第50話 リンの異世界見聞録~その1~
ようやく本編も50話になりました。
どこまで続くかはわかりませんが、エタらないように頑張って続けますね。
「というわけで、あちらさんの許可ももらえました。」
「そりゃあ良かった。それじゃ、うちから何か向こうへ贈り物でもしとこうか。」
「それは良い考えなのです。ついでに親同士で会うのも良いかもなのです。」
最近ちょくちょく行くようになったベアル王国王城の一室。嗣治、アルテリア、実、ナーダ、リンの五人がくつろぐ中、先日のご挨拶の件を報告した実に、嗣治とアルテリアが嬉しそうに今後の話を始める。ナーダも早苗は気に入っているし、リンも懐いている。二人にとってもこの話は悪い話ではないようだ。
「あと、一人ミハル様のご友人でこちらへの行き来ができるようにしたいそうなんだけど、方法って知らない?」
「あぁ、その件ならミハル様と間の神様との間でなんとかなったようだ。ただ、そのために転校が必要だとは聞いたがね。」
「そっか、解決済みならいいや。」
神様間で話がついたのなら、特に問題ではない。基本的に自分の出る幕は無いであろう。実はそう判断し、この件については忘れることにした。後にその判断を後悔する事も知らずに。
「行き来と言えば、リンに一回向こうの世界をみせたいのじゃが、良いであろうか?」
「多分ミハル様は大丈夫と言うだろうけど、間の神次第じゃないかな。」
「明後日に戻った時にでも聞いてみるのです。でも、一回くらいなら大丈夫だと思うのです。」
「リン、楽しみです!」
まだ王城の外にも出たことのないリンが、期待でいっぱいの顔をしている。
「そうか、楽しみか。じゃあ、絶対許可をもらってこなきゃな。」
実はそう言うと、リンの頭を撫でながら今後の予定を再度確認するのだった。
「では、リンは一週間だけこちらの世界で過ごす事を許可します。ミハルさん、復唱を。」
「リンは一週間だけ、そちらの世界で過ごす事を許可します。」
高瀬川高校校長室。ミハルと間の神が、リンに触れながら許可の言葉を紡ぐ。それを見守るのは高瀬川校長、アルテリア、実、早苗、そして転校してきたばかりの湯前洋子の五人だ。
元々洋子に間の神の加護を与える予定だったので、ついでにリンに一時的な滞在許可の儀式もやってしまおうという事になったのだ。因みにリンは一時滞在の為、加護ではなく許可という形になっている。
「あの、あの子は?」
「あぁ、湯前さんは話聞いてないのよね。あの子はリンちゃんっていうの。人に見えるけど、上位竜の子なのよ。今日から一週間、こっちで色々勉強するんだって。」
洋子の疑問に、早苗が答える。訳あり転校生のサポート役をアルテリアに仰せつかったのもあるが、異世界留学科でも一部しか知らない秘密を共有する者達の一員として妙な連帯感を感じているのもあるようだ。
「竜、ですか?」
「うん、そう。あの子のお母さん、ナーダさんっていうんだけど、とっても綺麗でカッコイイの!王城で会えるから楽しみにしててね。」
「は、はあ…。」
色々突っ込みたい気持ちをぐっと堪え、洋子は返事をした。洋子はこの先、一度向こうの世界に行って基本的な事を学ぶ事になっているのだが、その時に何を教わるのか、少し不安になる。
「さて、リンちゃんの許可も終わったし、湯前さんの加護付与も終わったので、今日はこれまでとしましょう。アルテリアさんと実君はリンちゃんのお世話を宜しくね。」
校長の締めの言葉で、今日のところは解散となるのだった。
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