第10話 新たなパーティーメンバー
書き溜めが減ると、展開が遅くなる傾向になったりしません?
このところ、1話あたり3000文字くらいなんですが、これってやっぱり短いんでしょうか。
「マクスウェルと申します。宜しくお願いします。」
ベアル王国三日目は、剣術の先生もできる元冒険者の騎士、マクスウェル氏を仲間に入れて再度冒険者ギルドへと出かける事となった。
実と早苗の討伐依頼遂行という実戦の中で、可能な限り剣術の技能を伸ばすためである。
マクスウェル氏は騎士だそうだが、冒険者を引退した訳でもないため、いつでも冒険者として依頼を受けることができるそうなのも、今回選ばれた理由の一つらしい。
「こちらこそ、宜しくお願いします。」
「宜しくお願いします。」
実と早苗が頭を下げる。横に並んだアルテリアは、ニコニコ顔でマクスウェルを見ている。
「マクスウェルさん、私と一回試合してみてもらいたいのです。」
「アルテリア様には敵いませんので、辞退させて頂きます。いや、本当に。」
アルテリアの、まるでダンスの誘いでもするかのような試合のお誘いに、恭しくお断りするマクスウェル氏。まぁ一応王妃だし、冒険者達からは「魔女」呼ばわりされてるし、剣術だけでは確かに勝つの難しいかもね、と実は考えた。
「では、冒険者ギルドに行こうか。」
「そうね。」
四人は、アルテリアを先頭に、冒険者ギルドへ向かって行った。
「お待ちしておりました、アルル様。」
冒険者ギルド支部長、トーラス氏が出迎えた。昨日の飛竜の件の、報酬額算出は終わっているらしい。
「先ず、飛竜の件ですが、報酬額はこの様な金額で如何でしょう?」
実が、差し出された報酬額の計算書を見る。途中の計算は飛ばして最後の結果に注目したところ、かなりの桁の数字が目に入った。
「確か、元々の報酬額は金貨十八枚だったと思うのです。」
「ワイバーンでしたら、確かにそうです。ですが、今回は飛竜でしたし、肉もありましたから。」
ワイバーンではなく飛竜だったので、金貨十八枚の報酬が追加報酬も加えて金貨四十五枚になったようだ。それに売った飛竜の肉が一匹銀貨一枚で、七十六匹だったため、金貨七枚、銀貨六枚となった。合わせて金貨五十二枚、銀貨六枚。通常の依頼ではありえない額だ。
「報酬については、母とトーラスさんにお任せます。今日の依頼を確認しに行きたいですしね。」
実が言う。母に依頼の確認を任せると、ロクな事にならないと信じているようだ。早苗も依頼内容には興味があるようで、早くそちらに行きたがっていた。
「たまには素人に依頼を選ばせるのもいいかもなのです。」
「そうですね、一応後でチェックして、レベルに合っていないものは除外しましょう。」
アルテリアとマクスウェルが承諾する。マクスウェルの言う「レベルに合っていないもの」は楽な依頼も含んでいる事は明白なので、自己の戦力を把握する訓練にもなるからだ。そんな時だった。
「あれ?ミノルじゃない?」
入口から素っ頓狂な声が上がる。そちらを向くと、先週クラスメートだったディバインとサフィアスの二人が革鎧にショートソードという明らかに冒険者スタイルで立っていた。
「ディバインとサフィアスじゃないか。こんなところで何やってるの?」
「それはこっちの台詞だよ。先週戻っていったんじゃないのかよ。」
「あれ?サナエさんもいるの?」
サフィアスが、目ざとく早苗を見つけ出す。何かニヤニヤしている様に見えるが、気の所為だろうと実は考えることにした。
「ちょっとな。もちろん許可とか取ってあるから、大丈夫。」
「いやいや、ちょっとな、で来れるところじゃないだろう。
ディバインが突っ込みを入れる。
「俺らの事は兎も角、ディバイン達は?」
「実地訓練の一環だよ。冒険者ギルドに登録して、規定の依頼をクリアしないといけないんだ。」
「まぁ、他の冒険者の手を借りても良い事になっているから、そんなに難しくないんだけどね。」
「そうなんだ。それじゃ、一緒に依頼受けてみないか?」
