No.104:自分で考えな。
PM:7時20分
佳奈(ここかな?公園の花畑の裏の村田家だし。)
ピンポーン!
《はーい!ちょっとまっててくださーい!》
ガチャッ!
『あら。直政のお友達?』
佳奈『はい!こんばんは!突然お掛けしてごめんなさい。野球部の友達の酒井逸也くんからこれ渡してって言われたんで届けに来ました。』
『あら、わざわざありがとうね~。もしかして彼女だったりする?』
佳奈『いやっ!ぜ、全然そんなんじゃないです!ただのクラスメートです。』
『あらそうなの。可愛いししっかりしてそうだしちょっと期待しちゃった。でもごめんね。今直政家にいないのよ。』
佳奈『えっ。どこ行っちゃったんですか?』
『それがわからなくてね。野球部の練習勝手に上がってきたって言うから理由聞こうと思ったんだけど気づいたらもう家に居なくて……。』
佳奈『そうなんですか……。』
(一昨日のこと謝ろうと思ったのになぁ……。)
『まぁ、おなかすいたら帰ってくるだろうし、心配は要らないよ。あの子この前の試合からずっとそんな感じで塞ぎ込んじゃって。アナタ、名前は何て言うの?』
『斎藤 佳奈です。』
『佳奈ちゃんね。届けに来てくれたって直政にも伝えとく。』
『はい!ありがとうございます!』
『はいは~い!』
『では失礼しました!』
『気を付けて帰ってね~!』
……
(はぁ……。結局謝れなかったなぁ……。)
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ガチャッ!
『直政、どこいってたか知らないけど、ご飯もうとっくに出来てるよ。早く食べな。あと、クラスメートの佳奈ちゃんがこれ届けてくれたよ。』
『は?なんでアイツが。大体これなんだよ?』
『さぁね~。自分で開けてみれば。ちなみに逸也かららしいよ。』
ガサガサ……
“20xx年8月12日甲子園2回戦 邦南 対 陽灘学園”
“20xx年8月19日甲子園準々決勝 邦南 対 楽秦工業”
(ビデオ……?なんだこれ。去年のか。)
(観ろってことか?やーだね。)
“大体野球はもう辞める。決めたんだ。”
『直政どこ行くの。ご飯食べないの?』
『部屋行ってこれ置いてくるだけだよ。すぐ戻ってくるって。』
『はいはい。』
(こんなビデオ送ってきたところで観るわけねえだろ。)
(野球なんかにはもう関わりたくもないね。)
“そんな怒った目で見ないでよ。私も心配なのよ。”
“一昨日の試合、負けてなんも思わなかったんだな。”
(どいつもこいつもデリカシーの欠片も無いしよ。)
『直政ーっ!早く来なさいよ!』
(ちっ。わかってるっつーの。)
『今行くつもりだって!うるせーな!』
……
『ねえねえ、佳奈ちゃんって、どんな子?』
『は?いきなりなんだよ。』
『お母さんあの子なんかすごーくいい子だと思うけどね。』
『別に。めんどくせーし、うざってーし、正直言って嫌な感じだね。』
『ふーん。全然そんな子には、お母さんには見えなかったけどね。』
『んな初対面で分かるかよ。』
『女同士だと色々分かるもんがあんのよ。』
『あっそ。』
ピッ
直政がテレビの電源を入れる。
《さあ青龍寺 翔冴、シーズン2回目の完封まであとアウト1つ!!!》
『へー、青龍寺、やっぱさすがじゃなーい。今日もいいピッチングじゃん。』
カンッ!!
《ショート中島、ガッチリキャッチして一塁スロー!アウト!!》
『凄いねぇ青龍寺。でも去年のアンタの先輩達だって甲子園決勝であと一歩まで追い詰めたんだからね。改めてすごいこっちゃ。』
(…………。)
《札幌ファイヤーズ、高卒1年目の怪物青龍寺の今シーズン早くも11勝目で盤石の首位キープ!!2位の北九州とのゲーム差を5.0に広げました!!》
『あんたもこんくらいビッグにならないとね。まだストレートだって146キロが最速でしょ。青龍寺は去年160キロ。アンタの先輩の鬼頭くんも160キロ。上には上が居るのよ。いつまでも下向いてんじゃないよ。』
『母さんまでその話かよ。』
『あんた、なんか佳奈ちゃんに酷いこと言ったんじゃない?』
『……別に。アイツの気が利かねえから色々言ってやっただけで俺は思ったこと言っただけ。』
『ふーん。』
『……なんだよ。』
“ちっせえ男だな。”
『…………は?』
『正直あんた、最低だよ。やってること。』
『突然ガミガミうっせぇな。何がだよ。』
『教えたところでそれじゃ意味無いね。自分で考えな。』
『……は?』
『お風呂も溜めてあるから。温くならないうちにとっとと入りな。』
『…………。』
(何が言いてえんだ……。)
(どいつもこいつも…………。なんなんだよ…………。)




