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わたくし悪役でしてよ  作者: しぶぬきかき
7/35

順調でしてよ 1

ブックマークありがとうございます。いつもより短めですがお楽しみいただければ幸いでございます。

 

 初登校日から一週間、何事もなく過ごせましてよ。

 初日に実力テストなどがありましたけれど、どこの学園でも同じではなくて? 中等部の学力のおさらいテストですので問題はなくてよ。

 

 そうそう、担任のジャダン先生ですけれど。とても良い先生ですわ。

 わたくしの左隣に誰もいなくて寂しかろうと、テストの間中その開いている場所へ机と椅子を持ってらして、ずうっとわたくしの様子を見守っていて下さいましたの。

 厳しいお顔をなさっていますけれど、生徒思いの素晴らしい先生ですわ。

 おかげで、どのテストでも抜かりなく全力で臨めましてよ。ほほほほほ、久し振りに一番になれましてよ。

 あら、大人気ないですって? どうしてですの? ええ、確かにわたくしにとっては、二度目の高等部でしてよ。みなさんは一度目ですわね。それがどうしまして? わたくしは、何度同じ状況になろうと全力を尽くしましてよ。


 授業も楽しくてよ。どの教師も分かり易く教えてくださいますの。

 ただ一つ困ってしまった授業がありますのよ。

 音楽ですわ。こちらの学園では一年生の習う楽器はピアノですの。一年を通して二人一組で連弾曲を覚えることになっているのですけれど、1-Cクラスは三十一名ですのよ。内部進学の方は既知同士仲良く、外部進学の方はお隣の席の方と仲良くなさっているので、すぐにペアができましたの……。いいえ、わたくしみなさんよりもお姉さんですもの、そこは快くお譲りしなくてはね。わたくしの拙い演奏を独奏ソロでお聞かせするのは恥ずかしいですわね。


 お昼に食堂へ行くのも慣れてきましてよ。二日ほど息切れを起こしましたけれど、ゆっくり歩けばよいことに気が付きましたの。

 ええ、ちょっとしたことがありまして、わたくし歩く速度をゆっくりにしましたの。みなさんより、食堂に着くのが十分ほど遅れますのよ。本当はみなさんと頂きたいのですけれど、それも仕方なくてよ。 


 そういえば、食堂で二日目にちょっとしたことがありましてよ。

 その日は、わりと早く食堂に着きましたのよ。食堂に入ると、すぐに桜色の髪の少女がお友達と楽しそうに食事をするのが目に入りましてよ。食堂にはたくさんの生徒さんがいますのに、なぜかサリエ・マヒロさんに目が行きましたの。

 なぜかしら、無性に、なんというのかしらイジワルしたい気持ち、いえ、衝動に駆られましたの。

 

「どうかなさいまして、マツリバヤシ様?」


「あ、いえ。なんでもありませんことよ」


 わたくしが、恐ろしい想いにかきたてられていると、どなたかに声を掛けられました。そちらを見ると、知らないような知っているような女子生徒さんが三人、わたくしを見ていましてよ。そして、わたくし堂々と入り口の真ん中に立っていることに気が付きましたの。


「あら、ごめんあそばせ。ほほほ、わたくしったら、こんなところに立って邪魔でしたわ。どうぞ、お通りになって」


「え、ええ……あの、ごきげんよう」


 そう言って脇に避けると、みなさん会釈をしながらすすす、と食堂から出て行きました。その頃には恐ろしい衝動は綺麗になくなっていましてよ。


 それからクラブサンドやらスープやらサラダをトレイに載せて、席を見繕っているとクラスのみなさんを発見しましたのよ。

 屋敷紫さんもいることですし、そちらへお邪魔しようと席へ近付くと、たぶん上級生の女子生徒さんが屋敷さんたちの傍を通り過ぎましたの。そのとき女子生徒さんたちは、庶民臭くて嫌だわ、と言いながらその席を通り過ぎましたの。


 わたくしにも、はっきりと聞こえましてよ。


 なんということかしら。


 ……でしたら食堂に着くだけで、この体たらくのわたくしは、ひょっとしてかなり汗臭いのではなくて? お食事中のみなさんに不快な思いをさせるのではなくて?


 ええ、そういうわけで汗をかかないよう――とは言え座っているだけで汗まみれですけれど――ゆっくり歩くことにしましたのよ。


 それよりも例の件はどうなったか気になる、ですって? ほほほほ、そちらも順調でしてよ。ええ、それはもう万事滞りなく予定通り。いえ、予定より順調でしてよ。


 大体一月で二キロの減量を目標にしていたのですけれど、三キロほど痩せましたの。特に何もしていなくてよ? 

 え、もともと何キロだったのか、ですって? 七……いえ、見栄を張っても仕方ありませんわね。八十キロでしてよ。


 ……あら、その話でもなくて?


 他に何かあったかしら?



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