No.107:花火大会の日の約束
『ウチの方こそゴメンね。直にとって迷惑な事言っちゃって…。』
『……別に気にしてねえよ。』
『嘘つけっ。』
『あん時はなんも考えられなくてさ。酷いこと言って悪かったよ。せっかく応援してくれてたのに。』
『ううん。ウチは大丈夫だから。』
『そうか。』
二人の間に沈黙が流れる。
『あのさ、連れていきたいところがあるの。大丈夫?』
『どこだよ。』
『言っちゃえば秘密の場所。』
『は?』
『ほら、着いてきて。』
『ちょっ、腕痛いから引っ張んな。』
『そんなんで痛がらないの。』
…………
『どこだ?ここ。』
『吹上丘陵公園っていうの。小さい公園なんだけどね。ほら、入ろ。』
『こんなところに公園あったんだな。』
『うん。人通りの少ないところにあるから、地元民でも知ってる人は多くないかも。でもちょっとゆるやかに高くなってて、遊具も無いし周りも木が囲ってるし、落ち着くんだよね。』
『いつもこんなとこ来てんのかよ。』
『いつもではないけど、辛い時とか、バスケうまくいかない時とかにここきて、こーやって、寝っ転がって空見てると、なんかスッキリするのよね~。』
『………………。ふーん。』
『ウチもね、直の気持ち、ちょっとはわかるよ。』
『………………?』
『ウチも2年前、全中で先輩の最後の大会終わらせちゃった事あるからさ。自分のミスで。』
『……マジで?』
『うん。ベスト4をかけた全中準々決勝で。67-67の均衡した試合で、残り15秒。2年生だったけど途中から出てたウチがパスミスしちゃって、そのままカウンター決められて。逃げ切られて67-69で負けちゃったの。』
『ふーん。そんなことがね……。』
『あの時は、すごく落ち込んだし、先輩達にどんな顔していいか分からなかった。』
『何度もバスケ辞めようと思ったの。でもその度に気を掛けてくれる仲間がいて、いい先輩がいて……あの時支えてくれる人が居たからこそ、今のウチがあってね。今度は自分が引っ張って全国優勝させるんだって。結局ウチらの代も準優勝で終わっちゃったけど、あの時辞めなくて本当に良かったって思えたの。』
『………………。そっか…。』
『高校はそんなに強くないけど、やっぱりウチはそんな中でも勝ちたいし、出来る事は全部やろうって思ってる。何事も失敗した後が大切!じゃない?』
『ふーん。』
(俺もお前みたいに、前向かなきゃな……。)
『何~?また聞いてないの~?』
『聞いてたよ。ちゃんとな。』
『珍し。』
『珍しくねえよ。』
『ふふ。珍しいよ。直がウチの話ちゃんと聞いてるのなんて。』
『さぁ。知らんね。』
『ここ、いいでしょ。』
『おう。こーやって夜空見上げながらボーッとするのも悪くねえな。』
『やっぱりボーッとしてんじゃん。』
『話はちゃんと聞いてたって!』
『ホント~?ハハハ。』
『ホントだっつーの。』
夜空を見上げながら芝の上を寝そべる二人の目に花火が映った。
『今日そういえば名古屋港花火大会だったね。 綺麗だね。』
『お前もこんなところで暇してていいのか?』
『彼氏なんて居ないもん。』
『こっからでも見えるんだな。名古屋港って遠いじゃん。』
『丘陵だからじゃない?』
『てきとーかよ。』
『だって知らないもん。こっから見える理由なんて。』
『そりゃそうか。』
『……ねぇ直、野球部、辞めちゃうの?』
『…………。考え直そうと思ってる。』
『……ホント?』
『うん。1度逃げた俺を仲間が認めてくれるかは分かんないけど。』
『認めてくれるよ。たぶん、いや、絶対。直の事待ってるよ。』
『そうか?』
『うん。』
『この数日間さ、色んな言葉聞いて、さすがに俺も気付かされたよ。』
『応援してくれた人にはきっちり恩返ししなきゃダメだし、野球で負けた悔しさは野球で取り返すしか無いってさ。』
『……そうこなくっちゃ。』
『今回ばかりはありがとうな。』
『ウチはなんもしてないよ。直が自分の意志で前向いただけでしょ。』
『前向かせてくれたのはお前ってことだっつーの。』
『なんか言った?』
『…………別に。』
『じゃあさ、約束してよ。』
『何を。』
『来年は、甲子園に連れてってね。』
『…………、』
『ああ。俺が邦南を甲子園に連れていく。』
『約束ね。』
『任せろ。』




