第56話 リンの異世界見聞録~その6~
仕事が忙しくて大変遅れてしまい、申し訳ありません。
次回はもうちょっと早く投稿できると思います。
「ほう、ここは何でもあるのじゃな」
ナーダさんは、百均のお店で感心した様に呟いています。
「ここのは安いのが売りなんですよ。その代わり、品質は少し落ちますけどね」
「いや、これだけの物がある時点で向こうより上じゃぞ。品質もそうじゃ。これなんぞ向こうだと銀貨一枚はいくじゃろ。おぉ、リンはこれが欲しいのか?」
「あぃっ!おかーさん!」
リンちゃんが持ってきたのは、色とりどりの可愛らしいリボンだ。彼女の黒い髪にも良く似合うだろう。そういえば、ナーダさんとリンちゃんは親子だけど、顔のつくりこそ似ているものの、髪と目の色が違います。こちらは父親である木葉君のお父さん似なのでしょう。そう言えば木葉君も黒髪、黒目ですね。
「リン、おねーちゃん達にもプレゼントするの!」
「おおそうか、良い事じゃな」
ほんと、微笑ましいですね。考えてみれば、あまりこういうところには連れて行ってなかった気がします。知識をつけさせるだけじゃなくて、こういうところに連れてきても良かったかな?
「洋子は買い物はしなくてよいのです?」
「あ、はい。今日は見て回るだけで十分です」
アルテリア先生も、何か買っているようです。あ、赤ペンです。テストの採点用なのでしょうか。
「さて、他に行きたいところはあるのです?」
お店を出たところで、先生が皆に聞いてきました。と言っても、もう時間も時間ですし、買い物をする余裕はありません。
「時間も時間ですし、食事はどうでしょう?」
「そうじゃな。何ぞ美味いところが良いぞ」
「それでは、食事にするのです。洋子は家に連絡しておくのです。親御さんに心配させてはいけないのです」
「はい、分かりました。で、どこに行くんですか?」
「行きつけのカレー屋さんがあるのです。ちょっと離れているから、バスで向かうのです」
一時期、カレーにトラウマができたそうですが、そこのカレーでリハビリできたそうです。一体どんなカレーでトラウマになるんでしょう?
「では、行くのです!」
見た目は私とあまり変わらないアルテリア先生は、力強く宣言するのでした。
「いらっしゃい」
アルテリア先生お勧めのカレー屋さんは、カウンター席しかないこじんまりしたお店でした。なんでもマスターが一人で全てをやるので、これ以上大きくしても手が回らなくなるそうなんです。
「マスター、いつものなのです」
「はいよ。そちらは何になさいます?」
「うーん、お勧めってあります?」
壁のメニューには、ルータイプのが一種類、肉ベースのドライカレーが一種類、野菜(玉ねぎ)ベースのドライカレーが一種類と計三種類のカレーと、「本日のパドレの一皿」と書かれたメニューが数種類あります。初めてなので、マスターいやパドレに訊ねてみました。
「初めての人には、トリプルをお勧めしています」
どうやら、トリプルがお勧めらしいです。三種類全てのカレーが味わえるのは、確かにお得ですね。
「では、私はトリプルで」
「そっちの二人もトリプルでいいのです?」
「まかせる」
「あいっ!」
というわけで、全員がトリプルを食べることになりました。しばらくして運ばれてきたのは、皿に盛られたご飯の上に二種類のドライカレー、その周りにルータイプのカレーが盛り付けられています。これは確かに美味しそうです。
「では、頂きますなのです」
アルテリアさんは、早速スプーンでご飯とルーをひとまとめに掬いあげると、口へと運び始めました。私もまずは同じように食べてみます。
「あ、美味しい」
カレーは、他のお店と違って、フルーティな味がします。これはオリジナルのカレーなんですね。ちょっと強面なマスターの方を見ると、顔を綻ばせてこちらを見ています。
「どうですか?」
「とっても美味しいです!」
「それは良かった」
その後、アルテリアさんがほぼ毎週来ている事、「パドレの一皿」はたまに変わる事を教えて頂きました。その間にドライカレー二種類も味わってみましたが、肉ベースも野菜ベースも大変美味しかったですね。特に野菜ベースは癖になりそうです。
「ごちそうさまでした。また来ますね」
私達は、再度訪れる事を約束して、お店を出るのでした。
ここまで読んで頂き、ありがとうございます。
ご意見、ご感想、評価等お待ちしております。
あと、今回出てきたカレー屋は実在するカレー屋さんです。
「竜田口 カレー劇場」
でググってみて下さい。




