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ex001 第19話 ミハル視点より

今回は、番外編(?)になります。

第19話をミハル視点から見た話になります。

「では、僕、いえ、私は元の世界には戻れないと?」

「今のところは、です。馬鹿のせいで神になってしまった以上、一時帰省は良くてもずっとは…。」


 僕の名前は坂本美春さかもと よしはる。元はれっきとした男子高校生だった。なぜ「だった」のかと言うと、この世界の魔術師が召喚術を行って、事故が発生したらしい。僕は本来召喚対象でないのに召喚され、更には体も女の子に変えられてしまったからだ。事故に気付いた僕の前の担当神がなんとか事故を収めてくれたそうだけど、僕の体を元に戻す事はできず、お詫びに自分の後釜の神様にしてくれやがったらしい。


「一時帰省ができるなら、まぁ良いですけど。あと、家族には連絡取りたいですね。」

「それは大丈夫です。連絡先を教えて頂ければ、手配しましょう。あぁ、坂本様なら、元の世界の神を通して、ご家族に連絡するのも良いかもしれませんね。」

「はぁ、そうなんですね。」


 このおじさん、何者なんだろう?自覚は無いけど、神様と直に会う事ができる人なんて王様と言えどそんなに居る訳がない。どうも見た目は日本人っぽいけど、実際のところどうなんだろ?


「どうししました?」

「い、いえ。」

「あぁ、私も日本人ですよ。そしてこの国は日本のある高校と留学制度をとっているのです。その伝で向こうともやり取りできるし、担当神様とも交流があるんですよ。」


 な、なんですと!?

 そう言えば、「異世界留学科」なんて学科がある高校が、我が県にはあった。「異世界留学科」、別名を「ライデ○ン科」と言って、余程異世界に興味がある人間か、変人でないと受験しようとも思わない。

 そう言えば、なんでも就職活動で有名な「面接時の特技はライデ○ン」コピペをやった人間が居たそうだ。しかも、しっかり雷系魔法を発動させて、その会社を半壊させたというおまけつきだ。本人は「やってみろって言われたからやった。全く反省はしていない。」等と言っていたそうだが、普通は新聞に載るレベルだろ…。でも、魔法なんて本当なんだろうか。


「も、もしかしてその高校って…。」

「K県の私立高瀬川高校です。ご存じでしたか。」


 やっぱり予想通りだったか。でも、おかげで家族には連絡取りやすそうだ。ここは、この王様に上手くお願いするしかない。


「私もK県出身なんです。どうか家族に連絡を取っては頂けないでしょうか。」

「そうですか、それは良かった。すぐに手配しましょう。おい、実、後でご家族の方に連絡してこちらに来てもらうようにしてくれ。一時的なものだけど向こうも大変だろうし、取り敢えず二泊くらいで。その後はこちらの坂本様とのお話合い次第だな。」

「了解。では坂本様、こちらに連絡先とご両親のお名前を記入お願いします。あ、それと身元のわかるものがあれば、一時お預かりする事は可能でしょうか。」

「あ、はい、学生証でよければ。」


 僕は、同じ年くらいの男子に学生証を渡す。彼は丁寧にそれを受け取ると、記載事項を軽く確認して言った。


「あぁ、隣の市なんですね。早ければ明日にもご両親をお連れできると思いますので、こちらで暫く御寛ぎ下さい。」

「あ、はい、ありがとうございます。」


 彼は一礼して出て行った。とても同年代とは思えない落ち着きようだ。だが、目の前の彼の父親は少し意地の悪い笑顔を見せてこう言った。


「あいつ、あれでも緊張していたんですよ。同年代とは言え、神に会う事は殆どないのですから。坂本様が向こうと同じ感覚でおられるので、少しは緊張もほぐれたようですがね。」


 あぁ、神様ってたいがい我儘だもんな。しかも自分とこの人間が、事故とはいえ僕を召喚しちゃったんだし、かなり怒られると思ったんだろう。一応前の神様からは、これに関しては何をしても良いという許可をもらってるから、どうとでもできるんだけど、あまり酷いことはしたくない。


「それで、謝罪の件ですが…。」

「はい、実行犯と、背後に黒幕が居れば、そちらの捕縛と、そちらの国の刑法に沿って処罰をして頂ければ良いです。私が罰を与えたところで、この体が元に戻るわけでもありませんし。」


 そう言って、少し華奢になった腕を軽く振る。

 元々、向こうの世界でも女顔で、身体つきもほっそりとしていた。その為、女子からは恋愛対象に見られず、男子からはちょっと扱いに困るところがあったようだ。それが、こちらでは完全に女の子になってしまった。顔は殆ど変らず、身体つきも少し華奢になって、出るところがそれなりに出て、今まで一緒にいた相棒が居なくなってしまった。


「本当に、申し訳ない…。」


 再度頭を下げる彼に対しては、逆にこちらが恐縮してしまう。自分を陥れようとした敵のためにピンチになったのだから、敵に対する怒りは相当なものだろう。だが、それと僕に対する謝意は別だ。彼の、僕に対する謝罪の意思は確かなものだった。こんな立派な人が王様やってるのに、それでも足を引っ張る人がいるなんて許せない。

 実行した人達はどうやら黒幕の手先に騙されていたようなのでそこまでではないが、黒幕にはそれこそ痛い目にあってほしい。

 と、そこまで考えたところで、ふと気付いた事があった。


「そう言えば、私は前の神からは殆ど何も聞いてないに等しいのですが、神としての能力ってどんなのがあるんでしょう?」

「あぁ、それについては、こちらの神の一人が責任持って指導しますって事ですから、心配は不要ですよ。」


 そうなんだ。ちゃんと指導してくれるんだね。他に日本人もいるようだし、この国をメインにしようかな。あと、学校行きたいな。留学があるんだし、こちらにも学校ってあるんだよね。後で聞いてみよう。


ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

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