第57話 リンの異世界見聞録~その7~
ずいぶんと空いてしまって申し訳ありません。
リアルの方落ち着いてきたので、次回からは以前のペースに戻れるかと…。
「では、リン、そろそろ戻ろうかの」
「…うん」
ナーダさんはリンちゃんを迎えに来たのが目的らしく、リンちゃんにその事を告げていた。リンちゃんはちょっと名残惜しそうな顔をしていますが、やっぱりお母さんのそばに居たいのか、うなずいています。
「あっ、これ」
リンちゃんが百均で買ったリボンを、一本私に差し出してきました。
「おねーちゃん、ありがとう。今度はおねーちゃんがこっちに遊びにきてね」
「こっちこそありがとう。いつかそっちに遊びに行くね」
そうです。リンちゃんが買ったリボンは、こちらでお世話になった人へのプレゼントでした。私も何か贈りたかったのですが、流石に今日帰るとは思わず、何も用意していません。
「本当は私からもプレゼントしたいところなんだけど、用意してなくてごめんね。今度会う時には用意しておくね」
「うん!」
これで、向こうに行ったときの癒し枠ができました。いや、ミハルも癒し枠なので、増えたと言った方が良いでしょう。思わず顔がにんまりします。
「そういえば、ミノル達は明日か明後日にはこちらに戻ってくるそうじゃぞ」
「そうなのです?
随分と時間がかかったのです」
「仕方がないであろう。国内とはいえかなり外れの方であるし、時空担当神を無事に護衛せねばならぬ。だから、その殆どが往復の時間じゃ。戻ってきたら労ってやれ」
「分かったのです」
木葉君と伊倉さんも、無事に帰ってくるそうです。ミハルのお仕事のお手伝いという事でしたが、ちゃんと終わらせられたのでしょうか。ミハル、ドジっ子だからなぁ。
「ん?そのリボン、ちょっと見せてくれない?ああ、そのままでいいよ」
いつの間にか現れた間の神様が、私が受け取ったリボンを見て言った。
「ふむ、リンちゃんは付与が得意のようだ。このリボンには竜の加護が付いているよ」
「え?どういう事ですか?」
「リンちゃんに直接聞いた方が良いね。リンちゃん、このリボンに付与与えたでしょ」
聞かれたリンちゃんも驚いている。無意識のうちに付与していたようだ。
「おねえちゃんたちにまたあえますようにって、リボンにおねがいしただけだよ?」
そのリボンから目を離す事なく、間の神様が呆れたように呟く。
「その『お願い』で、この効果か。湯前よ、このリボン、決してその身から離すでないぞ」
このリボンに一体どんな効果があるというのでしょう。
「知りたそうな顔だね。このリボンには、状態保持、防御力倍増、限界突破の付与がされているよ。状態維持はこのリボンが破けたり、汚れる事がないようにだろうね。防御力倍増は、あなたの防御力を倍にする。たとえ全力疾走状態から転んでも傷がつかないはず。限界突破は、RPGゲームにおける各種ステータスのリミットがない状態という事だね。つまり、あなたは頑張れば才能以上の能力を手に入れる事ができるという訳なんだよ」
なんというチート。ちょっと怖くなってきます。他の人が盗んで悪用とかしないかしら。そこへ、間の神様が更に続けます。
「しかも、このリボン、持ち主の元へ自動で転移するようになっているね。盗まれたり強奪されても大丈夫というわけだ」
うん、大体予想はついてました。こうなったら、もうずっと身につけておくのは決定です。私の髪はセミロングくらいなのですが、中途半端なポニーテールのように後ろで括ってみました。姿見が校長室にあって良かったです。
「おねーちゃん、にあってる!」
「そうじゃの、似合っておるぞ」
リンちゃんとナーダさんが褒めてくれました。今日からはずっとこの髪型にすることにしましょう。
ふと、リンちゃんの手には、他にも何本かあったのを思い出して聞いてみる事にしました。
「リンちゃん、他には誰にあげるのかな?」
「ミノルおにーちゃんと、早苗おねーちゃん、そしてミハルおねーちゃん!」
やはりその三人ですか。女性二人はともかく、木葉君は身につけるのに困りそうですね。
「さすがに時間じゃ。戻らねばならん」
ナーダさんの言葉で、はっと我にかえります。二人の後ろには、先程までなかったはずのドアがありました。
「それじゃ、おねーちゃん、こんどはこっちにあそびにきてね」
「うん、絶対行くね」
二人はドアを開け、戻っていきました。約束守るためにも、来年は絶対に向こうへ行かなくちゃね。
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