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No.102:夏のそよ風

 7月21日 敗退翌日、ミーティングが行われる多目的室にて、慶野キャプテン、大場副キャプテンの最後の挨拶と、キャプテン発表が行われた。

 ここ邦南高校では先輩が次期キャプテン、副キャプテンを決める。




慶野『んじゃ、俺の長い話はこれで終わりにして、次期キャプテンの発表をしようと思う。前々から翔真とはふたりでよく話してたからすぐ決まった。』



酒井(誰がなるんだろう……。西口さんかな……。小宮さんかな……。)




慶野『新チームのキャプテンは、』












佑介(ゆうすけ)。お前に頼んだ。』





西口(佑介か…………。)


長澤(氷室さんか。少し意外だな。)

林(しっかりしてるし西口サンか小宮サンやと思うたけどな。)




慶野『副キャプテンは、拓磨(たくま)哲都(てつと)。お前らだ。』



小宮(副キャプテン、か。正直キャプテンやりたかったけどな……。)

西口(哲都と俺が副キャプテンで佑介がキャプテンね。)




慶野『3人は前出てきて所信表明しろ。』




氷室『はいっ!』

小宮『はい!』

西口『はいっ!』







氷室『んーっと……俺バカだから慶野さんとか、副島さんとかみたいに的確な指示は出せないかもしれないし、自信は正直言って無いけど、』




『元気だけは絶対負けない。』




『来年こそは絶対みんなで日本一達成出来るように、俺頑張るから、みんなついてきてくれ!』



『この1年、全力で駆け抜けよう!!』




パチパチパチパチ…………





西口『俺んなかでキャプテンは、哲都かなーって勝手に思ってたけど、佑介に決まった。』



『俺と哲都で全力でコイツサポートしていくつもりだ。他の部員もキャプテン副キャプテン関係無しに意見はしっかり言っていこう。』





『絶対に甲子園に行く。そんで全国制覇する。』



小宮『そのために練習しないとね。僕もキャプテンやりたかったけど、佑介についていく。時にはキャプテンであろうとビシビシ言っていくつもりだけどね。』



『絶対に全国制覇、成し遂げよう!!!』





『『『ハイッッッッ!!!!』』』





川越『よし、新キャプテンも決まったことだし、早く練習を開始するぞ。来年への戦いはもう始まっているんだ。』



氷室『よし!グラウンドまで走って移動するよ!』

西口『そこは、しろ、でいいよ。キャプテンなんだし。』

氷室『ハハハ。なんか慣れなくてさ。』

西口『ま、俺と哲都がサポートするから。頑張ろーぜ。』

氷室『頼んだよ。』





ダッタッダッ……!




川越『お前らはどうするんだ?』


慶野『僕らは部室の掃除ですね。』

大場『毎年引退した3年生の恒例行事ですよ。』


川越『そうだったな。練習には参加するよな?翔真はプロ行くんだったら練習しねえとダメだし、文哉もスポーツ推薦受けるんだったらセレクションのためにもきっちり練習しねえとダメだろ。』


大場『もちろん参加するつもりですよ。今はあんまプロとか考えてないですけど、体動かさないとなんだか気持ち悪くて。』


慶野『自分はあんまセレクションとか考えてないです。』


大場『んだよ。練習しよーぜ。』


慶野『お前みたいにプロ目指せる実力あったらそうなってたろうよ。』


川越『大事な進路だ。明日お前らは夏期講座あるだろ。そのついでに進路相談してやるよ。結構こう見えて大学の監督に知り合いは多いんだよ。』


大場『おっ。お願いしてもらおうかな。文哉も聞いてみようぜ。』

慶野『まぁ、少しだけな。』



川越『よし。』


慶野『俺達もそろそろ部室掃除始めなきゃな。』

大場『おうっ。』




*************




カキィィーーーンッ!!!



『平本!!』


パシッッ!!


『ナイキャッチ!!』



カキィィーーーンッ!!



