第63話 迷宮へ行こう ~ 対盗賊戦後 ~
前の話数を間違えていました。
既に修正済みです。
「迷宮の罠?そんなもん、迷宮なんだからいくらでもあるだろう」
盗賊団のリーダーがあざ笑うかのように言う。少しイラッときたが、こいつらが迷宮内を網羅していれば、何らかの新しい情報が得られるかもしれない。
「迷宮内の盗賊と言っても低階層に巣食っているやつらだから、あんまり深いところの情報なんてないんじゃないの?」
早苗さんのおっしゃることもごもっとも。ほら、リーダーも目が泳いでる。
「まぁ、知ってることだけ教えてもらえればいいんだけど、教えてくれないなら、ここに埋めてくしかないかなぁ」
「い、言う!知ってることは全部言う!だから…」
「見逃すことはできないけどね。埋めるのはなしにしてあげよう」
今居るのは盗賊団が根城にしていた広場だ。ここに土魔法で盗賊団のメンバーの数分穴を堀り、その上に魔力で網を作り、盗賊達はその上に手足を縛って立たせている。
穴の深さは約二メートル。骨折とかするような深さではないが、手足を縛られている以上落ちたら出られない。
こうして、盗賊達から低階層の情報を得ることができた。大した内容ではなかったが、気になることもあった。
それは、半月ほど前に罠の配置が変わったという事だ。
迷宮では、基本的に罠の配置が変わるということはない。基本的にというのは、迷宮を管理している「コア」と言われるものが、まれに罠や出てくる魔物の配置を変えることがあるからだ。
だが、それも数百年に一度程度の頻度でしかないし、新たな罠を作り出すことはなく、配置を変えるだけだ。
「もしかすると、時空転移の罠を人為的に配置されたためにコアが他の罠の配置を変えたのかもしれません」
ミハル様が、神妙な顔をして言う。
これは神達の間で共通事項となっている情報なのだそうだが、コアは大気中に微量に存在する魔力を吸収する魔法生物の一種で、吸収した魔力を元に迷宮を作成し、自分自身を守っているのだそうだ。
そこへ異物である時空転移の罠が置かれた事でコアが反応し、罠の配置を変えたのではないかと考えられるという事だった。
因みに、大気中の魔力は、人や魔物から自然と漏れ出すものや、魔法を顕現させたときの余剰魔力により常にいくらか存在している。
人が「吸収」により大気中から吸収するには、あまりにも量が少ないために無視されてはいるものの、存在はしているのだ。コアは、その魔力を長い年月をかけて吸収しているのだろう。
「なら、配置したのは迷宮ではなく人だという事か。半月前の記録を調べれば、何かわかるかな」
「いや、この迷宮は基本的に出入り自由だから、記録は残っていないんじゃないかな」
俺の質問に、サフィアスが答える。彼はこの迷宮に関して色々情報を集めてきているようだ。
それもそうか。記録とってたらこんな盗賊達が根城なんかにしないもんな。
「それじゃ、時空転移の罠の位置は不明なままという事で。ミハル様に頑張ってもらうしかないみたいですね」
「そうだね、僕、頑張るよ」
ミハル様が両手をぐっと握りしめながら言う。その姿はとても可愛らしく、盗賊団を前にほっこりとした気分にさせられる。
この人、元は男だったんだよね?
そういうわけで、いくつか判明した罠を地図に書き足し、俺達は更に先に進むことにした。
盗賊達はこの広間をそのまま檻にして閉じ込めてある。武器や防具は全て先ほどの穴に埋めてしまったので、逃げることもできないだろう。
「まぁ、俺達が死なないように祈っててくれ」
「…っくそっ!」
本当は死んで欲しいが、そうすると自分達も死ぬはめになるから、何とも言えない気分なんだろうな。
念のため、四郎と五郎を盗賊達の見張りに置いて、俺達は先に進むことにした。迷宮探索は始まったばかりだ。冒険者から聞き取った場所以外にも、存在している可能性もあるし、先程の話にもあった通り配置換えが行われているかもしれない。
「もう他には盗賊はいないと思うけど、魔物は出てくるから気を付けて行こう!」
俺が発破をかけると、皆力強く頷いた。
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