ex003 ミハルさんの里帰り ~その2~
年末は仕事が忙しくなって、なかなか書き溜めも進まなくて困ります。
美晴と洋子は、市内のショッピングモールに来ていた。ジャス○ですら撤退するような田舎だ、遊ぶ所は限られる。
「ホント、坂本君に似てるわねぇ。双子じゃないの?」
「坂本君、女顔だったから、女の子になったらどんな感じか興味はあったけど、実際良く似た女の子見ると、破壊力あるわね。」
「そ、そうですか。」
「ほら、ミハルちゃんが困ってるでしょ。」
「洋子ったら、坂本君の家の近所だからってミハルちゃんを独り占めしちゃダメじゃない。」
そして、ソッコーで前のクラスメイト女子生徒達に確保されていた。どうやら彼女達は美晴のファンクラブを作っていたようだ。勿論美晴はそんなものがあったなんて知らなかったし、知りたくもなかった。
「それで、坂本君はいつこちらに戻ってくるの?」
「そうそう、『美晴君を見守り隊』としては、それ知りたいわよね。」
一体どんな隊だ。そう突っ込みたいのを我慢して、それについては知らないと答える。
「それじゃ、またねー。」
何とか見守り隊の魔の手から脱出した美晴と洋子は、服飾コーナーに来ていた。
「ミハルちゃん、ちゃんと下着も買っときなさいよ。」
と、洋子に言われたからだ。これ迄はブラもパンツもあちらの世界のものを身に着けていたが、どうもそれじゃダメらしい。身体のラインがどうとか、可愛らしさがどうとか言われたものの、半分も理解はできなかった。
「僕にはレベルが高過ぎて、入るのも怖いんだけど。」
「大丈夫よ。私も一緒に選んであげるから。ところで、ブラのサイズとかも知らないんじゃない?」
「うん、測った事もないよ。」
そんなやり取りがあったものの、なんとか下着売り場での買い物は終了させる事ができた。美晴としては予想外の出費であったが、確かに必要なものではあるので仕方がないと諦めもついた。洋子の方はというと、美晴の下着姿を見る事ができて顔がにやけっぱなしであった。
「次はどこに行こう?」
美晴が洋子に聞こうと振り返った時、視界の隅にここ最近良く会っていた人物を見つけた。そう言えば、彼の母親は教師だったから、学校から程近い教職員住宅に住んでいてもおかしくない。
「実君、買い物?」
「あ、ミハル様「様はダメ」ミハルさんですか。そちらも買い物ですか?」
「うん、そう!あ、洋子ちゃん、こちらは高瀬川高校の木葉 実君。実君、こっちは僕の幼馴染の湯前洋子ちゃん。」
「初めまして。木葉 実です。」
「此方こそ初めまして。湯前 洋子です。」
実と洋子が互いに挨拶を交わす。洋子の方は、明らかに警戒の色が濃い。
「あぁ、早苗さんとも一緒なんですよ。もうすぐ来ると思いますが。」
「早苗さんと一緒という事は、デートですか!やりますねぇ。」
「ま、まぁそんなところです。」
そこへ早苗が戻ってきた。手ぶらなのは、その分の荷物も実が持っているからだろう。実の持つ袋の数は、男性が買い物するにはちょっとファンシーなものも含まれている。
「実君、お待たせー。あら?ミハルさ「様はやめて」さんと、其方の方は?」
「あぁ、ミハルさんの幼馴染で湯前 洋子さんという方。湯前さん、こちらは僕の同級生で伊倉 早苗さん。」
「初めまして、湯前 洋子です。」
「此方こそ、伊倉 早苗です。」
女性二人の挨拶は、そこまで警戒されずに交わされた。実は先程の挨拶との違いに首を捻りながらも、女性同士だからかなぁと一応の結論を出しておき、そのまま放っておくことにした。
「私、もっと美晴君、いえ、ミハルちゃんと一緒に居たいんです。でも、こちらでの生活もあるから、向こうで生きていく訳にもいかなくて…。どうしたら良いでしょう?」
「うーん、それが解決出来たら、ミハルさんのご両親ももっとミハルさんに会ってると思うよ。今のところは月イチで帰ってくるのに合わせて会うしかないんじゃないかなぁ。」
「それか、実君みたいにこちらと向こうでそれなりの立場に立つ事かな。ただ、あまり重要なポストだと、ミハルさんと同じようにこっちに戻れなくなっちゃいますけどね。」
思い切って洋子が切り出した願いに、うーんと頭を悩ませながら答える二人。実は王の息子ではあるが、生活基盤がこちらであり、王妃であるアルテリアがこちらにいる為に大問題にはなっていない。だが、本来王子が国にいないというのはあり得ない事なのだ。ついでに言うと、しょっちゅう行き来できるのは、ベアル王国というこちらとの接点を持つ国の王の頼み事だし、ミハルの件の後始末というのもあった。所謂特例というやつなのだ。
「とりあえず、間の神様には良い方法がないか聞いておくよ。でも、あんまり期待しないでね。」
「いえ、ありがとうございます。ところで、御二方は随分ミハルちゃんと仲が良いみたいですが、そんなに頻繁に会われているのですか?」
そこで、改めて召喚事故の事、ベアル王国で神としての仕事を引き継ぎながら、魔法学院へも通っている事、隣国への旅の事を話した。洋子は簡単には説明をされていたが、改めて第三者から同じ内容の説明を受けると、やはりこの事は特殊な出来事で、それでも保護されたのがこちらの世界との接点がある国であるというのは幼馴染としても有り難いものであった。
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