第25話 魔法料理対決~その4~
魔法料理対決と言っておきながら、殆ど普通の料理対決になっているという。
この対決、次話で決着、その次でエピローグになります。
「終了ー!時間です!各自自分の席に戻って下さい!」
司会がタイムアップを宣言する。この時点で料理が完成していると判断できるのは、ユーリー、早苗とローブ男だった。イェルミーナと浩子の鍋の中は、ちょっと料理とは言い難いものになってしまっている。
「見た目からしてやばそうなのが一つ、料理と言ってよいのか判断に迷うのが二つほどありますが、とりあえず審査委員による試食タイムと行かせて頂きましょう。そこの御二方、逃げようとしてもだめですよー。順番はお任せしますが、全て試食してくださいね。」
「とりあえず、ヒロコのは最後にするしかないのです。」
「そ、そうだな…。」
浩子の鍋からは、料理とは思えない雰囲気が漂っていた。いや、雰囲気だけではない。湯気と思わしきものはほんのり紫色だ。普通に存在する食材と調味料だけで、何故ああも禍々しいものができあがるのか、不思議である。
「では、基準ともなる最初の料理を選択して頂きましょう。アルテリア先生、どうぞ!」
「では、ウォートさんのを、お願いするのです!」
失神してしまいそうな浩子のは別として、最初はおいしくなさそうなものから食べておこう。そうアルテリアは考えた。そして、候補はイェルミーナとユーリーの料理だったのだが、見た目だけ冷しゃぶなユーリーの料理より焼き肉カレー漬けのようなイェルミーナの料理を先にしたのはどちらを先にしても同じなら、カレーが続くよりは間に違うものを入れた方がマシという理由だったのである。
「えーっと、それではウォート選手、料理を盛り付けて審査委員へお願いします。」
「は、はいっ!」
試食のトップということでかなり緊張したイェルミーナが、肉の塊を皿に移す。その形は、とてもカレーとは思えないものであったが、香りは確かにカレーだった。
「では試食です!どうぞ!」
司会の合図で肉を一枚口に運ぶアルテリアと男子学生。それが、肉を口に含んだ瞬間、驚きの顔になる…わけもなく、全ては男子学生の感想に表されていた。
「うん、焼き肉のタレをカレーにして食べると、こんな感じなんだろうな…。」
「そうなのです。特にまずいわけでもなく、かと言って目立っておいしいわけでもないのです。」
というわけで、基準となる料理はかなり微妙な評価を下されたのだった。
「では、次の料理!どれを選ばれますか?」
「サウラス選手ので。」
男子学生が即答する。彼もカレーが続くのは嫌だったようだ。ユーリーは、既に皿に盛り付けた冷しゃぶ(?)をそのまま審査委員席へ持って行き、小皿二枚と共に置いて席へ戻っていった。その表情は少し不満げだったが、それは浩一郎に最初に食べさせる事が出来なかったことが関係しているのだろうか。
「では、試食を開始してください!」
肉と野菜を口に運ぶ審査委員二人。そして出てきた感想は、やはり微妙なものであった。
「うん、肉が脂っぽいな。」
「やっぱり、お湯に通して脂を落とさないと、イマイチおいしくないのです。」
そう、ユーリーは冷しゃぶと言いながら、肉や野菜を湯に通していない。そのため、ただの焼き肉を冷やしたものになってしまったのだ。
「順位をつけるなら、ウォート選手の方が少しだけマシなのです。」
というわけで、ユーリーの優勝の目はなくなったのだが、彼女としては失敗作を浩一郎に食べさせなくて良かったと、胸をなでおろす。そして、明日からは食事のお手伝いをしようと、心に誓ったのだった。
「それでは、次に移りたいと思います!次はどれにしましょう!」
「ローブ男のにするのです。」
「アルテリア様、せめて名前を…。」
「ここまできたら、名前は出さないままの方がめんどくさくなくて良いのです。」
しょぼーんとしたローブ男がよそったのは、丼。ただし、中にはご飯ではなくうどんが入っている。そう、彼はご飯がないことに気付くと、「カレーうどん」に方針を転換したのだった。
「うん、これは普通に食べられるのです。」
「うーん、ただ、何かが足りないんだよな。」
カレーうどんは、普通のカレーだけではなく、うどんのスープも使う場合が多く、男子学生はその点を指摘したものと思われる。だが、前二人の料理と比べれば、かなり美味しい部類に入った。
「今のところ、トップなのです!」
こうしてトップが入れ替わったが、ここまでは結果がわかってただけに特に驚きの声は上がらなかった。
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