第26話 魔法料理対決~その5~
お待たせしました。
これにて対決そのものは終了です。
次はエピローグで、その次は外伝的なのにする予定です。
「次の料理は伊倉選手の肉じゃがにするのです!」
司会が言う前に宣言するアルテリア。予定通り浩子のは最後にするようだ。
「では、伊倉選手、審査委員席へ盛り付けた料理を持って行って下さい。いや、これは美味しそうですよ。某審査委員長の息子にモゲてしまえと言いたくなります。」
実際、早苗の作った肉じゃがは美味しそうだった。カレー粉を入れる直前にコメを炊いていないことに気づいて、急遽方針転換したのが良い方に表れたようだ。
「うん、これは美味しいのです!これならうちに来て、実と一緒に料理をしてもらいたいのです!」
「美味いな…。これ食べさせてもらえる奴、本当にモゲてしまえと言いたくなるな。」
「えっっと、コメントに困りますね…。」
審査委員のコメントに赤くなりながら答える早苗。その姿が大変可愛らしく、観客の男子学生達からも「モゲろ」コールが沸き起こった。
「何かおかしな雰囲気になっていますが、仕方ないということで。今会場に居ない木葉君には、後でモゲて頂きましょうかねぇ。という冗談はさておき、審査委員のお二人、伊倉選手の順位はいくつ!?」
「勿論、トップなのです!」
がっくりするローブ男。対照的に早苗は嬉しそうだ。その早苗を見て、観客は「実氏ね」という気持ちで一致団結するのだった。
「では、最後に河内選手のカレーを試食して頂きましょう!」
「それは勘弁して頂きたいのです!」
「あの色はカレーじゃないだろ!」
司会の言葉に、全力で拒否する審査委員二人。
「ですが、全て試食しないと結果が出せないでしょう。では、河内選手盛り付けをお願いします!」
「はーいっ!」
嬉々として盛り付けを行う浩子。それを恨めしそうな顔で見つめるアルテリアと男子学生。観客も、その異様な鍋の中に少々ざわついている。
「どーぞ!召し上がれ~!」
浩子は結局パンを輪切りにして、添えるだけにしたようだ。時間がなかったことが逆に良い結果になったのだと思われる。だが、カレー本体が謎な液体化な状態では全く慰めにも何にもならなかったが。
「では、試食をお願いします!」
二人は、まずパンを手に取り、そのまま食べる。やはりカレー(?)に浸す勇気はなかったようだ。
「えーっと、パンだけ食べられても困るのですが。」
「ある意味最後の晩餐なのです。次はちゃんと食べるのです。」
アルテリアは覚悟を決めたようである。そんな状態で男子学生も無視してパンだけ食べるわけにもいかなかったようで、彼も覚悟を決めたようだ。二人とも、しぶしぶパンをカレーに浸した。
「うっ!パンが融けた!?」
「まじかよ…。」
カレーに浸したパンの浸した部分が、きれいに融けてしまっていた。一体このカレーはどうなっているのだろうか?
「えー、パンを浸すことができないようです。では、そのまま食べてもらう?はい、あ、そうですか。主催者からの伝言です。治療魔法でカレーを解毒してから食べた方が良いのではという事でした。というわけで、アルテリア先生、お願いします。」
「仕方ないのです。私も劇物は食べたくないのです。」
アルテリアが、よそってあるカレーと、鍋のカレーに解毒をかける。淡い光が浮かんだかと思うと、湯気の色が紫からだいぶ白っぽくなってきていた。
「うーん、解毒しても毒々しさが残ってますねぇ。でも、もう食べても大丈夫でしょう。では、試食をお願いします!」
アルテリアと男子学生が、再度パンをカレーに浸す。今度は融けずに掬えたようだ。そして、意を決して口に入れた二人。
「「!!!!!」」
口に入れた途端、もがき始め、カレーを噴き出し、更には顔は青くなって倒れてしまったのだった。
「これは大変です!審査委員が二人とも倒れてしまいました!あっ、担架が用意されていたようですね。急いで運ばれていくようです。」
校長達があらかじめ用意していた担架によって、医務室へ運ばれていく審査委員の二人。その表情は、苦悶にゆがんでいた。
「えー、審査委員の御二方は、しばらく復帰できなさそうですね。司会の独断で、河内選手の料理は審査対象外とさせて頂きます。と言う訳で、優勝は伊倉選手!」
「嬉しいけど、素直に喜べない…。先生達、大丈夫かなぁ。」
こうして、第一回魔法料理対決は、なんともしまらない終わり方をするのだった。
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