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第14話 新学期がはじまりました

「今日から新学期が始まります。夏休み期間中、皆さんは課題だったり補習だったり短期留学だったりと色々な経験を積まれたと思います。それを、この学期で充分に発揮できる事を期待します。」


 相変わらず校長の話は短い。どうやら、学生時代の学校の校長の話が長すぎて貧血を起こして倒れて以来、長い話を延々聞かされるのが嫌になったらしい。なので、自分が校長になった今は話を短くするようにしているのだそうだ。


「さて、これから二週間、ベアル王国からの短期留学生が皆さんと一緒に勉強します。是非とも仲良くして下さい。では、自己紹介をどうぞ。」

「魔法学院二年のイェルミーナ・ウォートと申します。短い間ですが、宜しくお願いします。」

「同じく魔法学院二年のディバイン・カーライルです。宜しくお願いします。」

「同じく魔法学院二年のサフィアス・ワンドライドです。短い間ですが、宜しくです。」

「騎士学校二年の、トマス・ワーラーと言います。宜しくお願いします。」

「同じく騎士学校二年、ユーリー・サウラス。宜しく。」


 今回は魔法学院の生徒が三人と、騎士学校の生徒が二人だ。この二校、あんまり仲が良くないらしいが、留学期間中は仲良くして欲しいものだ、と河内浩一郎は思った。


「浩一郎、お前先月向こうに行ってたんだろ?知り合いとか来てないのか?」

「うーん、カーライル君とワンドライド君には一回会ってるよ。あと、サウラスさんとはクラスが一緒だった。」


 カーライル君とワンドライド君は木葉君繋がりだけどね、と浩一郎は続けた。




 高瀬川高校は、普通科二クラス、異世界留学科一クラスというこじんまりとした学校である。

 そして、異世界留学科と言う特殊な学科には魔法実技などの広い場所が必要になる科目もある為、その立地は比較的田舎にならざるをえなかった。何か買い物に行くにも公共交通機関や自転車等を使わざるを得ない場所に、異世界人を放っておくわけにはいかない。


「そんな訳で、留学生達のフォローは木葉、伊倉、河内の三人にお願いする。」

「何がそんな訳なのかはわかりませんが、了解しましたよ。」


 毎年、留学してきた学生が向こうからの留学生の世話役になるのが恒例なので、特に文句も無く引き受ける。


「久しぶり、騎士団はどうだい?」

「ミノル、あのシゴキから解放される喜びを噛み締めさせてくれよ。」

「でも、母ちゃんが手ぐすね引いて待ってるぜ。」

「「勘弁してください。」」


 ディバイン達は、騎士団でかなりしごかれているようだ。しかし、こっちではアルテリアが待っている。どっちにしろ二人に安息の日々は訪れないようだった。


「イェルミーナさん、お久しぶりですね。」

「ああ、サナエさんか。久しぶりだね。あの後大活躍のようだったけど、一体何をやってたの?」

「あはははは〜。ちょっと詳しくは言えないんですけど、ちょっと冒険者のようなものをやってましたよ。」


 冒険者のようなものと言うか、冒険者そのものであったが、それ以外にもある事件に関わっていた事は流石に言えない。あの件は内々で処理されている為、大っぴらにできないのだ。


「それに、トマス君も久しぶりだね。」

「あ、あぁ、久しぶりだな。」


 トマスが、少し顔を赤くして返す。イェルミーナとトマスは早苗と一緒に調査団のメンバーだった為に、他の生徒ほど学校間の隔意がある訳ではない。それなりに、打ち解けた雰囲気になっていた。


