第41話 宿場町にて~その2~
ブクマ評価ありがとうございます。
最近書き溜めが進みませんが、最低週一での更新頑張ります。
「うーんと、喫茶店はこっちだっけ?」
「そうね、さっき見た喫茶店はそっちだったと思うわ。」
商業ギルドを出た二人は、喫茶店へと向かった。あのまま居ると、メモ帳とボールペンに商人が群がってきて、まともに話せないと思ったからだ。
「あ、あそこだね。」
「そうみたいだ。席は…空いているみたいだな。」
喫茶店はそこそこの混み具合だったが、運良く二人席が一つ空いていた。そこに座ると、実はお茶を、早苗はフルーツジュースを頼んでメモ帳を取り出した。
「やっぱり、聖王国では相場が上がってるね。」
「カナディ王国は変化無しですか。先日のも合わせると、カナディ王国は完全にこちらの味方ですね。」
「そうだねぇ。こうなると、今回のお使いは責任重大だね。」
「そうね、頑張ってね、王子様。」
「ぶふぁっ!やめてくれよ、王子様なんて柄じゃないや。」
王子とも思えない吹き出し方をして、実が抗議する。早苗はそれを軽く受け流すと、ストローからジュースを少しテーブルにこぼし、指で矢印と「ずっとこっち見てるけど、ただの冒険者でも無いみたい」と日本語で書いた。
「うん、あれはベアル王国の密偵だね。ガン見してるわけでもないのに早苗さんも良くわかったね。でも、ちょっと声をかけるのも良くないから、メモを渡すことにしよう。」
実はメモ用紙にこれまでの経緯と、今後の予定を簡単に書いて小さく折りたたむ。そして、トイレに行くふりをして密偵の脇を通り抜ける際に、それを周囲に分からないように渡した。
「それじゃ、出ようか。」
「うん、あと行くところあったっけ?」
「軽く露店でも見て回ろうか。」
「賛成!」
と言う訳で、二人は露店が集中している中央広場へと向かって行った。
「あ、このアクセサリかわいい!」
アクセサリを扱っている露店で早苗が見つけたのは、ペンダントだった。花の形に作られた銀の飾りの中心には、くすんではいるが緑色の小さな宝石がはめ込まれている。
「どうだい、お嬢ちゃん。今なら銅貨一枚だ。」
「うーん、どうしようかなぁ。」
「そっちのは彼氏かい?これはお買い得だよ。」
「それじゃ、頂こうかな。はい、銅貨一枚。」
「はいよ、良かったねお嬢ちゃん。彼氏に買ってもらえて。」
「は、はい。」
早苗は顔を真っ赤にして、俯いている。実も彼氏呼ばわりされてかなり緊張していたが、一緒に俯いているわけにもいかず、やはり顔を赤くしながらも露店のおっさんにお金を払う。おっさんはニヤニヤしながらも、これ以上冷やかすような事もなく、二人はそのまま露店から離れた。
「あ、ありがとう。」
「いや、いいよ。それに、そのペンダント、意匠も良いけど、その宝石も良いからね。銅貨一枚は本当にお買い得だったよ。」
そう言って、ペンダントの宝石に指を触れると、術式を展開して宝石へ向けて顕現させる。すると、魔法は顕現せず、その代わりに宝石のくすみが取れて鮮やかな緑色へと変わっていった。
「この状態で魔法攻撃を受けると、自動的に障壁を張ってくれるように術式を転送した。それなりに魔力も込めたから、不意打ちにも十分対処できると思うよ。」
「そうなんだ。本当にありがとう。できるだけ、そんな事態にならないように気をつけるね。」
早苗が嬉しそうに礼を言う。それに照れる実の二人は、周りの独り者から(爆発すればいいのに)などと思われているとも知らず、いつの間にか手まで繋いで他の露店を見て回り、いくつかの串焼きとジュースを購入した。串焼きは何の肉かは聞かなかったが、地球のものとは違うのは確実だろう。食感としては豚肉っぽかったので、オークの可能性が高かった。また、ジュースは赤みがかった黄色のジュースで、柑橘系かと思いきや、ベリー系の酸味が少し強い味がした。
「さて、あとは宿に戻って、明日からまた移動か。」
「そうね、早く済ませて、たまごが孵るのに間に合わせましょ。」
「そうだったな。じゃ、戻りましょうか。」
宿には二人で一室しか取れてない事をすっかり忘れた状態で、戻っていくのだった。
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