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第29話 ベアル王国史担当教諭エルミンス・ドリアラント

ようやくPVも1800。

感想や評価がないのがチョイ悲しいですが、完結目指してがんばります。


「はい、それでは次のページを伊倉さん。」

「えーっと、ベアル王国歴209年、時の王が率いる近衛軍と大発生した魔物の群れがトネアル平原で激突。この時の戦いを『トネアル討伐戦』と言う…」


 午後、秋口の心地よい気温は、学生達の瞼を重くする。それがアルテリアに次ぐ鉄拳教師のベアル王国史であったとしてもだ。


「はい、次、伊藤さん。伊藤さん?」

「…」


 伊藤はどうやら瞼の重さに耐えきれなかったようだった。教師は伊藤の頭がカクカクしているのを確認すると、カツカツとハイヒールを鳴らして歩み寄り、軽く拳骨を落とした。


「痛って!」

「私の授業で居眠りとは、良い御身分だな。百二十八ページだ。」

「…!はい!」


 伊藤は眠気を吹き飛ばすと、すぐに立ち上がり、続きを朗読し始めた。鉄拳は振るうが、不条理な暴力は振るわない。ベアル王国史担当教諭エルミンス・ドリアラント元近衛副団長の評判は概ね好評であった。


「この通り、ベアル王国は常に諸外国や魔物との戦いに明け暮れていた。だが、これらは防衛のためであり、侵略を目的とした事はない。まぁ、侵略したところで人口がそんなに多いわけでもないから、すぐに手が回らなくなっただろうな。」


 魔族の国というイメージからはかけ離れた国の実態に、何故この国が留学先に選ばれたのか、その理由の一つを理解する学生達であった。




「このところ、居眠りが増えてるな。」

「やはりこの季節は増えるのです。」


 アルテリアにとって、エルミンスは友人であり、剣術の師匠でもある。また、冒険者時代は時々一緒に依頼を受けて魔物討伐に励んでいた事もあった。

 スラリとした長身のエルミンスがアルテリアと並ぶと、まるでタカラヅカの様だと言われるが、実際元は王女と騎士なので、納得の構図である。だが、見た目に反して共にそれなりの年齢の子供がいる歳である。因みにエルミンスの子供は、王城でわざと多数いる騎士の一人として勤めさせている。親の七光りは通用させないのだ。


「エルミンス、向こうが恋しくないのです?」

「そんな事はありません。こちらでは大変充実した生活を送れています。あぁ、そうそう、ヒロコが料理の勉強をしたいと言っていたので、止めさせました。才能が全くないのをいくらやっても無駄ですからね。」


 先日の一件で、突然浩子が現れたのは、エルミンスが裏で手をまわしたおかげらしい。自分はマークされている可能性があるため、派手に動くわけにいかなかったようだ。


「もっと早く、諦めさせてもらいたかったのです。」

「そりゃ無理だ。まさか、あんな勝負を申し込んでくるなんて思わなかったからな。」

「次からは対戦者同士で食べ比べれば良いのです。」

「そりゃいいな。申し込んだ方は勝てるだろうが、トラウマレベルのダメージを受けるだろう。」


 そうなれば、勝負を申し込んでくる奴らもいなくなるだろう。そうエルミンスが続けると、アルテリアも笑顔で賛同した。


「さて、話は変わるが、ミノルがまた何日か休むようだな。補習くらいはいくらでもやってやるが、大丈夫なのか?」


 王子である実は、最近ミハルの件でこっちあっちを駆けずりまわっていたため、学校にはあまり出てこれていない。既に本人から補習の申し入れがあっているので、教師としては応えてやりたいと思うものの、無理はさせたくないのだ。


「誰に似たのかはわかりませんが、かなり頑固なのです。私も無理しないよう言うのが精いっぱいだったのです。」


 性格は、十分アルテリア似だよ。と、エルミンスが心の中で突っ込むが、声に出したのは別の内容だった。


「ふん、なら護衛にうちの馬鹿でも使ってやってくれ。」

「それは助かるのです。」


 エルミンスの旦那は、近衛騎士団の現団長である。エルミンスは、旦那のつもりで言ったのだが受け取った側はそうでなかった事に気づくのは、もうしばらく後の事であった。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

ご意見、ご感想、評価等お待ちしてます。


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