「ユーリーさん、大丈夫?」

「ん、大丈夫。」


 ユーリーは元々感情を表に出す方ではないし、大人しくて引っ込み思案なところがあった。

 短い間だったが、クラスメイトとして一緒に過ごした事のある浩一郎には、彼女が無理をして来ていないか心配だったが、どうやら杞憂だったようだ。


「何かして欲しい事があるなら、僕に言ってね。」

「わかった。それなら、行きたいところがある。」

「どこ?」

「放課後になったら教える。それまで内緒。」


 あまり表情は変わらないが、最後は少し微笑んで悪戯っぽく答えた。滅多に見ないユーリーのしぐさに、浩一郎はどぎまぎしながらも、放課後の約束を了承した。




 部活動やアルバイト等の予定が無い所謂暇人が数人と、短期留学生達が放課後の異世界留学科の教室の一角に集まって話していた。


「ディバインとサフィアスと早苗さん、それから俺は、これから特訓の時間なんだよなぁ。」

「多分2時間もあれば終わると思うけど、それまで待ってもらうのもねぇ…。」

「そうだね、ところで特訓て誰がやるの?こっちの世界の人って魔法使える人いないよね?」

「うん、だから、向こう人なんだけど、こっちに来てる人に習う事になってる。」


 ディバインとサフィアス以外の留学生達はピンとこないようだ。まぁ、普通王妃がこんなところで教師やってたり剣術や魔法の特訓をかって出るなんて考えないよね、と実は思ったが、口に出せる訳もなく微妙な雰囲気になってきてしまった。

 そんな中、口を開いたのは騎士学校の生徒である。トマスだった。


「どうせ向こうでも大したランクじゃない冒険者じゃないのか?」

「いや、違うよ。」

「アルテリア様。」


 サフィアスの否定と、ユーリーの発した人名はほぼ同時だった。どうやらユーリーは、アルテリアがこっちにいる事を知っているようだ。と言っても別に秘密にしているわけでもない。注意すれば職員名簿にもきちんと記載されているし、学内でもよく見かける。だが、一国の王妃が異世界とは言え学校の教師をしている姿が想像できないのだ。


「え?アルテリア様なの?」

「うん、まぁ、そう。」


 トマスの問いかけに、ディバインがあいまいに返す。ベアル王国でのアルテリアの人気は高く、結婚して子供が高校生になった今でも変わらない。そんな国民的アイドルに稽古をつけてもらうのだ。ディバイン達が隠したがるのも仕方がない。


「多分、人が増えても大丈夫だよ。」

「うん、できれば一緒に参加してほしいなぁ。」


 早苗のフォローに、サフィアスの懇願が続く。早苗は純粋に仲間を増やしたいのだが、サフィアスの方は一人に集中する時間を可能な限り減らしたいという邪な思惑からだった。


「うん、とりあえず見るだけでも。アルテリア様にもご挨拶したいしね。」

「そうね、私も行くわ。」

「ユーリーさんは?」

「私も行く。放課後行きたかったのはアルテリア様のところだから。」


 こうして、日本、ベアル王国の両留学生達は全員体育館へ向かうのだった。




「今日は全員参加なのです?」

「いや、全員じゃないよ。俺も含めた四人は確定だけど、他は希望すればってところかな。」

「それでは、今日は初日なので軽くするのです。全員参加なのです。」


 アルテリアが全員参加を宣言し、体育館へと向かう。最初から参加の四人は兎も角、他の四人もアルテリアに逆らう気が無いのか大人しくついてきた。


「実、いつもの魔力制御を高める運動をするので、手本になるのです。」

「はいはい」

「はいは一回でいいのです。では、始めるのです。」

 日課にしている運動を始める。動作についてアルテリアが説明し、みんながそれに従って身体を動かすという形だ。

 三回程運動を繰り返して、今日は解散になった。以外と運動量が多いので、いつもの四人以外が疲れてしまった為だ。


「それでは、今日は解散なのです。明日もやるので、是非とも来て欲しいのです。」

「アルテリア様、王宮より至急の報告があります。」


 解散間際、アルテリアにユーリーが話しかけた。


「報告って何なのです?」

「ウォース様から、こちらの世界に来ている者どもが居るらしいとの事で、詳細はこの書簡に記載されているそうです。」


 ユーリーが布の包みから書簡を取り出してアルテリアに渡す。書簡にはウォースの名前と、ウォース自身にしか施せない封印がなされていた。これを解く方法はウォース自身の他、アルテリアと嗣治の二人しかいない。

 アルテリアは封印を解き、書簡を開いて内容をざっと確認した。表情に真剣さが加わる。


「これは見過ごせないのです。皆さん、これから話す事は秘密にしておいて欲しいのです。」

「「「はっ!」」」


 ディバイン、サフィアスとトマスが声にだして了解し、他の者も頷いて了承する。それを確認すると、アルテリアは全員に説明と指示を与えるのだった。



ここまで読んで頂き、ありがとうございます。

ご意見、ご感想、評価もお待ちしております。


いやほんと、何でもいいからレスポンスほしいなー。

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