第31話 盗賊出現
書き溜めが進みません。(´・ω・`)
仕事も進みません。(´・ω・`)
街道を、一台の馬車と七騎の騎馬がのんびりと進んでいる。それを林の中から眺める男が三人居た。
「なかなか良い馬車じゃないか?」
「そうだな。護衛も七騎と少ないしな。」
「それじゃ、お頭に知らせてくる。お前達はもう少し見張ってろ。」
「「了解!」」
そんな盗賊どものやりとりを直接見たわけではなかったが、嗣治には確たる予感があった。馬車に馬を寄せて、実に窓を開けさせる。
「申し訳ありません、ミハル様。この先、盗賊が現れそうです。」
「は?盗賊ですか?」
「ええ、先ほど、右手の林の方からこちらを窺う気配を感じました。多分盗賊の見張り役だと思われます。ですので、この先の切り通しで前後から挟み撃ちにするものと思われます。」
「ええっと、対策とかは…。」
「大丈夫ですよ。ここいらの盗賊程度なら、こちらの護衛のうち三人もいれば十分です。」
護衛の騎士が、無茶言うなという顔をするが、仮にも自分達の王がそう言ってくれるのだ。その言葉を嘘にしてしまってはいけない。なお、嗣治はミハルを最初「サカモト様」と呼んでいたが、ミハルが固辞したため、今では「ミハル様」と呼ぶことになっている。
「しかし、ベアル王国にも盗賊って出るんですね。」
「こればっかりは…。なんとかしたいんですけどねぇ。」
ベアル王国は今も内乱の復興真っ最中だ。人手はいくらあっても足りない。盗賊達を更生させて定職に就かせるという試みはずっと行われているが、それでも盗賊達がいなくなるわけではなかった。
「実、どうだ?」
「うん、この先に十人、切り通しの手前に八人潜んでる。」
「わかった。そこの二人、前方に向けて術式の展開を行っておけ。やつらが出てきたら、一斉に顕現させろ。」
「はっ!」
騎士の一人が返事をする。彼が、この護衛隊の隊長なのだろう。配下の騎士達が術式を展開するさまを、ミハルは馬車の中から眺めていたが、ある事に気がついた。
「魔法って、呪文とかじゃないんですか?」
「あぁ、この世界は神や精霊にお願いして力を借りるという形ではないからですね。こちらでは、魔法とは、魔力を使って術式を展開し、イメージを顕現させることを言うそうです。これについては魔法学院でも習えますので、楽しみにしておくと良いですよ。」
実が補足する。嗣治の息子である彼も、強力な魔法が使えるそうだ。
「早苗さん、可能性は低いけど、万が一がある。準備をお願いするよ。」
「わかったわ。」
早苗は、今回は太刀と小太刀の二刀を準備してきた。父親から今回のために譲り受けたものだ。外での戦いは太刀で良いが、室内や馬車の中のような狭い空間では小太刀の方が小回りが利いて使いやすい。護衛という役目柄、屋外屋内どこでも対応できなくてはいけないので、この二刀は早苗にとってありがたいものであった。
「よし、開始!」
盗賊が前から現れたところで、前方に術式を展開していた騎士二人が、土魔法による石つぶてを顕現させる。可能な限り殺しはしないという方針だった為、あまり強力なものにはしなかったようだ。そのせいで、何人かは倒れたものの、四人の盗賊が剣を振り回しながらこちらに駆けてくる。
「ふん、確かにこれでは三人で済むようですな。」
騎士の一人が剣を抜き放って同僚に言う。同僚の方も剣を抜いて盗賊達へ駆けていく。
「ちっ!死ねやぁ!」
盗賊が剣を振り下ろすが、騎士はそれを軽くかわすと、剣の腹で盗賊の顔を力任せにたたいた。鼻血を出しながら倒れる盗賊。もう一人の騎士も盗賊の剣をかわしながら後ろに回り込み、剣の腹でしたたかに後頭部を叩いていた。
「か、頭!」
残りの二人がひるんだすきに、それぞれの喉元に切っ先を突き付ける。この二人を投降させ、倒れた盗賊達を集めさせている間、慌てて現れた後方の八人と、見張りを行っていた二人は、後方に術式を展開していた実により全員土の檻に捕らわれていた。ご丁寧に檻に結界を施し、中からの攻撃が威力を減じて反射するようにしてある。減じさせた威力はそのまま結界の維持に使われるようにしたので、中の盗賊が暴れれば暴れるほど結界が強固になっていく仕掛けだ。
「うん、一網打尽だね。」
実が満足そうにつぶやく。自分のイメージした通りの魔法を顕現できたので、とても喜んでいるようだ。だが、そんな実を嗣治が小突く。
「こいつらどうやって運ぶつもりなんだ?」
「あっ…。」
殺さないなら、次の街まで連行しなければならない。そんな基本的な事をすっかり忘れていた実に、嗣治はあきれたような顔をするのだった。
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ぜんぜんもらえなくて、ちょっと寂しいです。(´・ω・`)




