第27話 魔法料理対決~エピローグ~
朝、出勤時に投稿したと思ったのにできていなかった件。
なので帰宅中の投稿です。
魔法料理対決の終わった医務室で、ローブ男が倒れた二人に治療魔法をかけていた。元々彼は後衛担当で、攻撃魔法よりも治療やバフ、デバフの方を得意としていたのである。
「毒でもないのにこの有様。ある意味負けました。」
ローブ男は二人が苦悶の表情から、穏やかな表情に変わったのを確認して、治療魔法を終わらせた。まだ意識は回復していないが、もう大丈夫だろうという判断だ。
「それで、私に勝負を挑んできたのは貴方の方?それともこっちの彼の方?」
浩子が尋ねる。ローブ男だけなら、留学中にやらかした色々な「不可抗力」の所為で勝負を挑まれたり、襲撃をうけたりしたのだが、男子学生も一緒というのが理解できないのだった。
「こちらの御仁でございますよ。私はヒロコ殿に敵対する理由は有りませぬ。」
男子学生の方を向いて、答えるローブ男。その顔には、少し申し訳なさそうだ。
「どうやら、大学受験とやらに失敗したそうで。その原因がヒロコ殿にあるような事を申しておりました。
「思いっきり逆恨みじゃないの。どうして拒否しなかったのよ。」
「転移に失敗し、この御仁が住むアパートの前に倒れてしまったのを助けて頂いたからでございます。恩があります故、なかなか断れずに、この様な事になってしまいました。」
ローブ男としてもここまで事を大きくするつもりはなかったのだが、周りがノリまくった結果、大惨事になってしまったのだった。
「それで、これからどうするのかしら?」
「勿論、他の仲間と共に罰を受けます。」
「殊勝なのね。今度は料理以外で対決したいものだわ。」
料理以外なら負けることはない。そう言外に告げるが、それがわかっていたからこその魔法料理対決だったのだ。それ以外でも、対決を申し込む勇気などどこにもない。
「それじゃ、この馬鹿は私が鍛えてあげることにしようかしら。それこそ、向こうでも官僚が務まるくらいにはしたいわね。」
「…お手柔らかに。」
ローブ男は、男子学生に憐憫の情がこもった視線を向けた。因みに、男子学生はその後、今回の事件の責任をとるという形で浩子が直々に異世界に関する知識の詰め込みと、戦闘技法のレクチャーを受けることになる。そして、数少ないベアル王国の異世界人官僚の一人となるのであるが、それはまた別の話。
「うーん、どうしようかなぁ。」
早苗はアルテリアにあずかった火の魔道具と、肉じゃがの鍋を両手に持って教室に居た。本当は家に帰ろうかとも思ったのだが、実が一旦学校に顔を出すと校長に聞いたため、残る事にしたのだ。
実には以前助けてもらった礼もしていないので、優勝賞品の食券と一緒に肉じゃがも食べてもらおうと思ったのだ。だが、実はなかなか戻ってこない。いい加減肉じゃがも冷めてきてしまっている。もう帰ろうか、と立ち上がろうとしたその時
「あれ?早苗さん?」
実が教室に入ってきた。王城に行ったりしたせいだろう、ベアル王国の高官が身につけているようなローブ姿だ。
「実くん、お帰り。」
「あ、うん、ただいま。」
早苗の言葉に少しどぎまぎしながらも、きちんと返事する実。ふと、彼女の手元にある鍋に気がつく。
「あ、それ料理対決の?」
「うん、実くん、忙しくてあんまりちゃんとご飯食べてないかなと思って。それに量が中途半端だから、家に持って帰ると取り合いになっちゃうのよね。」
「そうなんだ。ありがたく頂くよ。あんまり時間はないから、ここで食べてもいいかな?」
「ふふ、どうぞ。あ、食器を借りてくるね。」
「あぁ、ごめんね。その間温めとくね。」
早苗が宿直室に食器を借りに行っている間、実は分子振動魔法で肉じゃがを温める。少し冷めていた肉じゃがが食べ頃の温かさになると、教室中に肉じゃがの美味しそうな匂いが充満した。
「これはすごい美味しそうだ。」
食器を借りて戻ってきた早苗と二人、他に人のいない教室で和やかに肉じゃがを食べるのだった。
「「うん、明日から留学が終わるまで、サナエに料理を教わろう。」」
そして、その様子を教室の外から眺めていた留学生の女子二人は、そう決心するのだった。
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