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No.5:スタートライン

 入学式翌日、天気は快晴。3月までの少し肌寒い春とは一転のぽかぽか陽気。暖かく太陽がグラウンドを包み込み、微かに吹くそよ風が心地いい。


 そこに、入部希望の1年生が全員練習着姿で集合する。



慶野『フジ!拓磨!今年はお前ら世話役頼んだ!』


??『え?マジすか?俺?』

??『りょーかいです。』




村田『誰だっけ。あいつら。』


酒井『西口(にしぐち)先輩と、藤武(ふじたけ)先輩。去年から1年生として甲子園出てたよ。』


村田『控え?』


酒井『ほんとなんも知らないでここ入学したの?去年邦南はあんなに騒がれてたのに?』


村田『大場しか覚えてねえ。』


酒井『……はぁ…。西口先輩は去年1年生で5番キャッチャーだった邦南の扇の要。黒シャー出身。リードには定評ある。バッティングも1年生から5番なだけあってかなりいい。』


村田『正捕手か!逸也のライバルってわけね!』


酒井『まあ、そうなるかな?んで、藤武先輩は主に外野手。去年の夏の甲子園はレギュラーではなかったけど、準レギュラーくらいの感じでよく試合には出てた。俊足の人。守備範囲が広くて小技も上手だったかな。』


村田『へー。西口と藤武ねぇ。』




慶野『1年生、今日はこの二人の先輩が世話してくれるから。』


『『よろしくお願いします!』』


慶野『んじゃ二人テキトーに自己紹介でもして、アップとかから教えといてくれ。俺はメンバーメインで引っ張ってく。』


??『はーい。』

??『りょーかいです。』



酒井(やっぱ先輩はオーラあるなぁ。)



西口『どうも。西口(にしぐち) 拓磨(たくま)です。甘ったれた人は次第にシバいていくのでよろしくお願いします。』


酒井(怖…。)


藤武『藤武(ふじたけ) 将希(まさき)です。気合い入れて頑張りましょう。とりあえず今日は頑張って指導していきたいと思います。』




 ***




村田『アップおわったらいきなりピッチャーと野手で別メニューなんだな。』


酒井『ここはグラウンドが他の部活と共有で狭いからな。効率化を考えた結果なんだろ。』


村田『んじゃ、俺ピッチャーだから。またあとでな。』


酒井『おっけ。』




 ……


西口『ピッチャー志望の人は俺についてきて。ま-、俺ピッチャーじゃないけど。』


原田『はい!』

村田『うい!』



原田『あ!』

村田『んあ?』


原田『大場先輩だ!』


村田『ほんとだ。あのイケメンテレビで観て以来。』



??『拓磨が今年は世話役かよ。』


西口『いやー慶野さんに言われちゃって仕方なく…。あ、こいつら1年生です。』


原田『よろしくお願いします!』

村田『よろしくな!』


西口『おいコラ敬語使わんかい。村田。』

村田『本当に尊敬する人にしか敬語は使わない主義だから。』

西口(なんだコイツ腹立つ…。そのうちぶん殴りそう。)



『ども。大場(おおば) 翔真(しょうま)だよ。とりあえず本格的にピッチャーやってるのがこのチーム俺しか居ないから2人には頑張ってほしいんだけどさ、』


西口『どうかしました?』


大場『1年生25人位いて、ピッチャー志望2人ってマジで言ってんの?』


西口『そうっすねー。そのうちピッチャー適性ありそうなやつを野手志望から引っこ抜いて来ると思いますよ。川越監督なら。』


大場『これがあるからな。ほんと進学校は選手集めの限界が浅いのがキツいぜ。』


西口『とりあえず2人頑張ってくれ。てか翔真先輩。これって俺も今日ピッチャーメニューこなすんですか?』


大場『当たり前だろ。せっかくだし1年とコミュニケーション取るいい機会だろ。無駄にはならんし今日は我慢しろ。』


西口『はーい。』



村田『んで、何すんの?』


西口『お前はとりあえず敬語使うところから始めろ。殴るぞ。』


大場『アップは終わったんだよな?』


西口『はい。1年も終わらせました。』


大場『んじゃとりあえず走り込み。』



村田『いきなり?』


原田(マジか…。やっぱ厳しいのか。)





 ***



原田『はぁ…はぁ…はぁ…はぁ…。』


村田『クッソ…。こんなくそ早いペースで…』



大場『やめたかったらいつでもやめていいぞ。その代わり2度と部には顔を出すな。』


西口(うっそぉん。ピッチャーのランメニューってこんなにキツいのかよぉ…。)



大場『原田はまだ行けそうか?』


原田『な、なんとか……。ヘトヘトですけど……。』


西口(1年の初っぱなでこのメニューについてくるってのは悪くねえな。スタミナはありそうなやつだ。)


村田(大場…なんやかんややっぱすげぇ…。)



大場『次はキャッチボールして、ブルペンで投げ込みだ。』



川越『まだキャッチボール前か?早くしろ。』


大場『すいません。1年にメニューを教えてたり色々してたら少し遅れてしまいました。』


川越『キャッチボール、投げ込みは俺が指導する。お前はいまのメニューをもう一回してろ。』


原田『!?』

村田『!?』



 “もう1回!?”



大場『はい!』



原田(今のメニューを!?)


村田(まじかよ…。)



川越『西口は野手組に合流しろ。コイツらがキャッチボール終わったらまた呼ぶ。その時は受けてやれ。』




原田(でも…これは監督にアピールできるチャンス!)


村田(見せてやるぜ!)



川越『お前ら、去年のウチの夏の大会は見たか?』


原田『はい!主に甲子園のテレビ観戦ですが…。』


村田『俺は甲子園まで観に行ったッスヨ!ボス!』


川越『ウチの投手陣、どうだった?』


村田『む…。』

(大場しかわからん…。)


原田『2年生エースの大場さん、絶対的存在の3年生鬼頭さん、1年生ながら大活躍した小宮さんの3枚はすごい印象的でした。』


川越『そうだ。それでいて去年のウチには打撃力があった。だから少ない人数でも勝ち進めた。だがな、』


原田『?』


川越『スポーツニュースには小さく載ってたから知っているかもしれんが1ヶ月程前、小宮が右肘の大怪我をしてしまった。今年の夏には間に合いそうもない。だからウチには今、翔真しか計算できる投手が居ない。』


村田『心配しないでください!この俺がいます!ガハハハ!!』


川越『調子に乗るな。』


原田『僕らに求めるものも、当然高くなるってことですか?』


川越『お前は話が早いな。確か原田といったな。』


原田『はい!』

(よっしゃ!名前覚えてもらった…!)



川越『キャッチボールの基本はわかっているな?キャッチボールを疎かにする者は絶対に試合では使うつもりはないからな。よく覚えておけ。』



村田『よし行くぞ!優太!』


原田『おっけ!』






村田(やっと始まる…俺の高校野球のストーリー…。)






_____________

上級生紹介のコーナー

西口(にしぐち) 拓磨(たくま)

右投げ右打ち:捕手:2年生

昨夏は1年生キャッチャーながらチームの全国準Vに貢献。リードにも定評があり、打撃力も高い。 筋肉質だが打球はライナー性の当たりが多い。昨夏は県大会では4番、甲子園では5番。

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