第46話 ダルマンとの決着と森の戦闘
お待たせしました。
書き溜めは全然進んでいませんが、投稿します。
「それじゃ、開けるよ。」
「うん。」
実が一際豪勢な扉を開けようとするが、鍵がかかっているようで開かない。
「んー、仕方ないね。」
言うや否や、風魔法で扉を丸く切り取る。中には風の刃を散らさないあたり、魔力制御は絶好調らしい。
「ダルマンさん、来ましたよ。」
「こ、こっちへ来るな!」
「何言ってるんですか。あんたが呼んだんでしょ。」
先日の恐怖が甦ってきたのか、既にダルマンはガタガタ震えている。実はそれを見てにやりと笑うと、新たな術式を展開する。
「どうやら、寒くて堪らないようですね。暖かくしてあげましょう。」
そう言いながら、掌に顕現させたのは炎の塊。但し、この炎は他へ燃え移るほどの熱を持たせていないため意外と安全だが、そのような事は他人にはわからない。ダルマンは、自分が焼き殺される未来を想像してしまった。
「ひぃっ!」
更に情けない声を上げるダルマン。部屋の物陰にも護衛を潜ませていたのだが、早苗が峰打ちで気絶させたために打てる手もなくなってしまっていた。
「そう怯えなくても良いんじゃないかな。自業自得なんだから。」
完全に悪役な実。もうノリノリだ。半分おふざけな実とは対象に、ダルマンの方は生きた心地がしないらしい。生まれたての仔馬のようにプルプルしているが、全く可愛らしくない。
「うーん、そうだ。」
実は何か思いついたようで、ダルマンの目の前に歩いていくと見下ろした。手にはアルファンケル侯爵の紋章が入った短剣が握られ、侯爵と関わりのある者である事を示している。この短剣は、友好の証としてナーベステアルから実個人へと贈られたものだ。
「お前は、俺達の任務を知らないから傍若無人な振る舞いをしたようだが、これを本国が知ったらどうなるかな?」
確かに、聖王国本国が知ったらただではおかないだろう。実達の方だが。しかし、そこまでダルマンに言う必要はない。散々聖王国上層部に関係あるように脅した挙句、もし自分達の事が話題になったらダルマンのせいとまで言い切った。その間、早苗はあきれたような顔で、そのやり取りを眺めていた。
「今後、俺達の邪魔はするな。」
「は、はいぃ!」
その返事に満足した実達は、部屋から出て行こうとして、足を止めた。そしてゆっくりダルマンの方を向くと、柔かに言った。
「ぶった斬った扉の修繕、宜しく。」
「は、はいぃ!?」
なかなか鬼畜な実であった。
「ふう、もうすぐだね。」
「そうだな、こいつらを片付けたらすぐだな。」
実達の周りには、様々な魔物の死骸が転がっていた。そして、更に多くの魔物が実達に襲いかかってくる。
「森の中とは、少しは考えたな。」
見通しがあまり良くなく、近郊の住人にとっては恵みとなるこの場所は、範囲魔法で一気に殲滅するわけにもいかずに一匹若しくは数匹単位で狩っていくしかなかった。
「ちょっと探査魔法やるから、その間フォローお願い!」
実は素早く術式を展開すると、半径五百メートルの円内に探査魔法を顕現させた。
「こっちだ!」
これだけの種類の魔物だ。複数人が一つの魔法を顕現させる『儀式魔法』でもなければ、操れる筈がない。実はそうあたりをつけて儀式魔法の術式を探査魔法で探した結果、今いる場所から二百メートルくらいのところで儀式魔法の魔力を感知した。
「実君!左後ろ二匹!」
探査魔法のために動きが止まってしまった実を諦めたとでも認識したのか、オークとゴブリンが実の左後ろから襲いかかる。オークが力任せに振り回す剣を双剣で受け流すと、ゴブリンの方へ蹴り飛ばす。二匹がぶつかって体勢を崩したところへ、更に双剣で切りつけて止めをさした。
「一気に決める!早苗さん、こっちに!」
実は新たな術式を展開して自分と敵を屠って駆け寄ってきた早苗の周りに結界を構築すると、儀式魔法の上空にも術式を展開した。それは、魔法使いにとっては悪夢のような魔法。『魔力奪取』により魔力を奪われ、更には奪った魔力で敵へ攻撃までするというものであった。なお、見た目は真っ黒な球体である。
「うん、一応無力化できたかな。早苗さん、行こうか。」
実が儀式魔法と、それを行っていた魔術師達を無効化したのを確認すると、結界と魔力奪取の魔法を解除する。そして、彼らを捕縛するために移動を開始するのだった。
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