魔力で満たし、ケルベロス達のところだけ魔力を徐々に濃くしていけば魔力でケルベロスを拘束することもできる。
「ガ、ガゥ!?」
気づいた時には遅く、ケルベロスの動きはかなり遅くなっている。それを早苗さんが首を落とし、三郎は首の骨を折っていく。
三匹のケルベロスを倒した事を確認し、今度は後ろのオーガキング達に目を向ける。三十階層では俺の魔法で倒したが、本来オーガキングも騎士団の中隊単位で対峙しなければならない強力な魔物だ。ディバイン達だけで凌げていれば良いが…。
「オラオラァ!ディバイン次だ!」
「応!」
そこには風の結界をオーガキング達の周囲に顕現させて閉じ込め、一匹ずつ一郎が引きずり出す。それをサフィアスが狩っていっていた。一郎、オーガキングの首をつかんで風の結界から無理やり引きずり出す程の力があったんだ。
ディバインは風の結界を維持しつつ、一郎がオーガキングを捕まえて引きずり出すところだけ弱くしている。かなり魔力の制御に長けていないと無理なのだが、ちゃんとできているようだ。
「ボス部屋前でこんなに疲れるとは…。休憩したいが、そうすると向こうも準備を整えてくるだろう。このまま行こうか」
無事にオーガキング達も倒した俺達一行は、開いたままの扉を通ってボス部屋に入っていった。
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