第61話 迷宮へ行こう ~ 迷宮へ入ります ~
またもや遅れてしまいました。
1年前のペースに戻るのはいつの日か…。
「お前達、迷宮は封鎖中だ。許可なく入る事はできん」
迷宮入口に着いた俺達の前には、封鎖の依頼を受けた冒険者がいた。
ちょっと尊大な態度だったが、彼等にギルドからの依頼書を見せると態度を一変させた。
「し、指名依頼ですか」
「あぁ、だから通らせてももらいますね」
「だが、依頼書には五人となっています。そっちの五人は?」
「あれは俺が作ったゴーレム達ですよ」
「うむむ、なら仕方ないです。
お通しますが、中で起こった事に責任は持てないので注意してください」
「あ、そうそう、昨日ここの案内をしてやるって胡散臭い奴らがいたんだけど、しってます?」
俺が昨日の奴らについて話すと、冒険者の顔がゆがんだ。
「そいつらは迷宮の中に巣食っている盗賊ですね。本来封鎖しているから出てこれるはずはないんですが、だれか買収されているようです」
「そうか。無理はしなくて良いが、可能ならだれが買収されているかを調べといてもらえるとありがたい」
「勿論ですとも。依頼を遂行する上で信用をなくす行為は許せません」
この冒険者も良い冒険者のようだ。俺はその冒険者に礼を言うと、迷宮に入っていった。
「よし、ここからはゴーレムを先頭にして次に俺、隣に早苗さん。
次にミハル様で、最後尾はサフィアスとディバインに頼む」
「「「「了解!」」」」
フォーメーションを決めて、迷宮内を進む。
魔力を張り巡らす探査魔法も使うが、迷宮内は入り組んでいるので、イマイチ探査魔法の精度が上がらない。
それでも無いよりはマシなので、だいたい一キロくらいの半径で探査魔法を顕現させながら移動を続けるが、魔物もこの階層では殆ど出てこないようで、まだ探査魔法にもかかってこない。
「このまま行ける所まで行こう。ミハル様、六時になったら教えてください」
「ん、了解」
ミハル様が、左手につけた腕時計を見せて返事してくる。
何でも向こうの世界にいた時から愛用していた時計で、色々加護を付与した結果、壊れない、狂わないというだけでなく、装着者が念じるだけで対象の場所の時刻も分かるというおまけ付きだ。
「!魔物を感知した。これはゴブリンだな。先ずはゴーレム達に任せてみよう」
全員が了承し、しばらく先に進んだところで、探知したゴブリン三体が現れた。
素早く実がゴーレム達に指示を出す。とりあえずは一体で相手をさせることにし、残りはゴブリンを逃がさないように包囲するというものだ。攻撃するゴーレムは「一郎」と名前をつけ、包囲するゴーレム達にはそれぞれ「次郎」「三郎」「四郎」「五郎」と名前をつけた。やはり実にはネーミングセンスが無いようだ。
因みに、ゴーレムには武器を持たせていない。これは下手に武器を持たせなくても、ゴーレムのスペックなら格闘だけでそれなりの強さを持っているのと、実自身が双剣以外の武器の使いに習熟しているわけでもないので、うまく指示を出せないからだ。
「ギャギャッ!」
ゴブリンのうち一匹が棒切れを振り回しながら一郎へと突進してくる。一郎はそれをひょいと躱すと、その頭に軽くジャブを打つ。
「うん、スペック的にはそうなってもおかしくなかったけど、ちょっとグロいな」
ジャブ一発で頭を消し飛ばされたゴブリンが倒れこむのと、一郎が次の獲物へ肉薄するのはほぼ同時だった。
信じられないものを見たという感じのゴブリン二匹は一郎のパンチに対応できず、あっという間に自分達の地だまりへ沈んでいく。一郎が戦闘を終わらせたところで、他のゴーレム達はその場に待機し、我にかえった実達はゴブリンの魔石を取り出すため、凄惨な現場へと足を進めるのだった。
その後もゴーレム達をメインに、ゴブリンやグレイウルフ等の低級魔物をサクサク倒しながら迷宮を進んでいく実達。既に階層も四層まで到着し、その中間付近まで到達していた。
「どうやら、例のやつらが来そうだな」
「やっぱり居たのか。どうするよ?」
「人数によるんじゃないかしら。十人くらいならゴーレム達でも対処できるんじゃない?」
「うーん、探知魔法では強さまではわからないからなぁ。でも、大丈夫だと思うよ」
昨日絡んできた盗賊達が、探査魔法に引っかかってきたのだ。その数は約二十。十人どころかその倍はいる。だが、実はゴーレム達の実力と、自分も含めたパーティの実力から盗賊達と戦闘になっても問題ないと判断した。
「ゴーレム達は壁側で気配を消せ。早苗さんは俺の左後ろで戦闘体制に、サフィアスとディバインはミハル様をお守りしてくれ」
「「「了解!」」」
ゴーレム達が薄暗い迷宮の壁にうずくまるようにして気配を消し、実達が戦闘態勢を整えた頃に、新たな敵が姿を見せるのだった。
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