第32話 ヴィント伯爵
書き溜めが進みません…。
ちょっと更新ペースが落ちますが、一週間を超えないよう努力はします。
「ここはカナディ王国との境にあたる街で、ヴィントというところです。領主は街の名前と同じくヴィント伯爵ですね。」
盗賊達を実が作った檻車に詰め込んで、この日の目的地ヴィントに到着した嗣治が、馬車の面々に説明した。そう言えば、カナディ王国には先触れを出しているが、道中の貴族達には連絡が行っているのだろうか。
「あの、既にヴィント伯には先触れが出ておりますので、門番よりしばらくお待ち頂くよう要請を受けております。」
盗賊達を門番に引き渡した護衛隊長が、嗣治に連絡する。ヴィント伯は以前は嗣治のお目付け役をしていたこともありちょっと苦手としていたが、本心で語り合うことのできる数少ない「身内」の一人でもあった。
「そうか、では、しばらく待つとするか。」
「それじゃ、俺は街中を…。」
「そうはいくか。全員一緒だ。あぁ、早苗さんはミハル様の護衛、カーラはミハル様付きの女官と言うことになっているから。」
「「はいっ。」」
四、五分程たったであろうか、どうやら伯爵の部下が到着したらしい。扉の外が騒がしくなってきている。
「ツグハル王、お久しゅう御座いますな。」
予想通り、ヴィント伯自身がやってきたようだ。
「あぁ、今日は世話になる。それと、こっちは息子のミノル、そして此方が新しい時空担当神のミハル・サカモト様だ。」
「ミノルと申します。宜しくお願いします。」
「前任の担当神より、指名されましたミハル・サカモトと申します。宜しくお願いします。」
「新たな神ですと?一体何が起こったので?」
「それについては、神々の中でも機密扱いになっているようです。我々には教えて頂けませんでした。」
実際、前の担当神は管理の不手際のせいでミハルに押し付けて逃げたため、何故かというのは聞けてないのだ。だが、そこまで周知する必要はない。
「そうでございますか。では、本日は我が屋敷でごゆるりとおくつろぎ下さい。」
「かたじけない。そうさせて頂こう。」
「では、明日にはカナディ王国へ参られると。」
「そのつもりだ。本当はゆっくりしたいところだが、あまり時間をかけてられん。」
深夜、ヴィント伯と嗣治は、ヴィント伯の私室で酒を片手に今後の予定等とりとめのない話をしていた。嗣治としては、この実力者と懇意にするのは当然だったし、ヴィント伯にしても王家との繋がりは最重要なものであったからだ。
「それにしても、ミノル坊ちゃまもご立派になられましたな。」
「まぁ、まだまだだがな。アルテリアの教育のおかげだよ。」
「ふむ、なれば、やはり留学制度は有効であると。」
「そう言うことだ。留学生達には両方の世界の良いところを身につけ、王国だけでなくこの世界をより良くしてもらいたいものだ。」
「そうでございますな。」
「あと、ミハル様でございますが。」
「あぁ、彼女は元は向こうの世界の人間だ。しかも男だったそうだ。」
「!」
「召喚事故で女性になってしまい、バレて他の神からの叱責から逃れようとした担当神が代わりに押し付けたというのが真相らしい。真相は本当に聞けてないし、彼女も知らないからわからないんだよ。」
「そうでございますか。」
「勿論、向こうの世界に居る身内との面会は済ませてある。神だからずっと向こうに居る訳にはいかないが、たまに戻るくらいは大丈夫だろうとは向こうの神から聞いている。」
「では、あとは…」
「召喚事故を起こした奴らの処罰だな。ミハル様は国の法の範囲内での罰で良いとおっしゃられた。だが、召喚術そのものが死罪相当だ。」
「では今回も死罪と?」
「だが、ミハル様というか、日本人は基本的に人が死ぬのを嫌う傾向にある。向こうでは平和だったからな。なので、死罪は無しだが、何らかの罰は下さなければならん。」
「そうでございますな。」
「城で会議もしたが、良い案が出なかった。良ければ考えておいてくれないか。」
「わかり申した。我が部下にも命じて何か良い案がないか考えさせましょう。」
教育が隅々まで行き届いているのか、かなり優秀な部下が揃っている事が自慢のヴィント伯が、嗣治に提案する。その申し出をありがたく受けた嗣治は、この後もヴィント伯とこれからのベアル王国について大いに語り合ったのだった。
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