表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
53/97

第49話 仕合

今年最後の更新です。

「武器は木刀、寸止めで。一本勝負でいいな。」

「はい。」


 道場に案内された実は、既に剣道着に着替えた大悟から説明を受ける。伊倉家の道場は試合の面が四面はとれそうなほど広い。実は壁に掛けられた木刀から小太刀を二本つかむと、それぞれ片手で振って感触を確かめた。


「では、準備ができたらこちらへ。」


 早苗に促され、中央に向かう。お互い防具はつけていない。つけたところで木刀の衝撃には耐えられない事がわかっているからだ。そのかわり、寸止めルールなので高い技量が必要になる。それを許すということは、大悟も実の実力をある程度察しているようだ。


「それでは、はじめ!」


 審判は静江がするようで、早苗は三人から少し離れたところへ移動した。

 大悟は太刀を肩から真直ぐ上に構えた八双の構え、実は小太刀二本を両手に持ち、左側を前に半身の体制になる。左手の小太刀は大悟の喉に向け、右側の小太刀はぶらりと下げたままだ。


「来い!」

「はいっ!」


 大悟の誘いに乗り、すり足で近づく実。間合いは明らかに向こうの方が長いが、懐に潜り込めればほぼ実の勝ちだ。だが、大悟も簡単に入れさせるつもりがない。

 大悟の間合いに入る直前で、実は直線的に近づくのをやめ、大悟の周囲を右回りに回り始める。速度も少しずつ上げていく。


「っ!」


 全周の三分の一程を回ったところで、実が突っ込む。体は半身で左が前のまま、足もすり足で滑るように大悟へ迫る。

 大悟はそれに慌てることもなく、半歩前に出つつ肩口の太刀を振り下ろす。

 実はそれを左の小太刀で外側へ受け流すと、右足を前に出して右半身の構えに変えて右の小太刀を斜め下から大悟の胴へ叩き込もうとする。

 太刀を受け流されて体勢が崩れた大悟であるが、そのまま実の左後ろへ抜けると、今度は正眼の構えで構えなおす。


「もう一度来い。」

「はい。」


 正眼に構える大悟と、先程と同じく左半身で左小太刀を正眼に、右小太刀を体に隠すように構えた実。しばらく対峙し、息を整えると、また突っ込んでいく。

 今度は左半身から右足を前に出して右半身になり、体の回転を使って右小太刀を突き出す。大悟はそれを冷静に弾き、右手の小手を狙ってすっと前に出てくるが、それを左小太刀が脇から防ぎ、そのまま左半身に体勢を戻す。


「全力ではないが、これ以上は止めておこう。」

「はい。」


 大悟がそう言って構えを解くと、実も構えを解いた。どちらも様子見しかしていないが、それでも多少の腕はわかる。大悟は、実の剣の実力がかなり高い事を理解した為、今日のところは止めておく事にしたようだ。もちろん剣の腕と早苗との交際は別であるが、道場で一緒に稽古をさせながらであれば変な事も起こらないだろうと考えていた。


「とりあえず、早苗と付き合うのなら、うちに稽古しに来なさい。あぁ、月謝とかはいらないが、基本的に早苗と会うのは道場と学校だけにしてくれるとありがたいな。」

「はい?」

「お父さん!」


 大悟は早苗が可愛いあまり交際を認めたくはないのだが、乗り気な静江と早苗の手前、断るわけにはいかない。なので無理難題を出して断らせようという魂胆だった。だが、その企みも静江の一言で崩れ去る。


「勿論稽古しに来てくれるのは嬉しいけど、二人でたまに遊びに行くのもいいわよ。

 ね、お父さん。」


 底知れぬ静江の迫力に、ついに折れる大悟だった。



ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

つたない文章ですいませんが、来年も頑張って更新していきますので、ご意見、ご感想、評価、ブックマークお待ちしてます。m(._.)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