『もう1球行ったぞ!!』



『オーライっっ!!!』






慶野『まだ佑介、ちょっとぎこちないな。』

大場『キャプテンってガラじゃないしな。あいつ。』

慶野『アイツならみんなをきっといい方向に導いてくれるよ。』

大場『あぁ。それは同意だ。佑介にはなんか、ついていきたいって思える大切な何かがある。』


慶野『そ。俺には無かった大切な物がアイツにはあるよ。間違いなくな。』


大場『何言ってんだ。文哉だって俺はいいキャプテンだったと思うぞ。』


慶野『いや、俺は所詮、3回戦負けチームのキャプテンにしかなれなかった。みんなをいい方向に導けたとは、お世辞でも思えないね。』


大場『ハハハ!馬鹿言ってんじゃねえよ。』



『何かを後輩たちに残すこと、それだって大切なことなんだぞ。俺達が(みつる)さんに大切なこと教わったみたいにな。』



慶野『…………。』



大場『こんな俺達でも、必ず後輩達(あいつら)に何か残せたと思う。それをきっと来年、証明してくれるよ。』



慶野『……へっ。だと良いけどな。』



大場『にしても、こーやって外から練習見てみると、』




『ホントに終わったんだな、って実感するな。』




『……あぁ。』




『なぁ翔真。』


『ん?』





『ラストボール、お前手首痛かったろ。』




『……。』




『その前のフォーク2球とも全然制球出来てなかったし、ラストのストレートもインコース狙ったのがど真ん中。』






『……さぁね。覚えてねえや。』





『……?』





『でもこれだけは言える。』







『後悔しかない、って。』






『……だよな。後悔は無いって取り繕っても、それは自分に言い聞かせてるだけでしかない。』





『この後悔は、一生もんなんだろな。』




『…………。』



『っといけね!こんな暗い話題しててもしゃーねぇな!なぁ翔真。お前プロ志望届け出すんじゃないの。』


『さぁーね。』


『なんだよ今更。前からずっとプロ志望って言ってたじゃん。』


『なーんか、ね。一応目指すべき場所はプロとは口先だけで言ってたけど、やっぱ甲子園優勝することしか見てなかったからさ。それが突然終わって、なんも考えられねえっつーか、本当に目指すものが見えてこねえっつーか……。』



『お前結構物事深く考えずにひたすら目の前の物に必死になるからな。その考えになるのも無理はねえか。』



『そ。目標失っちまってさ。だってよ、プロに入ったところでどうなの?確かに好きなことでお金稼げるのは悪くねえけど、その舞台で燃えることが出来るのか、って疑問は思うね。プロに入ったとして、何を目指すのかって。』



『そりゃ人それぞれだろ。年俸のために頑張る人も居るだろうし、優勝のために頑張る人も居るだろうし、活躍してスターになりたいから頑張る人も居るだろうし。』



『人それぞれねぇ……。』



『別にプロにならなくてもいくらでも人生の過ごし方はある。1つの選択肢ってわけ。』



『あーやっぱわかんね。頭いたくなる。』



『そういうときはあの可愛い彼女にでも相談してみろ。明日監督と進路相談もあるし、いろんな人の話聞いて、じっくり考えろよ。もちろん最後に決めるのは自分なんだけどな。』



『佑季は最近勉強で忙しいんだよ。めっちゃめちゃ頭いいから。』


『夏期講座取ってんじゃ無いの?』


『取ってないよ。自分の本当に足りない勉強は教師じゃなくて自分が1番よくわかってるらしい。』


『あーそっか、俺がこうしてる間もライバルは黙々と勉強してんのか……。』



『だからセレクション受ければいいじゃん。お前なら結構良いとこ行けるって。』


『俺より上手い奴なんてそこら辺に一杯いるわ。』



『おっ!逃げるのか?それでも邦南のキャプテンか!』


『うっせーな!じゃあ受けてやるよ!どこでもかかってこい!』


『はい決まりーっ!文哉も今日練習な!』


『やってやるよーだ!』



『ハッハッハ!!』



『おいコラ!ホウキ振るな!ホコリ飛ぶだろ!翔真やめろ!』


『ホーレホレ!』



『ハクシュンッッ!!!』



『くしゃみ音でっか!!ハハハ!!ウケる!!』



『やかましいわ!』


『おい悪かった!悪かったから!頼むから硬式ボールは投げないで!』



『ハハハハハ!!ビビってやんのー!』






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