二人は実の申し出に、快く応じてくれた。これで、アルテリアの無茶な課題で苦しむ可能性が少しは減っただろう。単に犠牲者を増やしただけかもしれないが。
そうして、アルテリアとマクスウェルの前に、新たなパーティーメンバーと、依頼三件が現れた。
「そうか、そんな時期でしたか。」
「ええ、迂闊でしたのです。」
マクスウェルが眉をひそめ、アルテリアが苦い顔をする。そして受付嬢に再度トーラスを呼び出してもらい、全員で応接室へ移動した。
「ミノル、一体何がどうなっているんだ?」
「多分、昨日の件が絡んでいると思う。」
サフィアスの疑問に実が応える。そして、昨日の夜を説明した。
「それって、冒険者をおびき出して餌にしようとしてるのかな。」
ディバインが言う。
「その可能性はあると思うよ。昨日だけで二件だったんだし、他にもあるんじゃないかな。」
実が返す。実際はその二件だけで、他にはなかったのだが、手掛かりもなくそう思える程事態は軽くない。
「まぁ、伝説の魔女、アルル様に近衛騎士団副団長のマクスウェル様のパーティーなら、何が居ても大丈夫だとは思うけどね。」
サフィアスが言うと、実が返す。
「昨日の飛竜の件では、母ちゃんシールド張ってただけだぜ。マクスウェルさんは今日からだし。
て言うか、近衛騎士団副団長ってどう言う事?」
「「えっ?」」
やっぱりそう言う反応よね、と早苗は思った。実際にその場に居て、反撃もできずに狩られていった飛竜達を見ていた自分ですら、昨日の実の魔法は信じがたいくらいの強烈さだったのだ。普通はアルテリアが無双したと思うだろう。あと、マクスウェルがそんな偉い人だったとは思わなかった。
「信じられないかもしれないけど、本当よ。勿論、アル…ルさんが指示は出してたけどね。」
「そうなんだ、サナエさんもその場に居たの?」
「うん、私は見てるだけだったけどね。」
「伊倉さんもオーガ戦では活躍したじゃん。」
「そうなんだ、強いんだね。」
「そうでもないわよ。アルルさんなんかオーガを装備や武器ごとスパスパ斬っていってたから。」
「…。」
絶句するディバインとサフィアス。そこへトーラスが遅くなったのを詫びながら入ってきた。
「遅れて申し訳ございません。急な依頼が来たのは良いのですが、昨日の件もあって問題ないかをチェックしていたものですから。」
「それで、その依頼は大丈夫なんですか?」
「いえ、一応現地で確認をとってからとしました。この時期は学院の生徒達が実地訓練として依頼を受けるので、間違いがあってはいけませんからね。」
「やはり、そちらでも認識はしてましたか。」
「勿論です。」
やはり、学院の実地訓練との関連性を気にしているようだ。
「そういえば、昨日に比べると人数が増えておりますが。」
「今話題に上がりました学院の生徒で、ミノルと一緒に魔法の勉強してました。」
「同じくミノルの元クラスメートです。」
「私は、主より剣術の訓練の手助けをする様申し付けられましたので。」
増えた三人がそれぞれ答える。ディバインとサフィアスはともかく、マクスウェルは言葉尻だけだと不審人物でしかないが、こちらでは有名人らしく、トーラスが問題にするような事はなかった。
「とりあえず、今日は先週クラスメートだった彼らと一緒に依頼をこなしつつ、マクスウェルさんから剣術の指導を受ける予定にしています。
これは、四人で選んでみた依頼です。」
実が、依頼書を並べながら言う。アルテリア、マクスウェル、トーラスの三人は、その依頼書を確認する。
「特に問題になるような依頼は、ないのです。」
「そうですね、この人数だと少し楽な気もしますが、大きな問題ではないでしょう。」
「一応再確認済みの依頼ですし、問題はないかと。」
保護者っぽい三人のお墨付きを得て、本日は六人で三件の依頼をこなす事に決定したのだった。
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